[Vol.1793] 「魔性」とは、魔物のように人を惑わす性質

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の緊張が緩和する期待などで。73.14ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,563.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は16,235元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年10月限は547.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1591.95ドル(前日比13.55ドル拡大)、円建てで7,365円(前日比39円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月20日 18時07分時点 6番限)
11,917円/g
白金 4,552円/g
ゴム 332.0円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,110.0円/mmBtu(24年11月限 24年8月16日15時01分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「『魔性』とは、魔物のように人を惑わす性質」
前回は、「海外の金(ゴールド)相場が短期的な急反発」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年8月時点)を確認しました。

今回は、「『魔性』とは、魔物のように人を惑わす性質」として、「魔性(ましょう)」と金(ゴールド)の性質を確認します。

人は危機に敏感な生き物です。数万年間も生きながらえているのは、このためでもあります。それゆえ、「有事」や「地政学リスク」「戦争」という言葉を目にしたり、耳にしたり、それらに関わる映像を見たりすると、強い関心を寄せる性質があります。恐怖に心を奪われ、盲目的になる場合すらあります。

こうした人の性質を逆手にとり、戦争を連想させるニュースが多くなると、一部の情報の発信者は「有事」や「地政学リスク」などの言葉を多用し、耳目を引きつつ、金(ゴールド)を訴求する場面を目にします。ですが、これは健全な状態とは言えません。金(ゴールド)市場の一部分しか見せず、かつ人の弱みを逆手に取る行為だからです。

情報の発信者は恐怖をあおるだけ、情報の受け手は恐怖にあおられて目の前にある金(ゴールド)に手を伸ばすだけ、という構図です。こうした状態は、金融庁が提唱する顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)が目指す状態と逆の状態と言えます。

金(ゴールド)はある意味、情報の発信者と情報の受け手の間で恐怖を媒介していると言えます。その意味では、金(ゴールド)は人を惑わす性質を意味する「魔性(ましょう)」の性質を持っていると言えるでしょう。

市場には、1970年代後半に中東地域で有事が同時発生した際に金(ゴールド)価格が短期的に急騰した記憶があり、恐怖と金(ゴールド)の相性が良いという認識が残っています。このため、金(ゴールド)から魔性の性質を取り除くことは大変に困難です。

図:「魔性(ましょう)」と金(ゴールド)の性質
図:「魔性(ましょう)」と金(ゴールド)の性質
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。