インフレ再燃と米金利上昇 ― NY金4700ドル割れの背景と今後の分岐点

著者:村石 充
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昨日の終値(4686.70ドル)は、短期的な「トリプル・ネガティブ(ドル高・金利上昇・停戦不透明)」に押された形ですが、中長期的な視点では依然として強気派と慎重派の激しい攻防の最中にあります。

1. 短期的な下押し圧力:利下げ期待の「完全消滅」
昨日のCPI(消費者物価指数)が3.8%と予想を上回ったことで、市場の空気は一変しました。

・「Higher for Longer」の再来: 期待されていたFRBの利下げ観測が後退し、むしろ「追加利上げ」すら否定できないムードが漂っています。

・実質金利の上昇: 米長期金利が上昇すると、利息を生まない金の保有コスト(機会費用)が上がるため、テクニカル的な売りが出やすい局面です。


2. インフレと原油相場:金の「二面性」
現在の101ドル台まで上昇した原油価格は、金にとって「売り」と「買い」両方の材料になっています。

・売りの側面: 原油高によるインフレ再燃が金利上昇を招き、ドルを押し上げる。

・買いの側面: 法定通貨の価値が目減りする中、究極の「インフレヘッジ」としての金が意識される。
短期的には金利上昇による「売り」が勝っていますが、インフレが制御不能と見なされれば、再び資金が金へ逃避する可能性があります。


3. 地政学リスク:トランプ氏の発言とイラン情勢
トランプ大統領の「ごみくず」発言は、中東情勢の緊迫化を再認識させました。

・有事の金: 通常、情勢悪化は金買い要因ですが、昨日は同時に「ドル買い」が強まったため、ドル建ての金には割高感が生じ、上値を抑えられました。


今後の展望
複数の金融機関(ゴールドマン・サックスやJ.P.モルガンなど)は、2026年末に向けて5,000ドル〜6,000ドルという高いターゲットを維持しています。その背景には、各国中央銀行による「脱ドル化」を目的とした金買いが継続しているという構造的な要因があります。


【結論としての方向性】

・短期的: 4700ドル付近を軸とした調整局面。米金利の高止まりとドル高が続く間は、利益確定売りに押されやすいでしょう。

・中長期的: 上昇トレンドの継続。インフレが定着し、地政学的な分断が深まるほど、実物資産としての価値は高まります。今回の「続落」は、長期的な買い場を探る投資家にとっては、過熱感を冷ます健全な押し目となる可能性が高いと考えられます。

現在は「強い経済指標」が「金利上昇(金売り)」として直撃していますが、次に「インフレによる経済の歪み」が意識されるフェーズに入れば、再び反転上昇へ向かうのではないでしょうか。

NY金(日足)
出所:Win Station
 

 

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このコラムの著者

村石 充(ムライシ ミツル)
フジトミ証券(株) 投資助言事業部チーフアナリスト / 認定テクニカルアナリスト(CMTA®)
1996年より金融業界に身を置き、商品先物オプションやFXの自己ディーリングを通じて多様なトレード手法を習得。2007年に日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA®)を取得。現在はYouTube「フジトミチャンネル」にて、独自のサイクル理論と金融占星術を軸に、プライスアクションや移動平均線を組み合わせた実戦的な相場戦略を配信。投資助言サービスでは、金・白金・原油などの商品先物から、日経225・NASDAQ100といった株価指数まで、エビデンスに基づいた売買タイミングを提供している。