政治と相場

原油
著者:近藤 雅世
 今ほど政治の動向が世界の株価や商品価格に大きく影響を及ぼしている時期は過去には少なかっただろう。これまで政治の動きが商品価格を動かしたのはもっぱら戦争や紛争であった。中東に対する二度の米国を中心とした戦争や、ナイジェリア、リビア等における内乱、北朝鮮のミサイル発射などが金や原油価格を動かしてきた。

 一方現在は、トランプ大統領による対中国への貿易戦争、ベネズエラやイランに対する経済封鎖、欧州との軋轢、メキシコの壁による移民阻止政策、英国におけるブレクジットの動向、イタリア政権を初めとするポピュリズムの動き、或いは日韓対立等が、相場に影響を及ぼしており、どれもが人為的な所作であるため、予想が難しい。

 トランプ大統領の動向を占うには、彼の立場でどうしたいかを考えれば想像ができる。彼の主目的は2020年の選挙で再選されることである。打ち上げ花火のように、大衆に喝采を浴びることをしでかせば人気が出るとの思惑から、なるべく派手な、強気な姿勢を示してきた。

 8月18日の米国における世論調査によると、米国民の間で自由貿易支持は高まっており、「タリフマン(関税の男)」を自称するトランプ大統領の支持率はこの1年余りで最低となった。NBC・米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)調査によると、トランプ大統領の支持率は43%と、7月の調査時から2ポイント低下。不支持率は3ポイント上昇して55%だった。同大統領の不支持率は支持率を12ポイント上回り、同格差は18年4月以来最大となった。

 さて、ここで予想しておかねばならないのは、トランプ大統領が米中貿易協議を妥結させ、これまでかけてきた関税率を元に戻すという政策発表だ。支持率を押し上げるために、最初に悪いニュースをばらまき、景気が悪化すると懸念させ、それはFRBのせいだと非難して金利を下げさせ、最後に、これまで自分が駆けてきた圧力を解放して株価や景気を押し上げることである。

 あまりその対策が遅いと選挙に間に合わず、早過ぎても選挙までに効果が薄れる。政策の転換はトランプ大統領独りでできることであり、それをするために現在下押し圧力をかけているのではないかと勘繰られる。

 トランプ大統領が政策を転換する時期は迫っている。その時は株価が急騰し、金価格は急落し、原油価格は上昇するだろう。
 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。 URL:http://commi.cc/ eメール:kondo@commi.cc