【米経済見通し不透明感強まるなかNY金は上値の重い足取りを継続か】 NY金2月限は今月11日にかけて2759.7ドルと11月6日以来の水準まで上 昇したが、その後は続落となり、17日に2646.1ドルまで値を落とした。18日 は2601.7ドルまで値を落とした。17日から18日にかけて開催された米公開市 場委員会(FOMC)での利下げ観測を織り込まれ、インフレ観測が警戒され、今後の 利下げペースの鈍化を嫌気した。 事前予測通りながらも、11月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+2. 7%を記録し、9・10月に比べて伸びが加速化したうえ、生産者物価指数(PPI) も上昇するなど、11月の時点でインフレの再加速が警戒されている。 総合CPIの前年同月比が3%を割り込んだ後も、サービス部門の下げ渋りによって CPIは2%台後半での高下が続いており、連邦準備理事会(FRB)が目標とする中 立的な水準まで低下するのが難しい状態が続いている。 一時、軟化傾向にあった米雇用情勢は、ここにきて雇用者数の大幅な増加に加え事前 予想を上回るペースでの賃金の上昇が見られるなど、引き締まりに向かう動きを見せて いる。賃金は個人の消費意欲を刺激する要因になるうえ、家賃や物価の上昇を吸収する 要因になり得る。それだけに、雇用情勢が引き締まりの可能性を示していることは今後 もCPIが下げ渋る可能性が高いことを意味していると言えるだろう。 このような状況に加え、中国を始めとする外国からの輸入に対する関税引き上げを公 約に掲げるトランプ政権が年明け1月に発足する。米大統領選および議会選の結果、共 和党が大統領職および上下両院の多数派を占めるトリプルレッドが実現されており、ト ランプ氏の大統領選における公約が実現に向かいやすい環境が整っていることで、今後 のインフレ率の加速化が懸念されている。 今月11日にかけての上昇時は、トランプ政権による関税引き上げを受けたインフレ に対する警戒感への反応は薄かったものの、生産者、物価指数消費者物価指数が揃っ て上昇したことで、インフレ率の上昇に対する意識が高まったと見られる。 今回のFOMCでは3回合連続しての追加利下げが決定されたが、声明文で米経済活 動は堅調に拡大し失業率は低水準にとどまっていることに触れたうえ、インフレ率が高 止まりしていることが指摘された。来年の見通しは利下げ回数が2回と9月に示された 見通しの半分まで縮小するなど、利下げのペースが緩和される見通しであることが明ら かとなっている。 パウエルFRB議長の会見で、今後の追加利下げについては物価の鈍化を確認する必 要があるとの見方が示されたが、実際はトランプ政権の発足を控えて不透明感が強い。 11月時点で賃金の上昇傾向が継続していることが確認されており、インフレの上昇 を吸収し個人の消費を活発化させ、さらなるインフレを招くというサイクルを描く可能 性が見られている。今回のFOMCで現時点でのインフレ高止まりによる影響としたう えで25年第4四半期の米個人消費支出(PCE)物価指数はこれまでの+2.1%か ら+2.5%に引き上げられている。 トランプ政権発足後、輸入関税の引き上げと輸入減をまかなうための国内生産増、移 民排斥という政策が実行に移されれば、インフレ率の加速化は免れ得ないと見られる。 NY金2月限は18日は2601.7ドルまで下落。前日比8.7ドル安の2653. 3ドルで取引を終えた。19日のアジア時間の時間外取引は大幅続落で推移。年末で玉 整理基調が強まる時期であることもあり、NY金2月限の頭重い足取りは続きそうだ。 MINKABU PRESS
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