【NY金は利下げ着手期待に安全資産としての需要が加わり高値圏を維持か】 NY金8月限は今月11日に抵抗線となっていた2400ドルを上抜いた後も上値を 探り、17日に2488.4ドルの高値に到達。小反落で引けたが最高値に近い水準を 維持している。 NY金の堅調な足取りは米利下げ着手期待の高まりにある。2400ドルを上抜いた のは、6月の米消費者物価指数(CPI)の伸びは鈍化し、前月比で予想外の‐0. 1%と2020年5月以来のマイナスを記録したほか前年比でも+3.0%と前月の+ 3.3%から伸びが鈍化したことでディスインフレ期待が高まった。 今回のCPIで注目されたのが、CPI下げ渋りの主因となっていたサービス部門で も伸び率の鈍化が見られた点だ。サービス部門はその構成の多くが賃金によるだけに、 サービス部門の伸びの動向は米雇用情勢との関連性が高いと見られる。 雇用情勢の強さが賃金に上昇圧力をかけていることが米国のインフレ率下げ渋りの一 因となっていたため、このサービス部門の伸びの鈍化は今後のディスインフレ傾向の高 まりを期待させ、金市場の価格押し上げ圧力を高める結果となった。 6月に入ってから雇用情勢の軟化を示す経済指標の発表が続いていることで今後もサ ービス部門の成長鈍化が予想されることは金市場にとって今後も強気材料になると見ら れる。 一方、6月の米小売売上高は前月比−0.3%の事前予想に反し、前月比で横ばいと なり、個人消費の底堅さを示した。原油価格の下落を受けたガソリンの値下がりが重石 となっているが、好調な個人消費が示された。同時に高金利環境長期化の影響もあり、 自動車及び関連部品は同−2.0%を記録している。 雇用情勢の軟化や賃金上昇率の低下を考慮すると、今後の小売売上高が伸び悩む可能 性もあるうえ、高金利環境の継続が個人消費の動向に与えるマイナスの傾向の度合いが 高まる可能性も考慮しておきたい。 なお、小売売上高が伸び悩みに転じるようであれば米経済不安が高まると同時に金市 場には安全な資産を求める資金が流入してくる可能性がある。すでに9月利下げ着手を 織り込む形でNY金は堅調な足取りを見せており、最高値更新により上げ一巡感が強ま る可能性もあるが、利下げ着手期待が下支え要因となることが見込まれると同時に、高 金利環境の長期化による米経済不安の高まりは金への逃避買い需要を刺激する可能性が あることから、NY金は引き続き2400ドル台を維持する高止まりが想定される。 NY貴金属市場は金が強気な足取りを見せているものの、その一方で銀、白金、パラ ジウムは冴えない足取りが続いている。特に白金とパラジウムは金市場の足取りに対す る反応が鈍く、金と同様に安全資産としての役割を期待される白金の中心限月の期近 10月限は1000ドル台では戻り売り圧力が強い。 NY白金10月限は終値では1000ドル台を維持しているものの、一方で中国の景 気不安が高まるなか、同国の自動車需要不安が高まっていることが工業用の需要減少懸 念を強めて上値を抑制する要因になっていると見られる。 中国の第2四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比で+4.7%と前四半期の+ 5.3%から伸びが縮小した。そのうち新エネルギー車は+34.3%を記録している ものの、中国の電気自動車(EV)は過剰生産が警戒され欧州連合(EU)欧州委員会 は中国からのEV輸入に対する関税を上乗せする暫定的な追加関税を適用している。 これは中国のEV生産台数の減少に加え、EV生産台数減少によりGDPが落ち込む 可能性が高まっていることを示すが、白金市場においては工業用としての白金需要が低 迷する可能性があることを意味する。中国経済不安が安全資産としての金需要を刺激す る一方、工業用需要の落ち込みが白金価格の重石になり、金市場と白金市場では明暗の 分かれた足取りが続く可能性が出てきている。 MINKABU PRESS
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