原油の価格推移
近年の出来事と原油価格の動向
直近5年間における世界経済・地政学イベントと原油価格を振り返ります。

2020.2-3 新型コロナウイルス
2020年は初頭から、中国発の新型コロナウイルスが世界の社会経済をことごとく停止させ、金融・商品市場も一時的な恐慌状態に陥りました。
WTI原油先物価格は世界の株式市場に先んじて反応し、年初の取引日から下落を開始。そして4月20日には一時、-40.32ドルという前代未聞のマイナス価格をつけることとなりました。この事象は決済期限のある原油先物取引の受渡しに起因するものでした。その当時は、コロナウイルスの感染拡大で世界的な景気の鈍化により原油需要が落ち込んだ時期で、原油貯蔵施設は満杯に迫り、原油価格も下落しているような状況でした。買い手の場合は取引最終日までに先物を売ってポジションを解消できなければ実物の原油を受けなければならない義務が生じます。石油会社でもない投資家が原油を引き渡されても困りますから、これを怖れた投資家は、お金をあげてでも先物を売りたい(ポジションを解消したい)という恐慌状態に陥りました。その結果がマイナス価格だったのです。
実際にはここが大底となり、原油価格はそこから約2年間の上昇相場に入ることとなりました。
2022.1-3 ロシアのウクライナ侵攻
2022年2月24日には、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が開始されました。前年末からロシアの動向が報道されていたことを受け、産油国が戦争当事者になれば需給が不安定になるとの読みから、WTI原油先物価格はいち早く2021年12月2日を起点に上昇を開始。軍事侵攻を挟んで3月1日には8%もの急騰を演じ、3月8日までに88.7%の上昇を見せました。
2022.3-12 米国利上げ
2022年3月16日に米国のFF金利上昇が開始されます。金利上昇により経済のスローダウンが起きれば原油の需要が減退するとの読みから、WTI原油先物価格は金利上昇を織り込むように、FOMCに1週先立つ3月9日から急落。FOMCを終えた3月16日までに23.2%下落しました。それ以降はいったん6月まで再上昇するもジリ下げの局面に移行し、2024年後半までの2年半以上、67ドルを底とするレンジ相場で推移しています。
2022-2024 円安進行
日本に関しては、2022年から円安が進行しました。ドル円レートは2022年3月4日の114.78円を起点に、上下しつつ7月10日には161.67円まで46.89円もの下落を見せます。この間、WTI原油先物価格はわずかに3.3%下落しましたが、円建て原油価格は円安の影響を受け、16.4%の上昇となりました。
2022.11- 主要産油国による減産
2022年10月、OPECプラスは閣僚級会合において11月以降の日量200万バレルの減産を決定(以降、随時減産量を見直し、2025年1月現在、2026年末まで日量366万バレルの減産を継続予定。)。2023年4月には複数の加盟国が日量166万バレルの自主的追加減産を発表しました(以降、随時減産量を見直し、2025年1月現在、2025年3月末まで日量220万バレルの減産を継続予定。)。市場では需給引き締まり感が意識され、2023年4月上旬には10ドル/バレル超の上昇となり、85ドル/バレルを超える水準で推移しました。
2023.10- イスラエルのガザ侵攻など
2023年10月7日、イスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲し、その後、イスラエル軍がガザ地区の地上侵攻を行いました。18日にはイランがイスラエルに対する禁輸を産油国に呼びかけたこともあり、20日にはWTI原油が90.78 ドルまで上昇しました。
その後、70ドル台まで下落しましたが、2024年8月には、イスラエルとハマスの衝突が飛び火してイスラエルとイランの緊張が高まり、WTI原油は80ドル台に乗せました。
原油価格を読み解くポイント
原油価格の変動要因は「意外と知らない原油 特性と用途を詳しく解説!」でも解説していますが、ここでは以下の6つのファクターから原油価格に与える影響をみてみましょう。
1. 需要の変化
原油価格は世界経済の動向に左右され、特に近年では新興国の需要の影響を強く受けています。原油の需要を地域別にみると、2023年では北米23%、欧州14%、アジア・オセアニアが38%を占めていますが、需要の中心は新興国へシフトしています。日米欧などの先進国では、人口減やエネルギー効率のアップにより需要は安定化する一方、新興国は人口増や中国・インド経済の躍進を受け石油需要への影響力が増大中です。原油需要における新興国の割合は2013年に50%を超え、2023年には55%程度まで拡大しています。
2. 供給の変化
原油の供給を地域別にみると、2023年では北米28%、ロシアを中心とする旧ソ連14%、中東32%となっています。近年では中東産油国を中心とするOPEC(石油輸出国機構)に、ロシアや南米などの産油国も加わった「OPECプラス」という枠組みによって原油価格が下がりすぎないように原油の供給を調節しています。しかし実際には、シェールオイルの生産拡大によって米国の原油生産が増大したこともあり、原油価格の調節が必ずしもOPECプラスの目論見通りになっているわけではありません。OPECプラス自体も一枚岩ではないため、供給が原油価格に与える影響力は読みにくくなっていると言えます。
3. 在庫の変化
原油在庫の変化は原油価格に大きな影響を与えます。特に米国の原油在庫は米国が世界最大の消費国であるため、マーケットで注目される統計情報です。なかでも、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が毎週水曜日に発表する米国の原油在庫(米国の企業が在庫として保有する商業用原油を週間で測定)は、需要変動を確認できる速報性の高い情報とされています。
米国では、2014年以降、シェール革命で原油在庫が拡大し、その時期は原油在庫に反比例するようにWTI原油価格が下落しました。その後、続いて原油在庫が増加したことで、シェールオイルの生産にブレーキがかかると原油在庫の増加は止まります。2017年から在庫の取り崩しが始まると、WTI原油価格の下げは一服しレンジ相場に入ります。
さらに大きな変化を見せたのが2020年前半。新型コロナウイルスの感染爆発により世界経済の先行きが危ぶまれた結果、原油在庫が急増したことでWTI原油価格は大暴落します。その後、経済の再起動を受け在庫の取り崩しが始まったのと連動して、WTI原油価格も急回復しました。このように、米国の原油在庫とWTI原油価格は逆相関関係にあるといえます。
4. 株価と原油価格
米国の株価とWTI原油価格の間には、はっきりとした相関は見られません。ただしリーマンショックや新型コロナウイルスの感染爆発のように、世界経済が同時に何か大きなトラブルが起きた際には、株価と原油価格が同時に急落する傾向があるため注意が必要です。
原油価格については需要・供給両サイドの動向が関係しますが、経済環境が通常モードにある時期、つまり需要が安定している時期には供給サイドが注目されることが多く、この場合は株価とは連動しない傾向がみられます。2014年以降のシェール革命による原油価格下落などがその例です。それ以外では、一般的に株式で言うリスクオン環境では原油価格は上がりやすく、リスクオフだと下がりやすいと言えます。
5. ドルと原油価格の関係
原油価格と米ドルの関係は、ドル高局面では原油価格は下がり、ドル安になると上がる逆相関関係がはっきり成立しています。特にドルが大きな動きを見せた時は、原油価格に強い影響を与える傾向が認められます。たとえば2014年の原油価格急落は、米国シェール革命でシェールオイルの増産が進んだことによる供給要因が大きいと言われています。しかし、同時期に為替市場では急激なドル高が起きていました。実際には、原油価格の急落はこの2要因の相乗効果によって引き起こされたと言われています。そして、原油の需給環境が安定している時期こそ、ドルの動向がそれをかく乱する要因として消去法的に重視されるので、注意が必要となります。
6. ドル円レートと円建て原油価格の関係
原油をほとんど産出せずほぼ全量を輸入に頼る日本においては、原油価格はドル建ての原油価格にドル円レートを掛け合わせたものとなります。円建ての原油価格では、円安は価格上昇要因、円高は価格下落要因となります。そのため、ドル円レートのチャートと円建て原油価格のチャートには一定の相関関係がみられ、ドル円レートが大きく円安に振れた時には原油価格が上がりやすい傾向があります。特に2021年以降に着目すると、ドル円レートと円建て原油価格のチャートがほぼ重なり合っていることからも、この点は明らかです。ただし、本来のドル建て原油価格はドル円レートとは関係なく動くものであり、ドル円レートが安定している時期は、円建て原油価格は海外の原油相場や、需給要因が重視される傾向があります。
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