プラチナの現物相場は、900ドル前後で下げ止まると、買い戻されたことに加え、 米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が戻ったことを受けて地合いを引き締めた。 また英ジョンソン・マッセイ(JM)やワールド・プラチナ・インベストメント・カウ ンシル(WPIC)が相次いで供給不足見通しを示したことも支援要因となり、昨年6 月以来の高値1038ドルを付けた。ただ4月の米消費者物価指数(CPI)の発表を 控えて利食い売りが出ると、上げ一服となった。昨年6月以降の1000ドル前後の抵 抗帯を突破できるかどうかが当面の焦点である。 3月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に加速したことや、パウエル米 連邦準備理事会(FRB)が長期間の金利据え置きを示唆したことを受けて米FRBの 利下げ観測が後退した。米CPIは前年比3.5%上昇と前月の3.2%上昇から伸び が加速し、昨年9月以来の大幅な伸びとなった。事前予想は3.4%上昇。CMEのフ ェドウォッチでは、米FRBの利下げ開始は9月以降となり、年1回の利下げが見込ま れた。ただ4月の米雇用統計が予想以下となり、労働市場の減速が示唆されると、利下 げ観測が戻り、年2回の利下げを織り込んだ。非農業部門雇用者数は前月比17万 5000人増と事前予想の24万3000人増を下回った。31万5000人増に上方 改定された前月から予想以上に伸びが鈍化した。失業率は3.8%から3.9%に上昇 した。目先は今夜発表される4月の米CPIが焦点である。事前予想は前年比3.4% 上昇と前月の3.5%上昇から伸びが鈍化するとみられている。ただ目標とする2%を 大幅に上回っており、米CPI発表後の各市場の反応を確認したい。 【プラチナは2年連続の供給不足見通し】 英ジョンソン・マッセイ(JM)のレポートによると、2024年のプラチナ系貴金 属(PGM)は供給不足が続く見通しである。プラチナは18.6トン(前年16.1 トン)、パラジウムは11.1トン(同31.7トン)、ロジウムは2.0トン(同 4.0トン)の供給不足と予想された。プラチナは過去10年間で最大の供給不足とな る見通しである。鉱山生産は2%減少すると予想された。ロシアの供給が2023年の 大量の在庫放出から通常の水準に戻り、南アの供給も減少するとみられた。一方、需要 はディーゼル車の生産減少で自動車触媒向けが減少すると予想されたが、工業用需要は 堅調で投資需要も増加するとみられている。またワールド・プラチナ・インベストメン ト・カウンシル(WPIC)の四半期報告でも供給不足見通しが示された。第1四半期 の世界のプラチナ需要は自動車セクターの需要が堅調に成長したことに加え、宝飾品需 要が上向いたため、前四半期比で増加し、62トンとなった。一方、総供給量は鉱山供 給やリサイクル供給の低迷が続き、統計開始以来2番目に低い水準である51トンに落 ち込んだ。その結果、11トンの供給不足となった。2024年は供給が221トン、 需要は236トンとなり、15トンの供給不足が見込まれている。トレバー・レイモン ドCEOは、2025年にかけて供給に下方リスクがあることを指摘した。鉱山におい ては、プラチナ系貴金属(PGM)のバスケット価格の大幅な下落が鉱山の採算に与え る悪影響を抑えるために、生産計画の見直しや操業の再編が検討されているという。需 要面では水素経済におけるプラチナの役割が本格化しつつあり、需要が有意なレベルま で大幅に増加する兆しがあるとした。需給が引き締まるようなら、米FRBの利下げ開 始とともにプラチナが上昇に転じる可能性が出てくる。 【NY市場で大口投機家はレンジ下限で新規買い、買い戻し】 プラチナETF(上場投信)残高は13日の米国で32.39トン(3月末 31.56トン)、9日の英国で18.11トン(同12.70トン)、10日の南ア で11.43トン(同11.67トン)となった。英国で投資資金流入が目立った。一 方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月7日時点のニュ ーヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万3660枚(前週6797枚)に拡 大した。前週は3月19日以来の低水準となったが、レンジ下限で新規買い、買い戻し が入った。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *14日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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