確率的には、「日銀と米CPIで上値期待が復活も、ウクライナ情勢に警戒」との印象

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 今週のドル円は週初に115円を割り込む場面があったものの、下値はしっかりと支えられ、週末にかけて上げを加速し、116円台に上昇している。ドル円にとっては2つの大きな材料があった。1つは日銀、2つ目は米消費者物価指数(CPI)だ。

 日銀については、これまでハト派を堅持していたECBが突如、タカ派にシフトしたこともあって、日銀も動くのではとの思惑が広がっていた。日本の10年債利回りも0.23%付近まで上昇し、日銀がイールカーブ・コントロールの上限としている0.25%に接近した。指値オペでその節目を死守するか注目されたが、来週の14日から指値オペを実施するとのコールがあった。

 日銀はまだ慎重でいられる。食料品を中心に値上げのニュースが数多く流れているが、足元の期待インフレは欧米と比較しても遥かに低い。1月に公表された日銀の22年度の食料品を除くコアCPI予想は1.1%と、目標の2%にはなお距離がある。

 このところ「悪い円安」との表現が頻繁に見受けられる。円安によって、世界的に高騰しているエネルギーや食品などの輸入物価の上昇に拍車がかかるというものだ。しかし、日本経済の場合、円安になれば、輸出企業は帳簿上の評価が改善され、賃金や設備投資などを通じて、他の内需にも波及する。ワクチンではないが、「得られる利益と支払うコストを天秤にかけた時に、得られる利益のほうが大きい」との判断があるのかもしれない。

 そして、米CPIだが、複雑な反応を見せた。総合指数で前年比7.5%と予想を上回る強い内容となり、米利上げ期待は一層強まった。為替市場はドル買いの反応を強め、ドル円も116円台に上昇。短期金融市場では、7月までに1%、年内1.75%ー2.00%までの米利上げを織り込む動きが見られている。0.25%ずつの利上げと仮定すれば、年内7回の利上げを想定していることになる。3月のFOMC以降、年内は毎回利上げを実施というシナリオだ。

 しかし、前回の米CPI時にも見られた現象だったが、しばらくして、逆にドルは反転し、売りを強めた。市場はすでに利上げ期待をだいぶ織り込んでいるうえ、一部からは織り込み過ぎではとの見方もある中で、ある種のドルロングの処理の好機となったのかもしれない。

 ただ、流れは再びドル買いとなっている。ドル売りの流れを覆したのがブラード・セントルイス連銀総裁の発言だ。総裁は「0.5%の大幅利上げと、7月1日までの1%までの政策金利引き上げを支持する」と言及。それに対して米株式市場が敏感に反応したのを機に、為替市場も再びドル買いを強めている。同総裁はFOMCメンバーの中でもタカ派の急先鋒となっており、同総裁の発言はある程度割り引いて見る必要がある。しかし、市場も疑心暗鬼になっているのか、その発言に飛びついたという印象だった。

 来週以降、市場の見方とFRBの真意が一致しているのかを探る必要がある。その意味で来週は、FOMC議事録のほか、FOMCメンバーの発言が引き続き注目される。

 また、週末にウクライナ情勢が緊迫化し、市場はリスク回避の雰囲気を強めている。土曜日にバイデン大統領とプーチン大統領が電話会談を行う予定。最悪の事態に発展しないか注目される。

 さて、下記のドル円の確率を見ると、上値期待が強まっている。117円と113円に着目すると、2月末までに117円に1度でも到達する確率は前週の29.2%から39.4%に急上昇した一方、113円も17.4%から19.4%に上昇した。

 確率的には、「日銀と米CPIで上値期待が復活も、ウクライナ情勢に警戒」といった印象だ。

◆来週以降2月28日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
119円: 5.6%( 2.6%)
118円:16.7%(10.0%)
117円:39.4%(29.2%)
115.42円(週末終値)
113円:19.4%(17.4%)
112円: 6.5%( 4.8%)

◆来週以降3月31日までに各ポイントを1度でも付ける確率
()は先週末
120円:14.4%( 9.0%)
119円:24.9%(17.8%)
118円:40.3%(32.0%)
117円:60.5%(52.4%)
115.42円(週末終値)
113円:44.8%(42.7%)
112円:27.9%(24.7%)

※ドル円のオプション取引から算出

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

このニュースの著者

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