週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.44ドル高の48.21ドル、ブレント原油は同1.10ドル高の51.28ドルとなった。

 前週末の海外原油は米ニューヨーク州で今週から店内での飲食が禁止されるなど、世界的に新型コロナウィルスの感染拡大が続いていることが嫌気され軟調な推移となった。

 先週はワクチンの普及で経済活動が正常化に向かうとの期待感や米追加経済対策の進展期待、ドル安の進行などが支えとなり上値を伸ばす展開となった。週明けは米株安やドル高進行に上値を抑えられる場面は見られたものの、米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナワクチンの緊急使用許可が米国で認められ、医療関係者や高齢者に対する接種が始まったことから感染者数の拡大が沈静化するとの期待感が高まり堅調な推移となった。また、サウジアラビアのジッタ港に係留中の燃料タンカーに爆発物を積んだボートが衝突したと伝わったことで、中東の地政学リスクへの警戒感が高まったことも買いを誘った。翌15日は英国や米国、カナダでワクチン接種が開始しており、経済活動が正常化に向かうとの期待感が支えとなり上昇。翌16日もワクチンへの期待感が支えとなったほか、EIA統計において原油在庫が予想以上に減少、製品在庫も予想ほど増加していなかったことが好感され堅調な推移となった。また、パウエルFRB議長が米景気の回復が遅れれば追加緩和を躊躇なく行う姿勢を示したことからドル安が進んだことも支えとなった。週末にかけては、米国で9000億ドル規模の追加経済対策が間もなく合意に至るとの期待感から株高、ドル安が進んだことに支えられた。また、中国やインドなど、アジアでの石油需要が拡大するとの期待感が高まっていることも好感された模様。



 今週の原油相場は引き続き高値圏での推移が想定されそうか。足元は原油独自の材料に乏しい中で引き続き為替や株式市場の動向をにらんだ展開が想定されるが、コロナウィルスワクチンの普及や米追加経済対策への期待感からリスクオンムードが強く、株高・ドル安傾向が続いていることに支えられやすい地合いとなっている。特に為替市場ではFRBが量的緩和を長期を継続する方針を明らかにしたことで米ドルが主要通貨に対し約2年半ぶりの安値まで下落するなど、当面はドル安基調が持続しそうだ。ただし、テクニカル的には短期的な買われすぎ感が強く、コロナ流行前の高値を上抜いたことで高値達成感もでてきている。また、クリスマス休暇や年末を控えたポジション整理の動きが出てもおかしくないため、買いからエントリーする場合高値掴みには注意したいところだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。