[Vol.1809] 有事の金(ゴールド)で資産形成は困難か

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。66.44ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,551.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年01月限は16,855元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年10月限は498.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1602.7ドル(前日比4.55ドル拡大)、円建てで7,175円(前日比35円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月11日 14時41分時点 6番限)
11,470円/g
白金 4,295円/g
ゴム 354.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,000.0円/mmBtu(24年12月限 24年9月9日17時03分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「有事の金(ゴールド)で資産形成は困難か」
前回は、「併用できるのが金(ゴールド)投資の魅力」として、行動の動機と時間軸および金(ゴールド)投資の対象を確認しました。

今回は、「有事の金(ゴールド)で資産形成は困難か」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と投資対象を確認します。

以下は、筆者が考える金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と、先ほど述べた「動機(時間軸)」と「投資戦略(対象)」の組み合わせの関連を示しています。

興奮をかき立てる短中期(局面)に関わるテーマは、有事ムード(戦争などが勃発した際に生じる資金の逃避先需要)、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)の三つです。

中東地域で複数の有事が同時発生した1970年代後半から、ITバブルで株価が急騰した2000年代前半にかけて、この三つのテーマが金(ゴールド)相場を席巻しました。有事の金(ゴールド)、株との逆相関、ドルとの逆相関という言葉が生まれたころです。

危機管理に関わる中長期・超長期(時代)に関わるテーマは主に、中央銀行と見えないジレンマです。これらは2010年ごろ以降、世界分断や民主主義の行き詰まりなどが目立ち始めたころから、長期にわたって金(ゴールド)相場を押し上げてきたテーマです。

興奮に関わる短期売買であれば、有事ムード、代替資産、代替通貨という短中期(局面)の材料に注視しながら行う、商品CFDや商品先物、短期売買を前提とした金(ゴールド)関連のETFや個別株などの売買がなじみます。

危機管理に関わる長期資産形成であれば、中央銀行、見えないジレンマなどの中長期・超長期(時代)の材料に注視しながら行う、純金積立や金(ゴールド)関連の投資信託、長期投資を前提とした金(ゴールド)関連のETFや個別株などの売買がなじみます。

有事ムードにあおられて長期資産形成のために純金積立を行う、中央銀行の保有高増加を手掛かりに短期売買を行う、などの「動機(時間軸)」と「投資戦略(対象)」の組み合わせがそろっていない売買はご法度といえるでしょう。

仮にそうした売買を行った場合、いずれその矛盾に気が付くでしょう。その際は改めて、今から始めようとする投資が「興奮」をきっかけとしたものなのか、「危機管理」をもとにしたものなのかを、問うてみるとよいでしょう。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と投資対象
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年9月時点)と投資対象
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。