週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比3.64ドル高の41.04ドル、ブレント原油は3.70ドル高の43.17ドルとなった。

 前週末の海外原油は、トランプ大統領が新型コロナウイルス陽性の判定を受けたとの報でリスクオフの動きが強まり急落した。ただし株式が下げ止まると、安値からは値を戻す格好となった。

 先週はトランプ大統領のコロナウイルス感染が警戒される場面も見られたが、早期の退院が発表されたことで切り返すと、ハリケーンの接近なども支えとなり堅調な推移となった。週明けはトランプ大統領が退院すると発表したことで先週末にかけて高まったリスクオフの姿勢が後退し買いが入った。また、ノルウェーで作業員のストライキにより海洋石油ガス田6カ所が操業を停止したことも相場を押し上げた。翌6日は米メキシコ湾岸に大型ハリケーン「デルタ」が接近していることが警戒され続伸。海上油田の約29%が生産を停止していることから一時的に供給が減少するとの思惑に支えられる格好となった。ただし高値からは戻り売りに押されると、週中にかけてはトランプ米大統領が追加景気刺激策についての協議を大統領選後まで見送るよう指示したことが嫌気され下落した。また、EIA統計で原油在庫が予想外に増加していたことも重しとなった。週末にかけては再び押し目を買われる形で上昇すると、サウジアラビアが協調減産の段階的緩和をめぐり、来年初めに予定されている生産引き上げの中止を検討していると伝わったことが好感され上昇した。OPECプラスは現在日量770万バレルの減産目標に沿って生産量を調整しているが、来年1月からは同200万バレル増産する予定となっていた。
 
原油チャート

今週の原油相場はWTIベースで直近高値の41.72ドルを上抜くことができるか否かに注目したい。前週末はトランプ大統領がコロナウイルス陽性の判定を受けたとの報から急落したものの、早期に退院したことから安心感が広がり今週にかけて値を戻した。トランプ大統領が米追加経済対策の協議を一時停止すると発表したことは重しだが、1200ドルの特別給付金や、航空業界・小規模企業への支援策は協議するよう議会に要請していること、自身が再選されれば大規模な対策を打ち出すと言及していることは好感されており、楽観的ムードが根強い。また、15日にOPECプラスの共同技術委員会を控える中でサウジアラビアから来年の増産計画の見直しを検討するとのコメントも出ており、会合に向けて期待感が高まれば下支え要因となりそうだ。ただし、先週買い材料となっていたハリケーンの下支え効果がはがれ、米国に原油在庫の増加が続くようであれば下落する可能性も考慮しておきたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。