2020年の原油相場の高値を考える上で重要な“トランプバンド”

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。米原油在庫の減少などで。60.80ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,479.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年05月限は12,780元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年02月限は478.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで548.4ドル(前日終値比5.4ドル拡大)、円建てで1,920円(前日終値比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(12月19日 16時52分頃 先限)
 5,193円/g 白金 3,273円/g 原油 41,770円/kl
ゴム 193.8円/kg とうもろこし 24,460円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「2020年の原油相場の高値を考える上で重要な“トランプバンド”」

今回は「2020年の原油相場の高値を考える上で重要な“トランプバンド”」として、過去のトランプ大統領のツイートを参照し、2020年の原油相場の高値について考えます。

以前の「トランプ大統領の原油関連ツイートを分析①」で述べたとおり、トランプ大統領は、2018年11月に、82ドル近辺の原油価格を高いと感じていることをうかがわせるツイートをしました。

WTI原油価格の過去12カ月平均を参照すると、この82ドルは、リーマンショック直前に付けた高値と直後に付けた安値のおおむね平均です。

82ドルを高いと感じているとすれば、これを中心とした価格帯そのものを高いと考えている可能性が出てきます。筆者はこの価格帯のことを“トランプバンド”と呼ぶことにしました。

実際に、以下のグラフのとおり、2018年5月、原油価格(12カ月平均)がこの価格帯の下限を上抜けようとしていた時、トランプ大統領は減産を延長して原油価格を引き上げようとするOPECを批判するツイートをしました。

原油価格が上昇してトランプバンドに差し掛かるのをけん制したわけです。

このように考えれば、仮に、2020年、原油価格が瞬間的に70ドルなどの高値を超えることがあったとしても、あるタイミングで大きく下落し、12カ月平均では58ドル前後に収れんする可能性が出てきます。

偶然かどうか判断がつきませんが、2019年の値動き(12カ月平均)を振り返ってみれば、直前の2018年12月に、およそ65ドルでバンドの下限を上回っていたものの、2019年1月以降、下落し、バンドの下限を下回りました。2019年12月半ば時点で56ドル近辺で推移しています。

このバンドに関する考え方をさらに深め、後日、2020年の原油相場の見通しを書きます。

図:WTI原油価格の過去12カ月平均の推移(期近 月足 四本値)と月足終値
単位:ドル/バレル


出所:CMEのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。