23日からの週は、レンジ取引から週後半にかけてドル高円安が優勢となったが、一気に円高が進むという荒っぽい動きを見せた。週前半は144円前後を中心にしたレンジ取引となった。秋分の日で東京が休場となった23日は、ロンドン市場でのユーロ圏や加盟主要国PMIの弱さを受けたユーロ売りがリスク啓明の円買いを誘う形でやや上値が重く推移。144円台後半の重さを嫌気して25日朝に142円90銭台を付ける動きもすぐに反発するなど、やや下値しっかりとなった。米ソフトランディング期待もあって、26日の市場で節目の145円台を何度か付ける動き。27日に入ると自民党総裁選で積極財政を主張する高市氏が優勢との思惑もあって円売りが進み、総裁選第一回投票で同氏がトップに立ったこともあって146円49銭と9月3日以来のドル高円安となった。しかし決選投票では第1回投票で2位であった石破氏が逆転勝利。一気に円買いとなり143円台半ばを付けると、その後の戻りも鈍く142円台を付ける動きを見せた。 (23日) 東京市場は秋分の日の振り替え休日で休場。 ロンドン市場では、ユーロ売りが優勢。9月のフランス、ドイツ、ユーロ圏などのPMI速報値が弱含んだことに反応。特にフランス非製造業PMIが予想外の50割れへと低下したことがユーロ売りを誘発した。ユーロドルは1.11台後半から1.11台割れ、ユーロ円は161円割れから159円台割れ寸前まで下落。対ポンドでもユーロ売りが継続、2年超ぶりのユーロ安・ポンド高水準となっている。英PMI速報値も前回から低下したが、製造業・非製造業いずれも景気判断分岐点50は維持された。市場ではユーロ圏経済が停滞に向かっているとの見方が広がり、ドイツ債の逆イールドが解消された。短期金融市場での10月ECB理事会での利下げ確度は77%程度まで高まっている。欧州株は仏株が下落、独株が上昇とまちまちの反応。ドル円はユーロ円などクロス円の下落を受けて上値重く推移しており、アジア時間の144円台前半から143円台前半へと軟化している。ポンド円は192円台割れから一時190円台前半まで下落。総じてユーロ売り主導とともに円高やドル高の動き。 NY市場で、ドル円は方向感なく上下動した。一時144.40円付近と本日の高値圏まで買い戻されていたが、そこからの上値にはなお慎重で145円台を試す動きは見られず、143円台前半に値を落とす場面も見られていた。本日の21日線が143.45付近に来ているが、きょうのところはその水準を維持した。先週初めに見られていたような140円割れを試す動きも見られず、自律反発の気配も出て来ている。ユーロドルは一時1.11ドルを割り込んでいたものの、NY時間に入って1.11台に戻す展開。全体的に上値は重い。本日は9月調査のユーロ圏PMI速報値が発表になっていたが、予想を下回った。数字は活動の縮小を示唆していたものの、投入価格と産出価格がインフレの鈍化傾向を示しており、ECBは歓迎しそうだ。エコノミストは10月の利下げの可能性も十分あり得ると述べている。ポンドドルは上げ幅を拡大し、1.33台半ばまで上昇。2022年3月以来の高値水準を更新している。米利下げに伴う長期的なドル低迷で、特にポンドが大きな恩恵を受けるとし、今後12カ月間でポンドドルは1.40に上昇するとの声が米大手証券から出ていた。市場は米国のリセッションリスクを除外しており、ポンドのようなプロシクリカルな通貨やリスク資産に有利となっているとした。 (24日) 東京市場は、円売りが優勢。ドル円は、午前に143円台後半を中心に揉み合ったあと、午後に入って植田日銀総裁が大阪経済4団体共催懇談会で「政策判断に時間的余裕がある」と発言したことから円安に振れ、一時144.20付近まで上昇した。ユーロ円は、午後に160.30付近まで上昇、ポンド円は3日以来3週間ぶりの高値となる192.61付近まで水準を切り上げた。ユーロドルは昼にかけて1.1103付近まで弱含んだあと下げ渋り、午後は1.1120付近まで強含んだ。午後に発表された豪中銀政策金利は市場予想通り4.35%で据え置きとなり、声明では、インフレ率が目標に戻るまで政策は十分に制限的になる必要があるとの認識が示された。豪ドル円は一時98.95付近まで、豪ドル/ドルは0.6869付近まで上昇する場面があったが、その後は伸び悩んでいる。 ロンドン市場では、円売りが先行したがその動きは続かず。ドル円は序盤に144円台後半に高値を伸ばした。中国人民銀行が景気対策に本腰を入れたことや植田日銀総裁が「政策判断に当たり時間的な余裕がある」と繰り返したことなどが円売り材料となっていた。ロンドン時間に入ってからも欧州株高などリスク選好の動きは継続している。この局面ではユーロドルやポンドドルとともに、ユーロ円やポンド円が買われた。ユーロドルは1.11台前半、ポンドドルは1.33台で堅調に推移。ユーロ円は一時161円台乗せ、ポンド円は193円台乗せまで買われた。ロンドン昼にかけては円売りは一服。ドル円は144円台割れ、ユーロ円は160円付近、ポンド円は192円台前半へと反落している。この日発表された9月ドイツIfo景況感指数は84.4と前回の86.4から低下、市場予想も下回った。昨日の9月ユーロ圏PMI速報値に続いての悪化だった。市場では10月ECB理事会での利下げ観測が5割程度へと上昇している。エストニア中銀総裁は、10月利下げを完全には排除できないが、12月の利下げ決定の方が容易だと述べた。 NY市場で、ドル円は軟調に推移。NY時間に入って伸び悩む動きが見られ、143円台前半に下落した。ロンドン時間には買い戻しが優勢となり、一時144円台半ばまで上昇する場面が見られた。リバウンド相場の機運も出ているものの、トレンド自体は下向きの中で145円台には躊躇している状況に変化はないようだ。先週のFOMCの大幅利下げを受けて、市場では米経済のソフトランディング期待が高まっている。米株式市場ではダウ平均が終値ベースでの最高値を更新する中、ドル円も買い戻しが強まったが、今後は日米の金利差が縮小するとの観測から上値は依然として重い。ユーロドルは買い戻しが優勢となり、1.1175ドル付近まで上昇。本日1.1095ドル付近に21日線が来ているが、その水準は維持されている。 ポンドドルはきょうも上値追いが続き1.34台まで上げ幅を拡大。2022年3月以来の高値水準を更新している。FRBやECBが利下げを先行する中、ポンドは足元の英経済の成長が堅調なことや、英中銀がなお高水準のサービスインフレを警戒している中、英中銀の利下げはFRBやECBよりも遅くなるとの見方が下支え。英新政権への期待もみられた。 (25日) 東京市場で、ドル円は上下動。朝方には前日NY市場の流れを受けて143円台割れから142.91近辺まで一段と下押しされた。その後は買い戻された。目立った材料はなく、行き過ぎた動きへの警戒感からのドル買い・円売りとなった。仲値に絡んだドル買い円売りも支えとなり上値を試して143.49近辺まで買われた。ユーロ円も朝のドル円の下げ局面で159.90前後まで下落も、その後は160.60台まで上昇している。ユーロドルは1.1199まで上昇。1.12台へのユーロ買いには慎重で上値を抑えられたが、下がると買いが出る流れだった。中国人民銀行は1年物金利を2.30%から2.00%に引き下げた。中国・香港株は続伸した。 ロンドン市場では、円安の動き。ドル円は143円台前半から買われ、高値を144.40台へと伸ばしてきている。ユーロ円は160円台前半から161円台半ばへ、ポンド円は192円台前半から193円台乗せへと上昇。欧州株は売りが先行と調整の動き。しかし、米株先物とともに下げ渋りの動きがみられている。昨日からの中国発のリスク選好の動きは根強い。OECD中間経済見通しでは、今年の世界成長率予想が3.2%と前回5月の3.1%から引き上げられた。また、個別では今年の英国の成長率予想が大幅に上方修正された。インフレ率は高いものの、実質所得の改善により消費が好調な点が指摘された。日本については今年はG7のなかで唯一マイナス成長に下方修正された。第1四半期のマイナス成長が響いたようだ。ドル相場はドル安の動きが一服している。ユーロドルは1.11台後半から1.12手前水準での振幅。ポンドドルは1.34台割れから1.33台後半へと軟化している。 NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円も買いが膨らみ144円台後半に上昇した。先週のFOMC以降、概ね143.00-144.50の間で上下動していたが、きょうはその上限を突破している。FRBは先週大幅利下げを実施したが、その積極的な行動が米経済にソフトランディングをもたらすと市場は期待している。ただ、その期待を裏付ける次のデータを確認したい雰囲気もある中、市場心理は依然として不安定な状態にあるとの指摘も。ユーロドルは一時1.12台まで上昇し、8月高値に顔合わせしたもののNY時間に入ってからはドル買いに押されて1.11台前半に伸び悩んだ。ユーロはポンドに比べて上値が重い印象。ECBの根強い利下げ期待がその背景にあるようだ。ポンドドルも上げが一服し、1.33台前半まで値を落とした。先週の英金融政策委員会(MPC)を受けて上昇トレンドの勢いが増し、一時1.34台を回復するなど、22年3月以来の高値水準に上昇していた。英中銀は足元のサービスインフレをなお警戒しており、FRBやECBのような思い切った利下げはできないとの見方がポンドを支えている。10月にはリーブス英財務相が初の秋季予算案を発表する予定で、市場に注目されている。 (26日) 東京市場は、ドル売り・円売りの動き。ドル円は144.50割れまで下押しされる場面があったが、すぐに切り返して上昇。午後には145.04近辺と約3週間ぶりの145円台乗せとなった。ユーロ円も161円台割れ水準から161円台半ばまで買われた。中国共産党が中央政治局会議で「強力な金利引き下げを実施」などと表明、前日までのリスク選好ムードに拍車がかかった格好。ただ、人民元高・ドル安の影響もあり、ドル円は144円台後半、ユーロ円は161円台前半と上昇が一服して揉み合いに。豪ドル円は99.30台へと買われ、足元でも高止まりしている。ユーロドルはドル安傾向が続いており、1.1130付近から1.1150付近へ、ポンドドルも1.3110台から1.3150付近へと買われている。 ロンドン市場では、株高のなかで為替は売買が交錯している。今日も中国の景気対策を受けて香港ハンセン指数や上海総合指数はともに4%超高だった。欧州株や米株先物・時間外取引もリスク選好ムードを受けて上昇している。ドル円はロンドン朝方に145.20近辺まで買われた。しかし、停戦交渉が期待されたイスラエルとヒズボラは双方とも攻撃を継続、中東地政学リスクが意識されてドル円は144.30付近まで反落している。クロス円も上下動、方向感が定まらない。ユーロ円は161円台、ポンド円は193円台を中心とした取引。ドイツ5大経済研究所が今年のドイツ経済についてマイナス成長に下方修正した。また、この日のスイス中銀政策金利発表は予想通り25bp利下げを発表したが、今後の利下げ継続姿勢も示していた。市場ではECBについても年内にあと50bpの利下げを織り込んできており、よりハト派の見方となっている。ユーロドルは1.11台前半から半ばでの振幅、ポンドドルは1.33台前半から後半へと上昇している。 NY市場でも145円台を付ける動きを見せた。米ソフトランディング期待がドル買いを誘い、東京、ロンドンに続いて145円台に乗せる動き。ただ大台を維持できず144円台後半となった。ユーロドルは1.11台後半での推移。対円でのユーロ買いなどを支えに1.11台前半から上昇した。もっとも1.12台トライには少し慎重姿勢。ユーロ圏景気の鈍化懸念が重石となっている。ユーロ円はしっかり。一時162円台を付ける動きを見せた。 (27日) 東京市場は円安が優勢な展開となった。ドル円は一時146円49銭を付けた。自民党総裁選の投開票が行われる中、積極財政を主張し、日銀の利上げにも消極的な高市候補が優勢との報道が円売りを誘った。前日何度か付けた145円台にしっかり乗せ、午前中に145円台半ばまで上昇。その後145円00銭前後まで調整が入ったが、第一回投票で高市氏がトップに立って決選投票に向かうことが判明すると一気に円売りが加速し、146円49銭を付けた。その後の決選投票に向けて少し調整も146円台前半推移。 ロンドン市場は自民党総裁選の結果を受けて一気に円高となった。決選投票では第1回目選挙で2位となった石破候補が逆転で勝利。高市氏期待の円売りに対する調整が一気に広がった。ドル円は146円台から143円50銭台まで急落。144円台前半まで戻すも、戻りは限定的で142円80銭前後までの下げとなった。その後143円台を回復も、143円70銭台までにとどまり、その後142円台を付けるなど、円高が継続。クロス円も軒並みの大幅な円買い。ユーロ円は東京午後の163円49銭から159円00銭台まで下落。ポンド円は196円近くから191円ちょうど前後までの急落となった。連日上昇していた日経平均が時間外先物取引で大きく下げており、リスク警戒の動きが広がった。 NY市場でもドル円は142円台前半まで急落。自民党総裁選で石破氏が新総裁に決まったことで円高が一気に強まったが、FRBが主に参照しているインフレ指標である8月のPCEデフレータが引き続きインフレの落ち着きを示す内容であったこともドル円を圧迫した。FRBの利下げ期待を裏付ける内容ではあったが、年内さらにもう1回の大幅利下げなど、市場が織り込んでいる期待ほどの内容であるかは議論が分かれるところ。短期金融市場では11月FOMCでの利下げ幅は0.25%と0.50%ポイントで五分五分といった状況。
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