今週のドル円も買い戻しが続き、114円台まで上昇している。週足は4週連続で陽線を示現してたが、さすがに週後半には調整も見られ。114円台は維持できなかった。特に金曜日の米小売売上高と消費者物価(CPI)の反応は調整色の強まりを感じさせる。CPIがコア指数で前年比1.9%と2015年11月以来維持してきた2%を割り込み、3ヵ月連続で伸びが鈍化している。教育や通信の物価の下げが続いている。 インフレと失業率との間に存在する負の相関関係を示したフィリップス曲線というがあるが、以前よりは負の相関関係は弱まっているとの指摘も良く聞かれる。要は失業率の低下の割には賃金上昇が追いついていないためであろう。それがトランプ大統領を誕生させたとも言えなくもないが。 一方、小売売上高については前回の上方修正分も加味すれば、第1四半期の個人消費の回復を期待できそうな内容ではある。予想自体がかなり高めだった印象もあり、今回の指標に対する市場の期待感がかなり高かったのかもしれない。 過熱感もやや出ていたためか、内容の割には為替や米国債市場の反応は結構派手だったように思われるが、市場の一部では今回の指標を受けて、6月利上げに対する確信がやや揺らいでいるようだ。CMEが算出しているFEDウォッチでの6月利上げの確率は前日の83%から74%に低下している。しかし、それでも74%は十分高いが。 現状の金融政策は利上げ過程というよりもむしろ、正常化の過程である。年内あと2回の利上げであれば、十分正当化できる状況にはあると思われ、FOMCメンバーの意志次第の部分が大きいように思われる。次回6月FOMCは13、14日に予定されているが、それまでの指標はもちろんのこと、FOMCメンバーからの発言に十分注意したい局面にはある。 そのほか、日本時間の早朝に米商品先物協会(CFTC)から発表になっていたIMM通貨先物の建玉で、とうとうユーロが買い越しに転じている。一旦、売り買いどちらかに転じると、しばらく続く傾向にはある。仏大統領選が無事に通過したこともあるであろうが、ここに来てECBの出口戦略への期待が高まっている。 ドイツ誌の報道によると、ECBは経済成長に対する下振れリスクはほぼないというメッセージを年央から伝え始めたい考えだという。7月から出口戦略を金融市場に準備させ、秋にはその計画を提示するという。そして、来年初めから月間の債券購入ペースを100億ユーロまたは200億ユーロずつ縮小させ、2018年末からは必要に応じて政策金利を引き上げるとも伝えていた。先日も述べたがユーロに関しては、この先も不透明な政治イベントが控えており、手を出しにくい面もありそうだ。 欧米の金融政策もこの先、更に流動化して行きそうだが、ただ一つ確実に言えることは、日銀は当面動けそうにないということだ。一定の円売り圧力は続くのかもしれない。ある意味、さみしい話ではあるが。 さて来週だが、来週は日本のGDPや英インフレ統計などがあるが、米経済指標自体は少ない。やはり上記にも示した通り、FOMCメンバーの発言が注目される。恐らく年内あと2回の利上げとバランスシート縮小開始というメインシナリオに変更はないものと考えるが、注意深く見る必要はありそうだ。 下記のドル円の中期トレンドは中立から上に変化している。中期のみならず、長期のトレンドの上向きの兆候を示唆し始めている。テクニカル的にも簡単には見切売りが強まる局面ではなさそうだが、来週は中立のスタンスを想定したい。 一応、予想レンジとしては、112.00~115.00を想定したい。 ()は前週 ◆ドル円(USD/JPY) 中期 中立から上へトレンド変化 短期 ↑↑↑(↑↑↑) ◆ユーロ円(EUR/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↑↑↑(↑↑↑) ◆ポンド円(GBP/JPY) 中期 上げトレンド継続 短期 ↑↑↑(↑↑↑) ◆豪ドル円(AUD/JPY) 中期 下から中立へトレンド変化 短期 ↑↑↑(↑↑) ◆ユーロドル(EUR/USD) 中期 上げトレンド継続 短期 →(↑↑↑) ◆ポンドドル(GBP/USD) 中期 上げトレンド継続 短期 →(↑↑↑) (みんかぶ「Klug」 野沢卓美)
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