【米インフレ再燃懸念の高まりと逃避買い需要を受けNY金は大きく高下か】 NY金4月限は11日に2968.5ドルをつけ、一代高値をさらに更新した。その 後、修正安となり、12日に2900ドルを割り込んだものの下げ幅を大きく縮小し終 値ベースでは2900ドル台を回復している。 一代の高値を更新したのは、米トランプ政権による関税政策を受けて米国と他国との 貿易摩擦の激化が警戒されるなか、安全資産を求める動きが活発化したことが背景とな った。米トランプ政権は9日に米国に輸入される全ての鉄鋼とアルミに対し25%の関 税を賦課すると発表したことに加え、米国の貿易相手国が米国からの輸入に対して課し ている関税をと同水準まで引き上げる相互関税も近いうちに発表される見通しとなって いる。 この米国の関税引き上げに対抗し、中国は米国から輸入している石炭などの一部の消 費に対し最大で15%の関税を賦課する報復措置を発動しており、米中貿易戦争が再燃 する兆しを見せている。 報復措置を実行する構えを見せているのは中国だけではない。欧州連合(EU)のフ ォンデアライエン委員長も米トランプ政権の関税引き上げに対し相応の対抗措置を取る 可能性を示している。また、米国を重要な鉄鋼輸出相手先とするインド、日本も今後交 渉に臨む構えであり、トランプ関税を巡り様々な動きが見られている。 トランプ関税は米国のインフレ懸念を高めるだけではなく関税引き上げの対象となっ た国々の経済にも大きな影響を与えるうえ、世界的に対抗措置としての報復関税引き上 げの動きが広がる可能性もあるなど、世界経済見通し不透明感を強める要因となってい る。 それだけに、金は安全資産としての需要が高まる環境が引き続き見られており、金価 格が再び最高値更新に向けて動く可能性も残されていると考えられる。 ただ、その一方では関税引き上げにより米インフレ再燃懸念が高まっていることが金 市場にとっての重石になるとの見方も強まっている。 12日に米労働省が発表した1月の消費者物価指数の前年同月比は事前予想の+2. 9%を上回る+3.0%となったうえ、変動が激しい食料とエネルギーを除いたコアC PIも事前予想の+3.1%を上回る+3.3%を記録している。 関税政策が実施される以前の時点ですでにインフレ率は上昇基調にあるだけに、2月 に入ってからの関税の引き上げにより今後のインフレは加速化することが予想される。 また、1月米雇用統計では非農業部門の雇用者数の伸びは事前予想を下回ったもの の、賃金上昇率は事前予想の+0.3%を上回る+0.5%を記録しており、米雇用市 場の底堅さも窺わせる内容となった。 2月のミシガン大学消費者信頼感指数における1年先のインフレ率は1月の3.3% から4.3%へと大きく上昇しており、今後のインフレ率の上昇が警戒されている様子 が示されている。13日に発表される生産者物価指数(PPI)が予想を上回る伸びが 見られるようであればインフレ再燃懸念がより一層強まり、金市場には押し下げ圧力が 高まる可能性が見込まれる。 ただ、トランプ関税は米インフレ加速化懸念を強めると同時に、関税引き上げの対象 となった国々の経済不安や米国と他国の貿易摩擦の激化に対する警戒感を強める要因と なる。そのため、安全資産としての金需要は引き続き意識されることとなり、NY金価 格が一代の高値に近い水準で大きく高下する動きを見せながらも底意の強さは維持する と予想される。 MINKABU PRESS
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