[Vol.1044] 実は東京は3度、夏季五輪の開催国になっていた

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。71.94ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,797.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。21年09月限は13,180元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。21年09月限は446.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで743.35ドル(前日比14.15ドル拡大)、円建てで2,618円(前日比24円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月27日 19時40分頃 先限)
6,358円/g 白金 3,740円/g
ゴム 213.8円/kg とうもろこし 34,450円/t

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「実は東京は3度、夏季五輪の開催国になっていた」

前回は、「世界の石油消費の回復・米国の原油生産横ばいは続く」として、世界の石油消費量と米国の原油生産量の動向について、書きました。

今後数回にわたり、金(ゴールド)相場を分析する際のアイディアにつながる、五輪や金メダルに関わるさまざまな資料やデータを、確認していきます。今回は、「実は東京は3度、夏季五輪の開催国になっていた」として、夏季五輪と東京の関係について、述べます。

2021年7月23日(金)日本時間20時、1年の延期を経て、第32回夏季オリンピック東京大会が開幕しました。当大会について、さまざまな議論が繰り広げられていることは、筆者も承知しています。

開会式を自宅のテレビで見ていた時ふと、「オリンピックって何なんだろう?」という疑問が、筆者の頭に浮かんできました。その直後、「原点(原典)にあたれ」という筆者が大事にする言葉に従って、IOC(International Olympic Committee)のウェブサイトを開きました。

世の中にあるさまざまな定義や思想は、時代とともに変化することから、できるだけ、事実のみがつづられた資料や、データ(数値)を探すことに努めました。こうした資料やデータを見ていく中で、あまり報じられることがない、さまざまな面白い事実にぶつかりました。

近代五輪と言われる大会の第1回は1896年にアテネ(ギリシャ)で開催されました。今回の東京大会は32回目で、1回目から今回までの間に、3度、いずれも戦争に関わる事情で中止となった大会がありました。

以下は、夏季五輪と東京の関係を示したものです。IOCが東京を開催地と決定したのは、今回が3度目でした。IOCの資料によれば、1度目は第13回大会でした。同時に立候補したローマが、東京が立候補したことを知ったムッソリーニの意向で立候補を取りやめ、ベルリンで開催された総会で、東京で開催することが決まりました。

五輪を開催したくば、日清戦争を収束させるよう、IOCが日本に最後通告したものの、収束は果たされず、IOCはヘルシンキに開催権を付与したと、書かれています。しかし、その後、ドイツがスカンジナビア半島に侵攻したため、第13回大会は中止となりました。

次に夏季五輪に東京が名乗りを上げたのは、1960年の第17回のローマ大会でしたが、東京は候補地の最終選考に残ることはできませんでした。

翌大会である第18回大会に、再び名乗りを上げ、1959年にミュンヘン(ドイツ)で行われたIOC総会で、デトロイト(べ米国)、ウィーン(オーストリア)、ブリュッセル(ベルギー)を退け、開催地となりました。

そして今回、東京はイスタンブール(トルコ)とマドリード(スペイン)を退け、2013年に第32回大会の開催地となりました。

IOCの資料からは、同じ候補地が何度も立候補したり(東京のように)、同時に国内の複数の都市が立候補したり(1948年の第14回大会で、ボルチモア、ロサンゼルス、ミネアポリス、フィラデルフィアの5つの米国の都市が立候補。実際はロンドンで行われた)、近年、立候補する都市の数が少なくなっていることなどが、わかります。

特に1945年の第二次世界大戦終了後、各国は、国威発揚の他、高い技術を知らしめたり、多数のメディアを呼び込んで自国をアピールしたりするなど、さまざまな目的で立候補してきました。

1964年の第13回東京大会では、米国のメディアがはじめてスローモーションで映像を撮影したり、赤道上に制止する衛星を使って大会の模様を中継したりした、とされています。

この衛星は、東京大会で使用した後、戦時下にあったベトナムとの通信に用いられたとNASA(アメリカ航空宇宙局)の資料に書かれていることから、五輪は技術をお披露目する場であり、同時に、それを実験する場でもあると言えそうです。

次回以降、選手数、参加国・地域数、競技・種目数、開催日数のデータに注目します。

図:夏季五輪と東京


出所:IOC(International Olympic Committee)の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。