コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【NY原油価格の上昇がインフレ懸念を深めるも高まる利下げ期待】
 NY金4月限は3月8日の取引で一代高値を更新し2203ドルまで値を伸ばした。
その後は上昇後の修正から次第安で運ばれながらも2150ドルが支持線なり、高値圏
での推移している。
 今月19〜20日にかけて開催される米公開市場委員会(FOMC)を前にして買い
進まれた玉の整理が進行していることや、急伸後の修正の動きがその背景と見られる。
 同時に、年内の米利下げ着手という材料を織り込むと同時に昨年暮れにかけ2024
年内の利下げ着手期待を受けて買い進んだファンド筋を含む大口投機家が1月から2月
下旬にかけて行った買い玉の整理が終了するに伴い、改めて進行した買いの動きが一巡
した可能性も窺わせるものとなっている。
 注目されたのが3月FOMCの結果だが、今回のFOMCでは大多数の予想通りに金
利は据え置きが決定された。
 一方、注目の今年末時点の政策金利予想も23年12月に示された4.6%に据え置
かれたことで年内の利下げ予想回数は3回との見通しが維持されたが、一時は軟化傾向
を見せていた米経済指標はここにきてインフレ懸念再燃の可能性を窺わせる内容が強ま
っているだけに、今後は利下げの予想回数が引き下げられる可能性も出てきている。
 例えば、2月の生産者物価指数の前月比は事前予想の+0.3%に対し+0.6%を
記録したほか、2月小売売上高では飲食が前月を上回ってプラスに転じサービス部門の
根強さを示唆した。また、新規失業保険申請件数も事前予想を下回り、解雇の動きが限
られている様子を示している。
 また、ここ最近のエネルギー価格の上昇がインフレ懸念を再燃させる要因になりかね
ない点にも注意が必要となっている。NY原油は、今月14日に終値ベースで80ドル
を上抜いた後も続伸となり、連日、年初来高値を更新した。
 20日の取引では反落に転じているものの、一時は83.21ドルまで値を伸ばして
いるうえ、期近5月限は81ドル台後半を維持するなど、底意の強さを窺わせる足取り
となっている。
 このNY原油の上昇はウクライナによるロシア石油関連施設の攻撃が地政学不安を高
めたうえ、国際エネルギー機関(IEA)による需要見通しの上方修正を受けた石油需
給の悪化見通しの修正が背景となっている。
 エネルギー価格は変動が激しいためFRBのインフレ指標として注目される米個人消
費支出(PCE)や消費者物価指数(CPI)では、エネルギーと食品を除いたコアが
注目されるが、エネルギー価格の上昇や間接的に他の項目にも影響を与え全体的に押し
上げ圧力が高まってくると予想される。
 FOMCでは雇用の底堅さやこれを受けた賃金の上昇が背景となるなか24年末のP
CE見通しは前回の+2.4%から+2.6%に引き上げられているが、今後もエネル
ギー価格の上昇傾向が続くようであればPCE見通しが再度、上方修正される可能性も
ある。
 とはいえ、FRBの金融政策も緩和路線自体の変更はなくパウエルFRB議長自身か
らは名目賃金は緩和しているなど、米雇用情勢に対し楽観的な発言も聞かれている。
 NY原油価格の上昇が続き米雇用情勢も底堅さを見せていることはインフレ懸念を再
燃させる要因になり得るものの、長期的なインフレ期待は十分に安定しているなどの同
議長の発言や、今回のFOMCでは金利が据え置かれながらも年内3回の利下げの可能
性が示されるなど、金融緩和に向けた姿勢が次第に強まっていると見られ、金市場でも
この利下げ観測に支えられ、買い意欲は強く堅調な値動きを維持するとみる。
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