強化ではなく維持!?わかれる減産合意の評価

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。37.38ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの下落などで。1,714.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,640元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年07月限は289.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで861.9ドル(前日比18ドル拡大)、円建てで3,047円(前日比42円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(6月9日 18時34分頃 先限)
 5,935円/g 白金 2,888円/g 原油 27,920円/kl
ゴム 162.2円/kg とうもろこし 22,850円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「強化ではなく維持!?わかれる減産合意の評価」

今回は「強化ではなく維持!?わかれる減産合意の評価」として、このおよそ1カ月間の原油相場の推移を振り返ります。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、日本のみならず、世界全体で“テレワーク”の普及が進んでいます。

実は、OPEC総会も同様で、4月9日(木)の第9回OPEC・非OPEC閣僚会議(臨時)以降に行われた4回のOPECプラス関連の会合は、いずれも、ビデオ会議形式でした。

ビデオ会議であれば、インターネットがつながり、パソコンなどの端末があれば、会議の参加者が一堂に会する必要はありません。

2018年12月の会合の際、ロシアの代表がプーチン大統領と協議するため、ウィーンから一時帰国する一幕がありました。

ロシアの代表が一時帰国したことがきっかけで、“会合は難航している”“減産が終わるかもしれない”、というムードが市場に伝わり、一時的に原油相場は下落しました。

テレワークで行われた、6月6日(土)に会合について、足元のさまざまな報道の多くは、この会合の最大のポイントは“減産強化”であるとしています。

以下のとおり、もともと、現在行われている協調減産は、2020年5月から2022年4月までの2年間、実施し、削減量は段階的に縮小する設計になっています。

今回の6月6月(土)の会合で、日量970万バレルを削減する第1段階を“7月まで延長する”、ことが決まり、その結果、7月の削減量が当初の予定の日量770万バレルではなく、日量970万バレルとなりました。

確かにこの点は、“7月の”世界の石油の需給バランスを、予定よりも引き締める期待を大きくした、という意味で、原油相場にとっては強材料と言えます。

ただ、“強化した”というよりは、6月の削減量を“維持した”とも言え、かつ、その影響期間が7月のみのため、大きな強化とは言いにくいと感じます。

図:2020年4月12日(日)に行われた第10回OPEC・非OPEC閣僚会議での合意事項
2020年4月12日(日)に行われた第10回OPEC・非OPEC閣僚会議での合意事項

出所:OPECの資料から筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。