S&P500 月例レポート ― 高値更新街道を突き進む米国市場 (3) ―

配信元:株探
著者:Kabutan
●個別銘柄

 ○オンライン小売企業アマゾン・ドット・コムは、プライム会員向けセール「プライムデー」を6月21日と22日に開催すると発表しました(2015年に始まった「プライムデー」は通常夏に開催されていますが、2020年は10月に開催されました)。

 ○航空会社ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスは時速1300マイル(時速2100キロ)で飛行可能な超音速旅客機15機を発注したと発表しました。同機は開発中で、2020年代中の引き渡しが予定されています。唯一の超音速旅客機であったブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)のコンコルド(時速1535マイル[時速2470キロ])は2003年に引退しました。

  ⇒ユナイテッドは予想される航空旅行の増加に対応するためボーイング 737 MAX機200機およびエアバスA321機70機も発注しています。

 ○米食品医薬品局(FDA)は医薬品大手バイオジェンのアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム(一般名・アデュカヌマブ)」を承認しました。アルツハイマー病の新薬が承認されるのは約20年ぶりのことです。

 ○欧州連合(EU)はアルファベットCのGoogleの広告配信技術が独禁法に違反している疑いがあるとして調査を開始しました。

 ○ソフトウエア・メーカーのマイクロソフトは、最新のオペレーティングシステムとなる「Windows 11」を発表しました(「Windows 10」から6年ぶりの刷新)。スマートフォンと比べたPCの利便性向上のため、競合他社のプラットフォームやアプリ配信ストアが利用できるようになります。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、製薬大手メルクからスピンオフしたヘルスケア企業のオルガノンをS&P 500指数に採用し、石油精製企業のホーリーフロンティアを同指数から除外してS&P中型株400指数に追加しました。

●注目点

 ○5月にコロニアル・パイプラインを操業停止に追い込んだような大規模なサイバー攻撃が再び発生しました。オーストラリアで事業を展開する世界最大級の食肉加工メーカーJBS S.A.(JBSAY)が、ロシアと関連のあるハッカー集団からと見られるサイバー攻撃を受け、工場は一時操業停止となりました。米国の工場は完全に操業を再開しましたが、オペレーションや価格に影響が出て、インフレと供給への懸念が増加しました。ニューヨーク市は、地下鉄のシステムがハッカーの攻撃を受けたと発表しましたが、被害は出ていません(犯人が見つかったら、ラッシュアワーの地下鉄IRT線に乗車させ、憲法が禁止する「冷酷かつ非道な処罰」を受けさせるべきでしょう)。

 ○中国は高齢者に対する若年層の人口比率を調整するため、「二人っ子政策」を緩和し、夫婦1組につき子供3人まで容認する方針を示しました。

 ○米国は、コロニアル・パイプライン(Colonial Pipeline)がランサムウエア攻撃の身代金としてハッカー集団に仮想通貨ビットコインで支払った230万ドルを回収したと発表しました。そのためビットコインの匿名性に疑問が生じ、同通貨は当初下落しましたが、その後回復しました。

 ○家計の純資産は5兆ドル増加しました(そのうち株式の値上がり分が3兆2000億ドル、不動産価格の上昇分が9700億ドル)。

 ○米最高裁判所は、米国の大学スポーツを統括する(そして法律により特別な権限を有する)全米大学体育協会(NCAA)に対して、学生アスリートに対する支払いを制限できないという異例の判断を全会一致で示しました。この異例の判決自体は大きなものではありませんが、数十億ドルの売り上げを生んでも対価を支払われていない学生アスリートを補償するための道を開くものと受け止められました。

 ○「ひとりの人間にとっては小さな一歩だ」。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏(アマゾンのCEOを退任予定)は、この名言が生まれた人類初の月面着陸から52年目となる2021年7月20日に宇宙旅行会社ブルーオリジン(Blue Origin)の宇宙船「ニュー・シェパード」による初の有人飛行に搭乗する、と発表しました。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは5月末の1.58%から1.47%に低下して月を終えました(2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは5月末の2.26%から2.09%に低下して取引を終えました(同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.4192ドルから1.3838ドルに下落して月を終えました(同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)。ユーロは5月末の1ユーロ=1.2193ドルから1.1856ドルに下落して月を終えました(同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は5月末の1ドル=109.86円から111.14円に下落し(同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は5月末の1ドル=6.3684元から6.4572元に下落しました(同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は5月末の1バレル=66.63ドルから73.50ドルに上昇して月を終えました(同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、5月末の1ガロン=3.112ドルから3.185ドルに上昇して(5月以前に3ドルを超えたのは2018年6月)月末を迎えました(同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=1906.30ドルから1768.10ドルに下落して月の取引を終えました(同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の16.76から15.83に下落して月を終えました。月中の最高は21.82、最低は14.10でした(同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●世界の株式市場

 ○6月の世界の株式市場は、ワクチン接種の普及の偏り、感染拡大、経済活動の再開が明らかになる中、引き続き上値の重い展開となりました。米国のアウトパフォームによって、グローバル市場全体では上昇しましたが、米国を除く市場は下落しました。下落した市場数が上昇した市場数を上回り、先進国市場が新興国市場をアンダーパフォームしました。世界の株式市場全体では、6月は1.08%上昇(5月は1.30%上昇)しました。米国市場は2.41%上昇(同0.34%上昇)、米国を除くグローバル市場は0.60%下落(同2.53%上昇)しました。6月は50市場中20市場が上昇し、5月の36市場から減少しました(4月は40市場が上昇)。

  ⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は1兆330億ドル増加しました(5月は9710億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は1990億ドル減少し(同8230億ドル増)、米国市場は1兆1320億ドル増加しました(同1480億ドル増)。

  ⇒6月は11セクター中6セクターが上昇し、セクター間のばらつきは拡大しました(5月は7セクターが上昇、4月は11セクターが揃って上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、6.02%上昇)と最低のセクター(素材、3.72%下落)の騰落率の差は9.75%となり(過去1年間の平均は7.77%)、5月の6.73%(4月は5.53%)から拡大しました。

 ○S&Pグローバル総合指数は5月に1.30%上昇した後(米国の0.34%の上昇を除くと2.53%の上昇)、6月には1.08%上昇しました(米国の2.41%の上昇を除くと0.0%の下落)。4月は4.15%の上昇でした(米国の5.09%の上昇を除くと2.95%の上昇)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は6.64%上昇(米国の7.99%の上昇を除くと4.93%の上昇)しました。年初来では11.71%の上昇で、米国の14.56%の上昇を除くと8.20%上昇しました。過去1年間では38.75%上昇し、米国の42.26%上昇を除くと34.43%の上昇となっています。より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は37.75%上昇しましたが、米国の48.52%の上昇を除くと25.70%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は41.07%上昇し、米国の58.70%の上昇を除くと22.75%の上昇でした。

  ⇒2020年11月3日の大統領選挙以降では、グローバル市場は27.93%上昇しましたが、米国の29.78%上昇を除くと26.65%の上昇でした。

※「高値更新街道を突き進む米国市場 (4)」へ続く

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