とれんど捕物帳 典型的な強気相場のパターンが見られたが簡単ではなさそう

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週も色々あったが、ドル円は底堅く推移し114円台で今週を終えている。比較的ネガティブな材料もあったように思われ、直後は売りの反応を見せるものの直ぐに戻してしまう動きが続いている。ネガティブな材料が出た時に、どのような値動きをするかで地合いを判断する方も少なくないかもしれない。今週は典型的な強気相場のパターンが見られたと言えよう。

 特に週末の米雇用統計は予想よりも弱い内容ではあったが、ネガティブな反応は一時的となっている。むしろ、米雇用統計後のドル円の力強い展開にロング勢も自信を深めたのか、米国債利回りが下げたにもかかわらず、ドル円は目先のターゲットとなっている114.50水準をトライする場面も見られた。

 そのほかドル円に絡んだ今週の主な材料としては、FOMCや米下院共和党の税制改革法案の公表、そして、パウエル氏が次期FRB議長に指名されたことなどであろう。FOMCについては予想通り大きな変更はなく無風通過であった。

 米下院共和党の税制改革法案だが、マーケット的な注目点としては法人税の20%への引き下げ、海外留保資金の米国回帰を促す一度限りの減税措置が12%、所得税の最高税率の据え置き、そして、これが一番反応していたようにも思われるが、住宅ローン減税の適用範囲の縮小などがある。

 法人税の20%への引き下げについては、一部報道で2022年にかけて段階的な引き下げといった観測報道も流れていたが、それは触れられていない。その意味では若干ポジティブだったと言えよう。最高税率の据え置きに関しては富裕層への優遇策と捉えられるを嫌ったのであろう。どうしてもマーケット的には悲しいかな、富裕層の金満パワーはある程度、重要なアイテムなので一応ネガティブ。

 そして、住宅ローン控除の適用範囲縮小だが、新規に購入する住宅のローン上限が100万ドル(約1億1400万円)から50万ドル(約5700万円)に引き下げられている。米国の場合、新築住宅の中間価格が概ね30万ドル、中古で25万ドルといったところなので、多くはローン利子分を全期間に渡って所得から控除できる。しかし、高級住宅の場合は今後難しくなる。専門家からは高級住宅市場の価格は10%、全米では3~5%住宅価格が下がる可能性があるとの試算も出ており、一応ネガティブ。

 ちなみに日本の場合は、新築や築20年以内の中古など購入物件の条件はあるが、ローン残高の上限が4000万円(優良住宅なら5000万円)で、残高の1%分を所得税額から直接控除する税額控除。所得税で控除しきれない場合は一部住民税からも引くことができる。税額控除なのでかなりお得な制度ではあるが、適用期間は10年と短い。

 そして、海外留保資金の米国回帰を促す一度限りの減税措置が現金の部分で12%、それ以外が5%となっているようだ。これはトランプ大統領の主張する10%やライアン下院議長の8.75%よりは高め。アップルやマイクロソフトなど世界的なIT企業の海外に留保している資金は留保金総額の90%超まで流出させている。アップルは現金、証券あわせて約2615億ドルのうち約94%が海外にプールされているようだ。単純計算で約2460億ドル(約28兆円)。

 ただ、これについては大半がドル建資産で保有しているとも言われており、2004年にブッシュ政権下で成立した本国投資法(HIA)ほどのドル需要は発生しないとも言われている。また、期待ほど米国内に戻らないとの見方もあるようだ。

 それでも今回の税制改革法案を成立できれば、かなりの経済効果は期待できると思われるが、成立できるのか不安も出ているようだ。最重要公約の一つでもあり、トランプ政権は遅くとも年内と意気込んでいるようだ。

 最後にトランプ大統領が次期FRB議長にパウエル氏を指名することを発表した。事前に観測が流れていたこともあり市場の反応は限定的だた。今回のパウエル氏の指名から垣間見られることは、対抗馬はテイラー氏だったが、今回の人選の要因として、テイラー氏であれば、金利上昇圧力が強まりドル高も誘発する。パウエル氏は共和党支持者でもあり、一番バランスの取れた選択をしたのではないだろうか。ただ、今回の人選から見てもトランプ政権は低金利、ドル安志向が強いことが確認できたとも言えるのかもしれない。その点は留意したい。

 さて来週だが、トランプ大統領がアジアを歴訪する以外はドル円相場に直接影響を及ぼしそうなメジャーなイベントは少ない。北朝鮮絡みで何かなければ、ドル円は115円を試す可能性が高まっている。ただし、114.50から115.00の売りはそれ相応に強いものであることは間違いなさそうだ。簡単ではないと思われる。

 ドル円の想定レンジだが、113.50~115.50を見込む。スタンスは引続きやや強気。

()は前週 
◆ドル円(USD/JPY) 
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 →(↑↑↑)

◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑(↑↑)

◆豪ドル円(AUD/JPY) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(→)

◆ユーロドル(EUR/USD) 
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(↓)

◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 下げトレンド継続
短期 →(→)

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minkabu PRESS編集部 野沢卓美
 

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