S&P500 月例レポート ― 業績ポジティブ・サプライズが地政学リスクを圧倒 (3) ―

配信元:株探
著者:Kabutan
●好調な企業業績が市場を下支え

 企業の雇用とレイオフ関連では、3月のADP全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は事前予想の17万人増を大幅に上回る26万3000人増となりました。一方、労働省発表の3月の雇用統計では非農業部門雇用者数は事前予想の17万5000人増に対して9万8000人増と予想を大きく下回りました。3月の失業率は2月の4.7%から4.5%に低下しました。2月の求人労働移動調査(JOLTS)によると、求人件数は前月の562万5000件から574万3000件に増加しました。Amazon.com(AMZN)は来年にかけて米国内で3万人のパート社員を採用すると発表し、Wal-Mart(WMT)は昨年と今年に入ってからこれまでに実施した大規模な人員削減に続き、今後も海外部門とテクノロジー部門で数百人規模の削減を計画していることを明らかにしました。

 米国経済関連では、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は53.3となり、サプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は57.2と、景気判断の節目である50を大幅に上回りました。3月のサービス業PMIは52.8、ISM非製造業景況指数は55.2でした。3月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比2.3%上昇、コアPPIは同1.6%の上昇でした。3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%上昇、コアCPIは同2.0%の上昇となりました。2月の建設支出は前年同月比3.0%上昇しました。3月の米自動車販売台数は減少し、General Motors(GM)は1.6%減少、Ford(F)は7.2%減少でした。2月の製造業受注は1.0%増加し、3月の耐久財受注は0.7%増加しました。3月の鉱工業生産指数は0.5%上昇し、設備稼働率は76.1%に上昇しました。輸入は前年同月比4.2%増加し、輸出は同3.6%増加しました。3月の景気先行指数は0.4%上昇し、予想の0.2%上昇を上回りました。2017年第1四半期の雇用コスト指数は前期比0.8%上昇、前年同期比2.4%上昇となりました。2017年第1四半期のGDP成長率(速報値)は前期比0.7%となり、事前予想の1.1%を下回りました。高額商品(自動車など)の消費が減速したことが背景にあります。2016年第4四半期の成長率は2.1%でした(第1四半期の改定値は5月26日、確報値は6月29日に発表予定)。

 住宅市場は引き続き総じて好調で、4月のNAHB住宅市場指数は予想を下回ったものの大幅な伸びとなりました。3月の住宅着工件数は予想を下回りましたが、建設許可件数、ならびに新築住宅販売件数は予想を上回りました。FHFA住宅価格指数は0.8%上昇し、2月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で6.9%の上昇となりました。

 決算発表は市場の支援材料となりました。一方、減税案や各国の選挙結果も市場を支えたものの、決算発表ほどではありませんでした。本稿執筆時点で、290銘柄(S&P500指数の時価総額の63%に相当)が決算発表を終え、そのうち営業利益見通しを上回ったのは220銘柄(全体の75.9%。過去平均は67%)、下回ったのは48銘柄、予想通りとなったのは22銘柄でした。

 金融セクター(決算発表シーズンが始まった4月は0.97%安)は本稿執筆時点で51銘柄中41銘柄が予想を上回っています。ヘルスケア・セクター(同1.45%高)は31銘柄中28銘柄が予想を上回りました。情報技術セクター(同2.44%)は36銘柄中31銘柄が予想を上回っており、同セクターに対する期待は高く、S&P500指数に最も大きく寄与すると見込まれています。売上高に関しては、結果はこれまでのところ好調で、289銘柄中186銘柄が予想を上回りました(64.4%)。第1四半期は前年同期比で21.2%増(直近の減収局面は2016年第1四半期頃にボトムを付けました)、前期比で4.1%増と予想されています。法人税改革あるいはリパトリ(海外利益の還流)の行方が不透明な中、企業は踏み込んだ予想を立てにくいようで、ガイダンスは期待を下回ったものの、これは想定通りでした。

 2017年第2四半期に関するボトムアップの業績予想は月中に0.8%引き下げられましたが、基調の転換というよりノイズによるもので概ね堅調に推移しており、四半期ベースでの過去最高益の更新を示唆しています。下半期の予想も決算発表シーズン開始以降0.1%引き上げられて堅調となっており、四半期および年間での過去最高を示唆しています。現時点では、2018年の見通しはほとんど希望(そして夢)にすぎないため、相場にはほとんど織り込まれていません。

※「業績ポジティブ・サプライズが地政学リスクを圧倒 (4)」に続く。

株探ニュース

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