トランプ大統領の政策大転換に脅える株式市場 (3) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

配信元:株探
著者:Kabutan
●雇用関係

 ○2月のADP全米雇用統計では、民間部門雇用者数が市場予想の16万2000人増に対し、7万7000人増となりました。サービス業の雇用が、新規雇用のうちの4万1000人を占めています。

  ⇒転職しなかった労働者の賃金上昇率の中央値は前年同月比4.7%(1月から横ばい)、転職者の賃金上昇率の中央値は同6.7%でした(1月は6.8%)。

 ○2月の雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想の16万人増を下回る15万1000人増となりました。1月の非農業部門雇用者数は当初発表の14万3000人増から12万5000人増に下方修正されました。

  ⇒2月の失業率は市場予想が前月から横ばいの4.0%だったのに対し、4.1%に上昇しました(12月は4.1%、11月は4.2%、10月と9月は4.1%、8月は4.2%、7月は4.3%、6月は4.1%、5月は4.0%、4月は3.9%、3月は3.8%、2月は3.9%、1月と2023年12月、11月は3.7%でした。2020年2月は3.5%でしたが、同年5月には13.3%となりました)。

  ⇒労働参加率は1月の62.6%から2月は62.4%に低下しました(12月と11月は62.5%、10月は62.6%、9月、8月、7月は62.7%)。

  ⇒2月の週平均労働時間は事前予想が34.2時間への増加だったのに対し、前月から横ばいの34.1時間となりました。(12月は34.2時間、11月は34.3時間、10月と9月は34.2時間、8月は34.4時間、7月は34.2時間、6月、5月、4月は34.3時間)。

  ⇒2月の平均時給は、事前予想通り前月比0.3%増(前月の35.87ドルから35.93ドルに増加)となりました。1月は当初発表の同0.5%増から同0.4%増に下方修正されました(12月と11月は同0.3%増、10月は同0.4%増、9月は同0.3%増、8月は同0.4%増)。2月は前年同月比では4.0%増となりました。1月は当初発表の同4.1%増から同3.9%増に下方修正されました(12月は同3.9%増、11月と10月は同4.0%増、9月と8月は同3.9%増)。

 ○1月のJOLTS(求人労働異動調査)によると、求人件数は市場予想の750万件を上回る774万件となりました。12月は当初発表の760万件から750万8000件に下方修正されました。

 ○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の186万2000件から185万6000件に減少しました。

  ⇒週間新規失業保険申請件数(当初報告通り):

   →2025年3月6日発表の週間新規失業保険申請件数:22万1000件

   →2025年3月13日発表の週間新規失業保険申請件数:22万件

   →2025年3月20日発表の週間新規失業保険申請件数:22万3000件

   →2025年3月27日発表の週間新規失業保険申請件数:22万4000件

●企業業績

 ○2024年第4四半期の決算シーズンが終わりました。営業利益は予想よりも好調で、2025年後半と2026年も四半期での過去最高を更新する見込みです。

  ⇒499銘柄が2024年第4四半期の決算発表を終え、そのうちの373銘柄(過去最高水準の74.7%)で営業利益が予想を上回り、498銘柄中306銘柄(61.4%)で売上高が予想を上回りました。

  ⇒2024年第4四半期の営業利益は過去最高であった2024年第3四半期の記録を更新し、前期比3.5%増、前年同期(不況だった2023年第4四半期)比13.6%増となりました。

  ⇒売上高は前期比で1.4%増となり、過去最高であった2024年第3四半期の記録を更新しました。前年同期比では3.8%増でした。

  ⇒2024年第4四半期の営業利益率は、2024年第3四半期の11.80%と2023年第4四半期の11.00%を上回る12.04%となりました(1993年以降の平均は8.49%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒2024年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は12.0%となっています。この割合は、2024年第3四半期は13.6%、2023年第4四半期は12.6%でした。

 ○2024年通年の利益は前年比9.3%増となり、これに基づく2024年の株価収益率(PER)は24.0倍となっています。

 ○決算期がずれている企業17社が2025年第1四半期の発表を終え、そのうちの12銘柄で営業利益が予想を上回り、16銘柄中11銘柄で売上高が予想を上回りました。第1四半期については、営業利益は過去最高となった2024年第4四半期比で3.0%減、前年同期比で8.7%増になると予想されています。

 ○2025年通年の利益は前年比14.7%増が見込まれており、予想PERは21.1倍となっています。

 ○2026年通年の利益は前年比14.6%増が見込まれており、予想PERは18.4倍となっています。

●配当金

 ○2025年3月の配当支払額は前年同月比24.8%増となりました。2月は同8.2%減、1月は同12.5%増でした。年初来では前年同期比7.3%増となっています。2024年通年の配当支払額は前年比6.44%増でした(2023年は同5.05%増、2022年は同10.81%増)。

  ⇒3月の配当支払い金は前年同月の1株当たり5.79ドルから7.22ドルに増加しました。

  ⇒2025年第1四半期(年初来)の配当支払い金は前年同期の1株当たり18.06ドルから19.37ドルに増加しました。

  ⇒2025年3月までの12ヵ月間の配当支払金は1株当たり76.15ドルと、2024年3月までの12ヵ月間の70.82ドルを上回りました。

   →2024年通年の配当支払い金も、前年の1株当たり70.30ドルから74.83ドルに増加し、過去最高を更新しました。

  ⇒2025年3月は、増配が16件、配当開始が0件、減配が0件で、配当停止は0件でした。2024年3月は、増配が15件、配当開始が0件で、減配が1件、配当停止は0件でした。年初来では、増配が128件、配当開始が2件、減配が3件、配当停止が1件となっています。

   →2024年は、増配が342件、配当開始が8件、減配が15件、配当停止が2件でした。

   →2023年は、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件でした。

   →2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件、配当停止が0件でした。

 ○3月の増配率の中央値は、2月の6.67%、1月の5.73%から4.71%に低下し、年初来では6.52%となっています。2024年通年では6.25%でした。3月の平均増配率は2月の8.75%から7.98%に低下し(1月は7.97%)、年初来でも8.66%となっています。2024年通年の平均値は8.31%(いずれも2倍以上になった銘柄は除く)でした。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年通年の配当支払い額は前年比6.44%増加しました。これにより、S&P500指数の株主への実際の年間の現金配当は15年連続で増加し、13年連続で過去最高を更新しました。

 ○2025年に関して:

  ⇒通常、大半の企業が事業年度を終えて株主総会に備える第1四半期は、配当の伸びが年間で最も大きくなります。株主総会の前ほど配当を引き上げるのに恰好のタイミングはありません。2025年第1四半期も、配当の伸びは持続し、従来期待されたていた水準は大幅に下回ったものの、経済の不確実性を踏まえれば予想並みとなりました。政府間・国際レベルで不確実性の増大に歯止めはかかっていない模様で、これが配当の伸びを抑制しました。企業の将来に対するコミットメントの度合いは消極的になっているようです。

  ⇒世界の政府の政策を巡る現在の不確実性の度合いと、雇用とインフレを巡る個人の懸念を踏まえると、企業は引き続き進展する様々な変化を評価し、これが生産、設備投資、雇用、あるいは配当であれ、将来に対するコミットメントの縮小につながる可能性があります。

  ⇒政府の行動と交渉におけるスピードを踏まえると、企業が様子見のアプローチを取ることで、2025年第2四半期の配当の伸びは抑制される可能性があります。ただし、年央までに政府間・国際レベルでの解決策が見出されるとの基本シナリオを想定すると、2025年下半期の配当の伸びは過去平均を上回るかもしれません。2025年通期のS&P500指数の配当支払額は6~7%の伸びが予想されます。これは2025年に入る前の時点の8%の予想値から低下していますが、年間の配当支払額は過去最高を更新する見通しです。対して、2024年は前年比6.4%増、2023年は同5.1%増、2022年は同10.8増%でした。

※「トランプ大統領の政策大転換に脅える株式市場 (4)」へ続く

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