[Vol.2210] 糸が切れたたこのように上昇する株価指数

著者:吉田 哲
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原油反発。中東情勢の悪化などで。101.21ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,706.76ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年09月限は17,750元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年06月限は645.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2622.56ドル(前日比20.16ドル拡大)、円建てで14,216円(前日比16円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月12日 17時24分時点 6番限)
24,631円/g
白金 10,415円/g
ゴム 412.7円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金(ゴールド)先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金(ゴールド)先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「糸が切れたたこのように上昇する株価指数」
前回は、「『2010年』は終わりが始まった年だった」と題して、「2010年」というタイミングについて筆者の考えを、述べました。

今回は、「糸が切れたたこのように上昇する株価指数」と題して、株価指数(現地通貨建て)の地域別騰落率(2010年と2025年の年平均を比較)を、述べます。

「ドクター・カッパー(Doctor:医者・Copper:銅)」という言葉があります。銅相場の動向が景気の先行きを診断している、という考えに基づいた言葉です。少し具体的にいえば、銅相場が上昇している時は、世界中で電線や建物などのインフラ整備が活発に行われている時(景気が良い時)だ、となります。

「経済の血液」という言葉もあります。原油相場の動向が景気の先行きを示すヒントになる、という考え方に基づいた言葉です。少し具体的にいえば、原油相場が上昇している時は、世界中でモノやヒトの移動が活発で、各種素材の需要が旺盛な時(景気が良い時)だ、となります。

株価指数は半年から1年程度先の景気動向に関わる思惑(プラスの思惑は期待、マイナスの思惑は懸念)を織り込んでいる、と述べる筆者の身近にいる株の専門家の話と合わせて考えると、株価指数が上昇しているタイミングは、銅と原油の相場も上昇していることになります。

このことは、多くの経済関連の専門書にも書かれており、かつ、新入社員を迎えた金融機関でのレクチャーでも、語られていると考えられます。

しかし、2010年と2025年を比較すると、銅相場は1.3倍、原油相場は0.8倍と小動きの中、米国の主要株価指数の一つで、日本の多くの個人投資家の皆さまにもなじみがある「S&P500種指数(以下、S&P500)」は、5.5倍にもなりました(いずれも年平均)。

景気動向を診断するといわれる銅の相場が1.3倍(やや上昇)、景気動向の先行きを示すヒントになるといわれる原油の相場が0.8倍(やや下落)であることを考えれば、さほど景気は強くなく、S&P500はそれほど上昇していない、と予想することができそうですが、実際には銅や原油をはるかにしのぐ上昇を演じました。

史上最高値水準で推移している銅が1.3倍の中でS&P500が5.5倍をたたき出したことを考えれば、S&P500側が、2010年以前にはなかった新しい要素を抱えていることを考慮する必要があるでしょう。

以下の図は、世界の六つの地域における合計46の株価指数の、2010年と2025年の年平均を比較した資料です。上昇した株価指数の数と下落した株価指数の数を確認すると、前者が43、後者が3でした。

北米にはS&P500のほか、ダウ工業株30種平均やナスダック総合指数などが、アジア、オセアニアには日経平均株価などが含まれています。46の株価指数の9割を超える43の株価指数が上昇したことだけでなく、騰落率の平均が217%に達したことも、大きなポイントです。

2010年以降の世界情勢を振り返ってみると、2011年ごろに北アフリカ・中東地域で武力衝突を伴った民主化運動の波「アラブの春」が起きました。2015年ごろにはチャイナショックと呼ばれた世界同時株安が起きました。

2020年には新型コロナがパンデミック化し、2022年にはウクライナ戦争が勃発し、2023年には中東で大規模な軍事衝突が始まりました。こうした荒波が訪れても、「ほぼ世界同時株高」だったのです。

株価指数は半年から1年程度先の景気動向に関わる思惑を織り込んでいる、という言葉は株価指数の特徴を捉えていると、筆者は考えています。

プラスの思惑「期待」があれば、どんな荒波が訪れようとも、株価指数は上昇することができるのかもしれません。「思惑(=実態ではない)でどこまでも上昇してしまう株価指数」が見られるようになったタイミングが、2010年だったと言えます。

図:株価指数(現地通貨建て)の地域別騰落率(2010年と2025年の年平均を比較)
図:株価指数(現地通貨建て)の地域別騰落率(2010年と2025年の年平均を比較)
出所:Investing.comのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。