[Vol.2190] 銅が1.2倍、株価指数は何倍?

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の鎮静化期待などで。95.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,832.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年09月限は17,125元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年05月限は621.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2782.4ドル(前日比45.60ドル拡大)、円建てで14,949円(前日比151円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月8日 18時08分時点 6番限)
25,176円/g
白金 10,227円/g
ゴム 394.4円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「銅が1.2倍、株価指数は何倍?」
前回は、「短期視点で急落中の金(ゴールド)と銀」と題して、株と金(ゴールド)の値動きにおける過去と現在を、確認しました。

今回は、「銅が1.2倍、株価指数は何倍?」と題して、S&P500、原油、銅の価格推移を、確認します。

「ドクター・カッパー(Doctor医者・Copper銅)」という言葉があります。銅相場の動向が景気の先行きを診断している、という考えに基づいた言葉です。少し具体的に言えば、銅相場が上昇している時は、世界中で電線や建物などのインフラ整備が活発に行われている時(景気が良い時)だ、となります。

「経済の血液」という言葉もあります。原油相場の動向が景気の先行きを示すヒントになる、という考え方に基づいた言葉です。少し具体的に言えば、原油相場が上昇している時は、世界中でモノやヒトの移動が活発で、各種素材の需要が旺盛な時(景気が良い時)だ、となります。

株価指数は半年から1年程度先の景気動向に関わる思惑(プラスの思惑は期待、マイナスの思惑は懸念)を織り込んでいる、と述べる筆者の身近にいる株の専門家の話と合わせて考えると、株価指数が上昇している時間帯は、銅と原油の相場も上昇していることになります。

このことは、多くの経済関連の専門書にも書かれており、かつ、新入社員を迎えた金融機関でのレクチャーでも、語られていると考えられます。つまり、多くの人が否定しない、感覚的に受け入れられやすいストーリー(ナラティブ)の上に成り立っている話でもあります。

ここでクイズです。2010年と2025年を比較すると、銅相場は1.3倍、原油相場は0.8倍になりましたが、米国の主要株価指数の一つで、日本の多くの個人投資家の皆さまにもなじみがある「S&P500指数」は、何倍になったでしょうか?

景気動向を診断するといわれる銅の相場が1.3倍(やや上昇)、景気動向の先行きを示すヒントになるといわれる原油の相場が0.8倍(やや下落)であることを考えれば、さほど景気は強くない、つまりこの時間帯のS&P500は、さほど上昇していない、と予想することができでそうです。

このクイズの正解は、図のとおりです。

このクイズの答えは「5.5倍」でした。2010年に1,140ポイントだったS&P500は、2025年に6,216ポイントまで上昇しました。銅と原油の値動きからは想像もつかない規模の上昇を演じました。

銅や原油といったコモディティ(国際商品)側からS&P500の値動きを見ていると、「なぜこんなに上昇しているのだろう?」と素朴な疑問がわいてきます。「銅と原油が景気動向を示していないからだ」というご指摘もあろうかと思います。

とはいえ、史上最高値水準で推移している銅が1.3倍の中で5.5倍をたたき出したことを考えれば、S&P500側に何か、2010年以前にはなかった新しい要素が存在していることを考慮する必要があるでしょう。

図:S&P500、原油、銅の価格推移

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成 イラストはPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。