【来週の注目材料】労働市場の鈍化傾向は続くのか?<米雇用統計>

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 2017年も半分が過ぎ、7月がスタートです。来週金曜日は月一のビッグイベント雇用統計が発表されます。

 年内の追加利上げについて、市場の見通しが、利上げと据え置きでほぼ五分五分に割れる状況。利上げを決めるFRBの2つの命題
雇用の最大化とインフレターゲット2%に向けた動向への注目が高まる状況です。

 相場に与える影響から、常に注目度が高い米雇用統計ですが、今年後半はいつも以上に注目度が上がっていくと予想されます。

 前回5月分の雇用統計は、マーゲットに失望感を与えるものとなりました。

 特に弱さが目立ったのが非農業部門雇用者数(NFP)。NFPは前月比+13.8万人。予想の+18.2万人を大きく下回りました。また同時に発表された4月分の改定値は+17.4万人と速報値の+21.1万人から大きく下方修正、3月分の確報値は+5.0万人と、改定値の+7.9万人、速報値の+9.8万人からこちらも大きく下方修正されました。前月、前々月分合わせて6.6万人の下方修正となります。

 なお、NFPの数字は月毎のブレがどうしても出てくるため、単月の数字だけでなく、3か月平均の値もよく注目されていますが、前回までの3か月の平均値は+12.1万人と、2012年7月以来、約5年ぶりの低水準となりました。

 NFP以外の数字を確認してみましょう。 

 失業率は4.3%と、予想及び前回値の4.4%から低下しました。こちらは2001年5月以来、約16年ぶりの低水準(こちらは強い数字です)となっています。ただ、労働参加率が62.7%と、前回の62.9%から0.2ポイントも低下しています。労働参加率が低下すると、一般に失業率も低下するため、失業率の好数字は、労働参加率低下が原因という見方が広がってしまい、市場への影響はそれほど見られませんでした。
 
 とはいえU6失業率が8.4%と、前月の8.6%から0.2%低下して、2007年11月以来の低水準となっており、実際に完全失業率に近いのではという印象を与えています。

 平均賃金は前月比+0.2%と予想通り、前年比は+2.5%と予想の2.6%を下回りました。水準的にも、これまでとの比較という面でも弱めの伸びという印象です。

 こうした前回までの状況を受けて、今回6月分の雇用統計の事前予想を確認してみましょう。

 NFPは+17.9万人に回復する見込みです。失業率は前回と同水準の4.3%。平均賃金は前月比+0.3%、前年比+2.6%とともに改善が見込まれています。

 NFPの20万人超えは果たせていませんが、全体にまずまずという印象です。

 関連指標の動向を見てみましょう。

 新規失業保険申請件数は、雇用統計と統計期間(12日を含む週))が被る6月11日から17日にかけて前週比+24.1万件と、その前の週と比べて0.3万件増加しています。また、5月の統計期間が被る週の23.3万件と比べても、やや多い数字となっています(多い方が弱い数字)。ただ、水準的には決して弱いものではなく、雇用情勢の堅調さという印象を崩すものではありません。

 3日23時発表のISM製造業景気指数(6月)は55.0と54.9から若干改善見込み。前回5月分の数字は新規受注が59.5とかなり強め、雇用も53.5と4月の52.0から改善するなど、かなり好印象の結果となりました。 今回の数字も予想通り改善し、雇用部門も強めに出てくるようだと、雇用統計の好結果に対する期待感にもつながってきそうです。

 6日21時15分発表のADP雇用者数(6月)は前月比+17.8万人と、前回の+25.3万人から大きく鈍化見込みです。ただ、前回+18万人予想に対して+25.3万人とかなり強めの数字となったものの、相関が高いといわれる雇用統計本番が弱めとなったことで、相関自体への不信感から影響力が下がっている可能性があります。また、前回から鈍化とはいえ、雇用統計本番の予想との乖離が少ないことなどから、予想前後の数字が出てくると、相場への影響は限定的と見られます。

 同じく6日23時発表のISM非製造業景気指数(6月)は56.5と、前回の56.9から小幅鈍化見込み。前回も、前々月の57.5からの鈍化しており、好調な水準ではあるものの、期待感がやや鈍化するあたりが気になるところです。内訳を確認すると、前回は新規受注が半年ぶりの低水準となる57.7に低下。4月は63.2と2005年8月以来の高水準となり、その反動が出た面があるかもしれません。もっとも、雇用部門は4月の51.4から57.8と2015年7月以来の高水準となりました。ISM非製造業に関しては、鈍化しているといえ、元々の水準が高めなこともあり、雇用部門の好調さが維持されると、雇用統計本番への期待につながりそうです。

 こうした状況を踏まえると、予想前後の回復は十分にありそう。

 予想通りもしくは予想以上の好結果が出てくると、雇用の鈍化懸念が後退し、米国の年内追加利上げ期待にもつながって、ドル買いが入る可能性がありますので要チェックです。 

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