【来週の注目材料】米雇用統計はやや弱め見込み 4月4日に3月の米雇用統計が発表されます。 3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通り政策金利を据え置いた米FRB。短期金利市場における次回5月6日、7日のFOMCでの利下げ確率が17.5%、6月17日、18日までに利下げとの確率が74.1%となっており、6月の利下げを本線と見ている状況です。10月28日、29日のFOMCまでに2回の利下げを実施し、年内最後となる12月9日10日のFOMCまでの利下げ回数については2回と3回で予想が拮抗しています。金利先物市場でも6月までの利下げ確率が68.7%と若干低い以外はほぼ同じ状況です。 ただ、トランプ政権による関税政策の影響による物価高警戒もあり、今後については不透明感がかなり高まっています。物価の安定と雇用の最大化という米FRBの二大命題(デュアルマンデート)関連の動向が注目を集めています。 まずは前回2月の米雇用統計の振り返りです。 非農業部門雇用者数(NFP)は前月比+15.1万人と1月の+12.5万人(速報時の+14.3万人から下方修正)より伸びが強まりましたが、市場予想の+15.9万人には届きませんでした。水準的にはやや物足りないという印象。節目の+20万人、コロナ前5年間(2015-2019年)の平均月+19万人と比べてかなり低く、昨年の平均である月+16.8万人にも届いていません。 失業率は4.1%となり、1月の4.0%から悪化、市場予想は4.0%で横ばいでした。労働参加率が62.4%と1月の62.6%から0.2ポイント悪化した上での失業率悪化ということでやや弱い印象になりました(労働参加率が低下すると、一般的に失業率は改善する)。またU6失業率と呼ばれる正規雇用を望みながらパートタイムに従事している人や求職活動をあきらめた人、育児や家事の兼業で働く意思はあるが難しい状況の人などを加えた広義の失業率が8.0%となり、1月の7.5%から一気に悪化したことも雇用市場の厳しい状況を意識させました。 NFPの内訳を確認すると、財部門が+3.4万人と好結果になりました。直近2カ月連続マイナスとなった製造業が+1.0万人とプラス圏を回復。前回わずか+0.2万となった建設業も+1.9万人と好調でした。 サービス部門は+10.6万人と高い水準ではありませんが1月の+8.8万人から少し伸びました。目立ったのは小売業の弱さで3カ月ぶりのマイナスとなる-0.63万人。1月の+2.95万人、12月の+3.44万人から一気の悪化です。前回-1.4万人となり、全体の弱さに寄与した娯楽・接客業が-1.6万人と弱い状況を継続。単体で1230万人の雇用を抱える最大の項目であるレストラン・バーなどの飲食業が-2.75万人と弱さを見せています。教育・医療部門は慢性的に人手不足感のあるヘルスケア部門が+6.31万人と好調さを維持したこともあり+7.3万人の伸び。金融業が+2.1万人、運輸・倉庫が+1.78万人と好調さを維持しています。 景気に敏感で人の流動性も激しい小売業と飲食業がともにかなり厳しい結果になったこと、全体を先行するといわれるテンポラリーヘルプサービス(派遣業)が-1.23万人と1月の-1.03万人に続いて弱かったことなどから、今後に警戒感を抱かせる状況となりました。 関連指標をみていきましょう。 週間ベースの新規失業保険申請件数は、雇用統計の計測週である基準日12日を含んだ週の数字で、2月が22.0万件、3月が22.5万件。若干3月が多いものの誤差の範囲です。 3月25日に発表された3月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は92.9と2021年1月以来の弱い数字となっています。同調査の雇用部門は雇用が潤沢になるとの回答が2月と変わらず、職探しが困難であるとの回答が2月から小幅低下とまずまずでした。 その他の関連指標は基本的にこの後の発表。 1日の3月米ISM製造業景気指数は49.8と前回の50.3及び好悪判断の境となる50.0を下回る見込みとなっています。内訳のうち、前回一気に6.5ポイントの悪化で48.6まで落ち込んだ新規受注と2.7ポイントの悪化で47.6となった雇用の数字にも要注意です。同時刻に発表される2月の米雇用動態調査(JOLTS)は求人件数の予想が769万件と前回の774万件から小幅悪化見込みです。昨年の平均809.1万件から大きくはずれておらず、水準的に強いとは言えないものの、深刻な状況でもありませんが、予想からの乖離が目立つ指標である点には要注意です。 前回前月比+7.7万人となった2日の3月ADP雇用者数は+11.9万人と小幅改善見込み。3日の3月ISM非製造業景気指数は53.1と2月の53.5から小幅低下見込みも、50超えを維持するしっかりした水準が見込まれています。 これらを受けて今回の予想は非農業部門雇用者数が前月比+13.5万人と前回からこはば鈍化見込み、失業率が4.1%での横ばい見込みです。予想を超えて鈍化が目立った場合は、米早期利下げ期待や年内3回の利下げ実施期待につながり、ドル売りとなる可能性があります。 MINKABUPRESS 山岡
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