2020年は金、原油高で幕を開けた

著者:近藤 雅世
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 2020年は、イラン革命防衛隊の精鋭であるコッズ部隊の司令官ガセム・ソレイマニ氏を米軍が殺害したことで、世界の株価が急落し、金価格と原油価格が上昇するという展開で始まった。東京商品取引所の金価格は昨年年末以来、上場来最高値を複数回にわたり更新しており、1月6日も5488円とこれまでの記録を更新した。JPX(日本取引引所グループ)の清田CEOは商品業界の賀詞交換会において、『株価が下落しているときに、金や原油の商品価格が上昇し、総合取引所の機能が現れた』と述べている。

 NY金価格はリーマンショックやアラブの春、欧州債務危機と続く世界不況の中で、2011年9月に1923.7ドルという過去最高値を付けたが、本年1月6日の1568.8ドルは、フィボナッチ級数の82.6%にほぼ匹敵する価格となっている。この水準を超えて上がっていけば、新高値を発現する可能性が出てくる。

 記事を書いている最中にイランがイラクに駐留する米軍関連施設を攻撃したというニュースが飛び込んできた。イラン議会はソレイマニ氏の暗殺は米国によるテロとみなし、テロに関わったトランプ大統領をはじめとする米国政府関係者をテロの犯人だと特定した。これは、米国政府要人が今後危険にさらされることを意味している。そうした危険が差し迫り、報復の連鎖が始まると、ここ当分世界の景気はそれどころではなくなり、株価は下落し、金や原油価格は高騰し、債券や円は買われることになるだろう。

 いつまで続くか際限が無い見通しであるが、恐らく当面、金も原油も買いが正解になるのではなかろうか。8日のアジア市場では、午前の取引で、MSCIアジア太平洋株指数(日本を除く)は▲0.5%安、日経平均は▲2.5%安、シドニー株は▲1%下げている。

 一方、金現物は+1.91%高の1603.93ドル、米原油先物は+4.42%高の65.47ドル、(なお最新の価格は下のチャートには反映されていない)米国債利回りも急低下して、米10年債利回りは1.7188%と、前日の米国市場終了時の1.825%から10ベーシスポイント超下げている。ドル/円は直近で0.69%の円高で107.67円。ユーロ/ドルは+0.1%高の1.1161ドルとなっているが、いずれも現在の通過点である。東京金先物価格は8日の日中取引で5574円を付け、6日の上場来最高値を更新している。
 

 

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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