5日からの週は、リスクイベントが多い1週間だった。8日木曜日に、ECB理事会、英総選挙、コミー前FBI長官の議会証言が相次いだ。インパクトが大きかったのが、英総選挙結果。事前の世論調査では与党保守党の優勢が伝えられていたが、次第に労働党との差が縮小傾向となった。結果は保守党が単独での過半数を確保できず、ハングパーラメント状態となった。ポンド相場は急落。メイ英首相は連立政権を模索し辞任しないとしているが、今後のEUとの交渉開始時期などには不透明感が広がっている。ECB理事会では追加利下げをしないと表明、成長見通しを引き上げるとともに、インフレ見通しは引き下げた。政策金利はQE終了までは動かさないとしている。この内容を受けてユーロ売りの反応。コミー前FBI長官議会証言については、前日に証言内容が報じられており、トランプ大統領からの命令はなく、要求に留まったとしていた。証言でも事前報道から逸脱する内容はみられず、ひとまず無難に通過した格好。ダウ平均は日中取引での最高値を更新。全般に株式市場の堅調さが目立つ週だった。原油相場は需給の緩みが懸念されて下落も、総じてリスク回避相場は後退。米債利回り上昇とともにドル円は109円台から110円台へと下げ渋り。ドル買い優勢とともに、ポンド安が突出した。一方で、雇用統計の好調を受けてカナダドルが堅調。 (5日) 東京市場は、ドル円が110円台で振幅。週明け早朝は前週末の米雇用者数の伸び鈍化の影響を受けて110.20台まで下押しされた。週末にロンドンでテロ事件が発生したことも重石に。その後は110円台半ばでの揉み合いを経て、午後には110.70台まで反発。方向感に欠ける取引となった。豪ドルは5月財新・中国非製造業PMIが予想を上回り、堅調に推移。 ロンドン市場では、各通貨がまちまち。全般的な方向性は希薄だった。ドル円は110円台半ばでの揉み合いに落ち着いた。ユーロが小安い一方で、ポンドは反発。最新の英世論調査で、総選挙での保守党優勢が続いていることが安心感を広げた。豪ドルは引き続き堅調。ドイツとスイス市場が祝日のため休場。英独・ユーロ圏の非製造業PMIへの反応は鈍かった。 NY市場は、様子見ムード。ドル円は110円台半ばでの狭いレンジ取引に終始。ユーロドルは1.12台半ばでの推移。先週の米雇用統計後の下落から一服はしていたが、上値は依然として重い。今週のECB理事会や英総選挙、そしてコミーFBI前長官の議会証言といった重要イベントを控える中、方向感はないようだ。朝方発表になった米ISM非製造業景気指数は予想を若干下回ったものの、予想の範囲内として反応薄。 (6日) 東京市場で、ドル円は下落。ドル円は110円台半ばから109.70台まで下落。株安・原油安とともに米債利回りが低下、リスク回避の動きとなっている。豪ドルは一時急落。第1四半期の豪州経常収支が予想を上回る赤字幅となったことに反応。ただ、その後の豪中銀金融政策発表は予想通りとなり、揉み合いあとに豪ドルは買い戻された。 ロンドン市場では、円買いが継続。ドル円は109.45近辺に安値を広げた。クロス円も軟調。円買いの背景には6月8日の英総選挙を控えた政治リスクへの警戒感がありそうだ。直近の世論調査で、保守党の獲得議席予想がやや減少していた。英テロ事件の影響も残り、欧州株は総じて軟調。この日は、南ア・ランドが急落した。南ア第1四半期GDPが予想外のマイナス成長となり、リセッション入り。ランド円は一時8.49円台に。 NY市場は、ドル売りが強まった。ドル円はリスク回避的な円買いも加わり、一時109円台前半まで一段安。米債利回りが下げ止まらず、見切り売りを誘った。中国が米国債を買い増す用意との報道にも反応した。ユーロドルは1.12台後半で底堅い。ただ、1.13台乗せには慎重。ポンドは軟調。特に対円では140円台へと一時2円超の大幅下落となった。英世論調査で、保守党が過半数議席に届かないとの見方がでていた。 (7日) 東京市場は、様子見ムード。明日のECB理事会、英総選挙、コミー前FBI長官の議会証言を前に、積極的な取引を避ける動き。ドル円は109円台半ばでの揉み合い。日経平均の上昇を受けた買いは109.60近辺まで。豪ドルは堅調。豪州GDPはほぼ予想通りの結果だったが、事前にマイナス成長を予想する向きもあり、豪ドルは買いに反応。 ロンドン市場では、ユーロ相場が下落。あすのECB理事会を控えて、インフレ見通しが引き下げられるとの一部報道に反応した。ユーロドルは1.12台後半から1.12ちょうど手前へ、ユーロ円は123円台前半から122円台後半へと下落。ドル円は振幅。序盤に109.12近辺まで下押しも、109円台半ばへと下げ渋り。クロス円も下に往って来い。豪ドルは東京市場からの買いが継続。対円は82円台後半、対ドルは0.75台後半へ。 NY市場では、ドル円に買い戻しが入った。明日のコミー前長官の議会証言を前に事前テキストが伝わっており、「トランプ大統領は忠誠を要求し、フリン氏の捜査終了を希望した」と言及している。あくまで違法な圧力ではなく、要望という点がポジティブな印象だったようだ。ドル円は一時109.90近辺まで上昇。ユーロドルは1.12台を堅持し、やや反発。ポンドドルは1.29台半ばまで上昇。英総選挙への不透明感は続いているが、いったん買い戻しの動き。原油在庫増で原油相場が急落、カナダドルには売り圧力が掛かった。 (8日) 東京市場では、円高の動き。ドル円は朝方に110円台に一時乗せたものの、その後は109.90近辺で揉み合い。午後には通信社報道の「日銀の出口戦略は時期尚早から説明重視に~関係者」との記事が、円買いを誘った。ドル円は一時109.40割れ水準まで下落。ユーロやポンドは小動き。豪ドルは豪州貿易黒字が予想に届かず売り反応。しかし、値幅は30ポイント程度に留まった。 ロンドン市場では、ややドル買い。ドル円は買い方向に切り返しており、110.15近辺まで反発。米債利回りの上昇が下支え。クロス円もドル円とともに上昇。東京市場から往って来いとなっている。ユーロドルは1.12台前半、ポンドドルは1.29台前半へと小安い。ただ、ECB理事会や英総選挙、前FBI長官の議会証言などの注目イベントを控えて動きにくさは否めない。 NY市場では、ドル買いが優勢。ECB理事会やコミーFBI前長官の議会証言が行われたが、概ね市場の予想範囲内で波乱なく通過している。9日東京時間の、英総選挙結果待ちといったところ。ECB理事会は、利下げの可能性示唆するガイダンスを削除する一方で、量的緩和については12月まで継続し、必要に応じて延長するとの文言を残した。事前報道通りインフレ見通しが引き下げられた。ユーロドルは振幅も、次第に売り優勢となり一時1.12台割れ。ドル円は110円付近で底堅く推移。コミーFBI前長官の議会証言では、トランプ大統領からは、フリン氏捜査の中止に関して「命令はされていない」と述べていた。一方で、トランプ大統領との会話のメモが流失した件については「特別検察官の設置につながると思いメモ流出を望んだ」とも。事前報道から逸脱する内容はなかった。 (9日) 東京市場では、ドル円がしっかり、ポンドは不安定。午前6時に投票が締め切られた英総選挙は、保守党が第一党を保持も単独過半数を確保できず、ハングパーラメントの状況に。ポンド売りが一気に広がる形となった。メイ英首相が責任を取って辞任するとの観測が出ていた。ポンドドルは1.29台半ばから一気に1.27ちょうど近辺へと急落。その後は神経質な上下動も上値は重い。ポンド円は142円台から139円台半ばまで急落、戻りは141円台と振幅。ドル円は110円台前半へと上昇。前日のコミー前FBI長官の議会証言をうけたドル買いの流れが再燃。日経平均は104円高で引けた。 ロンドン市場は、序盤にポンドが一段安も次第に下げ渋り。ポンドドルは一時1.26台前半、ポンド円は139円台半ばまで下落。その後は下げ一服と神経質な上下動。メイ英首相は辞任しない意向と報じられ、保守党はDUPとの連立を発表。議会で過半数を確保し、本日中にも主要閣僚を指名する方針。展開は急となっている。英経済指標には反応薄。ユーロは上値が重い。対ポンドでのクロス取引に振り回されている。ユーロドルは一時1.1170近辺に安値を広げた。一方、ドル円は堅調に推移しており、110.48レベルに高値伸ばしている。 NY市場は後半になってドルが伸び悩んだ。ドル円は一時110.80近辺まで上昇していたが、110円台前半に値を落としている。きょうの200日線は110.50付近にきていたが、結局、回復できずにいる。米株式市場でIT・ハイテク株が一斉に利益確定売り押されたことから、ナスダックが急落し、連れて米国債利回りも上げ幅を縮小したことから、ドル円も追随した格好。
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。