減産強化の規模は、少なくとも日量40万バレル以上必要

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。51.78ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,562.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は11,340元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年04月限は409.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで577.2ドル(前日終値比1.5ドル拡大)、円建てで2,030円(前日終値比7円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(2月6日 16時41分頃 先限)
 5,500円/g 白金 3,470円/g 原油 37,400円/kl
ゴム 178.5円/kg とうもろこし 23,970円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「減産強化の規模は、少なくとも日量40万バレル以上必要」

今回は「減産強化の規模は、少なくとも日量40万バレル以上必要」として、現在、OPECプラスの配下組織であるJTC(共同技術委員会)が足もとの原油相場の下落に対して協議しているとみられる“減産強化”について、仮に減産強化を総会に勧告するとなった場合、少なくとも日量40万バレル以上の強化が必要であることについて書きます。

前回掲載した資料を、以下のとおり、具体的な数字を入れて詳しくしました。

減産を守っているかどうかの目安である減産順守率は1月、133%((③-①)÷(②-①))でした。100%を超えれば減産順守であるため、1月は減産順守でした。また、約40万バレルの“余剰削減分”(④=③-②)がありました。

減産強化が仮に決定し、その規模が④と同じだった場合、生産量の上限が②から⑥に引き下がります。これが、日量40万バレルの減産強化(⑤)です。

この規模で減産強化が決定した後、原油生産量が⑦のとおり③(1月の生産量)と同じだった場合、減産順守率は100%、つまり減産順守です。

減産を強化した上で、生産量を削減していないにも関わらず“減産順守”なのです。これが“現状追認型の減産強化”の仕組みです。

ちなみに、1月は、削減すべき量⑧が117万バレルで、実際の削減量⑨は155万バレルでした。(その差およそ40万バレル)

減産強化後のシミュレーションでは、⑧が155万バレル、⑨も155万バレルです。

このように考えれば、現在協議中の減産強化が、少なくとも約40万(くわしくは38万強)バレル以上の強化でなければ、需給バランスを引き締める、本来の減産強化にはなりません。

仮に20万バレル程度の強化となった場合、それは“増産を可能にする”減産強化ということになります。

“強化”という言葉に騙されず、冷静に、強化後の削減幅がどの月に比べ、合計何万バレルなのかに注目することが必要です。

図:“余剰削減量”を用いた現状追認型の減産強化の仕組み  単位:日量
“余剰削減量”を用いた現状追認型の減産強化の仕組み

出所:海外主要メディアのデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。