プラチナ週間展望=もみ合い、中東情勢の緊迫化と米利上げ停止の見方

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [10月23日からの1週間の展望]
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   週間高低(カッコ内は日)   2024 年  8 月限  10 月 16 日〜 10 月 20 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金           9,042     9,540 (20)    9,042 (16)      9,526          +498
  銀           107.9     112.9 (20)    107.3 (16)      111.5          +5.0
 プラチナ       4,174     4,342 (19)    4,144 (16)      4,261           +87
 パラジウム     5,600     5,600 (19)    5,400 (20)      5,400         -200
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  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
        20  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       (12) 1,994.4     +52.9   | ドル・円    149.87      0.17 円安
  銀       (12) 2,350.4     +60.9   | 日経平均  31,259.36      -1056.63
 プラチナ   ( 1)   905.1     +20.9   | NY原油 (11)  89.03         +1.06
 パラジウム (12) 1,111.20    -34.00  |* ドル・円は15時15分現在、原油は 20日
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【前週のレビュー】
 プラチナは米国債の利回り低下も中東情勢に対する懸念が上値を抑える、とした。
 プラチナは金急伸につれ高となる場面も見られたが、中東情勢の緊迫化によるリスク
回避の動きが出ると上げ一服となった。ただパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長
が政策決定は「慎重に進める」と発言したことを受けて押し目を買われた。現物相場は
2日以来の高値908.10ドルを付けた。プラチナ先限は2日以来の高値4342円
を付けた。一方、パラジウムの現物相場は2018年11月以来の安値1095.00
ドルを付けた。
 10月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は63.0と、前月の68.1から低
下した。3カ月連続で低下した。事前予想の67.2を下回った。ただ1年先のインフ
レ期待は3.8%と前月の3.2%から上昇し、5カ月ぶりの高水準となった。9月の
米小売売上高は前月比0.7%増となった。事前予想の0.3%増を上回った。自動車
購入やレストラン・バーでの消費が増えたことが押し上げ要因となった。米鉱工業生産
指数は製造業の生産指数が同0.4%上昇した。米フィラデルフィア連銀のハーカー総
裁は、ディスインフレが進行中だと指摘した。データが急激に変化しない限り、政策金
利を現在の水準で据え置くことが望ましいとの見解を改めて示した。米ニューヨーク連
銀のウィリアムズ総裁は、インフレ率を米連邦準備理事会(FRB)の目標である2%
に戻すためには、政策金利を当面、高水準で維持する必要があると述べた。パウエル米
FRB議長はニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演で、市場金利の上昇に
より、FRB自体の行動の必要性が低下する可能性があるものの、米経済の力強さと労
働市場の引き締まりを踏まえると、FRBの一段の利上げが正当化される可能性がある
と述べた。米10年債利回りは4.99%と2007年以来となる5%直前まで上昇し
た。ただFRBは一段の利上げの必要性を巡る検証を「慎重に進めている」と表明する
と、利上げ観測が後退した。CMEのフェドウォッチで、12月の米連邦公開市場委員
会(FOMC)の利上げ確率は29.9%(前週32.1%)となった。
 イスラエル軍はイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザのガザ市で
数日以内に「大規模な」作戦を展開するとし、ガザ市住民に南部へ避難するよう指示し
た。15日には北部から南部に約60万人が避難したとの見方が示された。ブリンケン
米国務長官は16日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と人道支援を巡り会談し
た。ドイツのショルツ首相は17日、ネタニヤフ首相とガザの市民に人道支援を届ける
方法について協議した。18日にはエジプトのシシ大統領と会談した。一方、ガザの病
院に多数の市民が非難していたが、17日に爆発し、数百人が死亡した。バイデン米大
統領が18日にイスラエルを訪問し、ヨルダンでアラブ指導者との会談も予定されてい
たが、病院爆発を受けてキャンセルされた。アラブ指導者を取り込めず、地政学的リス
クの高まりが意識された。19日にはスナク英首相がイスラエルを訪問し、連帯を示し
た。その後はサウジアラビアでムハンマド皇太子と会談した。ハマスのイスラエル攻撃
後、サウジアラビアは米国が支援するイスラエルとの関係正常化計画を凍結させた。イ
スラエルのガラント国防相は19日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザの境界沿いに
集結した歩兵部隊に対し、ガザを「内側から」見る日は近いと述べた。イスラエル軍は
これまで空爆を続けていたが、地上侵攻が近いとみられている。一方、イスラエル近海
では、空母「ジェラルド・フォード」に加え、「ドワイト・D・アイゼンハワー」も配
備され、2つの空母打撃群が展開している。イラクの米軍基地が攻撃を受けており、シ
リアの米軍基地も攻撃対象になるとみられている。イスラエルとハマスの衝突に留まる
のか、各国を巻き込んだ紛争に発展するのかどうかを確認したい。
【ニューヨークのプラチナETF残高が減少】
 プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、18日のロンドンで12.89トン
(前週末12.89トン)と変わらず、19日のニューヨークで30.21トン(同
30.64トン)に減少、18日の南アで11.99トン(同11.99トン)と変わ
らずとなった。またパラジウムETFの現物保有高はロンドンで3.28トン(同
3.28トン)、ニューヨークで5.72トン(同5.72トン)、南アで0.27ト
ン(同0.27トン)と変わらずとなった。ニューヨークのプラチナETF残高が減少
した。中東情勢の緊迫化を受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会
(CFTC)の建玉明細報告によると、10月10日時点のニューヨーク・プラチナの
大口投機家の取組は36枚売り越し(前週2616枚買い越し)に転じ、パラジウムの
売り越しは1万1233枚(同9718枚)に拡大した。
【中国経済の回復も碧桂園の行方を確認】
 第3四半期の中国の国内総生産(GDP)は前年比4.9%増加した。第2四半期の
6.3%から伸びが鈍化したが、事前予想の4.4%を上回った。9月の鉱工業生産は
前年比4.5%増加し、8月と同水準の伸びとなった。事前予想の4.3%増を上回っ
た。小売売上高は同5.5%増加し、8月の4.6%増から加速した。事前予想は
4.9%増。景気刺激策の効果がようやく出始めたとの見方が出ている。ただ中国の不
動産開発大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)の2025年9月満期のオフショア債
は利払い1500万ドルの猶予期間が18日に終了した。同社は支払期限が今後到来す
るオフショア債務の大半は履行できないとの見通しを示したことに対し、社債権者は会
社側との緊急協議を求めた。債務不履行(デフォルト)に陥ったとみなされれば国内最
大級の企業債務の再編につながる可能性があり、不動産危機は続いている。
当面の予定(イベント・経済統計)
23日 ●ニュージーランド(勤労感謝の日)、香港(重陽節)
    トルコ消費者信頼感指数 2023年10月(トルコ統計機構)
24日 英雇用統計 2023年9月(国立統計局)
    ユーロ圏製造業購買担当者景況指数 2023年10月速報(Markit)
    ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数 2023年10月速報(Markit)
25日 独景況感指数 2023年10月(ifo)
    米新築住宅販売 2023年9月(商務省)
    政策金利発表(カナダ銀行)
26日 貴金属取引 2023年10月限納会(大阪取引所)
    金融政策理事会(ECB)
    米国内総生産 2023年7-9月期速報値(商務省)
    米卸売在庫 2023年9月速報値(商務省)
    米耐久財受注 2023年9月速報値(商務省)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米中古住宅販売仮契約指数 2023年9月(全米不動産協会)
27日 貴金属取引 2024年10月限発会(大阪取引所)
    中国工業利益 2023年9月(国家統計局)
    米個人所得・支出 2023年9月(商務省)
    米消費者信頼感指数 2023年10月確報値(ミシガン大)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
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