きょうの市場はリスク回避の雰囲気が強まり、為替相場はドル安・円高の動きが強まった。ドル円は高値から200ポイント超急落し、110円台に下落した。機密情報の漏洩やフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)のロシア疑惑を巡るコミーFBI長官の更迭などトランプ大統領の一連のロシアスキャンダル関連で、市場はリスク回避の雰囲気を強めている。 一部には今回のスキャンダルでトランプ大統領の弾劾が取り沙汰されており、大型減税や規制緩和など市場が期待している経済政策への不安感が高っているようだ。 米株式市場でダウ平均は370ドル超の急落、米10年債利回りは2.21%まで急低下しており、CMEのFEDウォッチでは影響を懸念して6月利上げの確率が64%まで低下した。 今週に入って突然浮上したスキャンダルにロング勢も一旦、見切売りを入れざるを得なくなったようだ。ドル円は4月中旬からのリバウンド相場のフィボナッチ61.8%戻しが110.50付近に来ており、目先の下値サポートとして意識される。 一方、リスク回避の雰囲気が席巻する中、その受け皿となったのが引続きユーロだ。ユーロドルは1.11台半ばまで上昇している。昨年11月のトランプ大統領が選挙戦で勝利した直後につけた水準。 仏大統領選も波乱なく通過し、今秋に予定されているドイツ総選挙でもメルケル首相率いるキリスト教民主同盟が地方選で連続勝利しており、市場には、欧州の政治リスクに対する安心感が広がっているようだ。 このところ、欧州経済に景気回復の兆しが強まっており、市場ではECBの出口戦略に対する期待感が高まっている。早ければ6月の理事会でガイダンスを変更し、年内には量的緩和の拡大ペース縮小の計画が示されるとの期待感も根強い。 一方、同じ欧州通貨でもポンドは上値が重い。対ドルでは上昇したものの、ユーロや円に対しては軟調。きょうは英雇用統計が発表になり予想以上の改善を見せていたものの、平均賃金(賞与除く)は前年比2.1%と伸びは鈍化傾向が続いている。 また、英中銀が公表した調査によると、物価高の影響で個人消費が減速する一方、企業が賃上げペースを加速する兆候はほとんど見られていないことが明らかとなっている。中銀が先週公表した四半期インフレ報告の経済見通しとほぼ同じ内容で、企業の投資意欲はやや上向いているものの、賃金を押し上げる意欲には乏しいとしている。 メイ首相が総選挙を表明して以来、メイ首相が選挙に勝利すれば、EU離脱交渉が有利に働くとの期待からポンドはリバウンドの動きが強まっていたが、足元のファンダメンタルズにはやや不安感もあるようだ。 みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。