米国離れの雰囲気一服も、ドル安期待は根強い=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
米国離れの雰囲気一服も、ドル安期待は根強い=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、米国離れの雰囲気は一服しているものの、市場のドル安期待は根強く、ドル円も戻り売りに押された。ただ、下値ではショートカバーも入るようで140円割れを再度試そうという雰囲気まではない。

 前日はトランプ政権の対中強硬姿勢の緩和観測などで、市場のムードが上がり、ドルの買い戻しが強まった。ただ、米国側は一方的に関税を引き下げることは検討しておらず、中国との協議と連動して行うと見られている。協議自体が容易にハードルをクリアするとは思えず、市場はなおドルに対して慎重なようだ。

 トランプ関税に伴う一連の騒動で米国離れ、ドル離れが指摘される中、円資産にも資金が流入しているようで、財務省が本日発表した対外・対内証券売買契約等の状況によると、月初からの海外勢の国内債券と株式の買越額は計9兆6400億円と、月間の買越額としては過去最高水準になったと見られている。

 投機筋のみならず実需の円買いも期待される中、ドル円はなお下値模索を継続している。日米のマネタリーべースの比較から為替レートを導き出す、いわゆるソロスチャートはここ数年、1ドル=115-120円の水準で推移している。海外勢の中には、現在の円は十分割安と見ている向きもいるのかもしれない。ベッセント財務長官は前日、日本との2国間協議で特定の「通貨目標」は念頭にないと発言していたが、一部のアナリストからは、日米財務相協議では、120円がターゲットとなる可能性も指摘されていた。

 FRBの利下げおよび日銀の利上げ期待が盛り上がらず、ドル離れのキーワードだけでは、その水準の早期達成は難しいのかもしれない。しかし、ここに来て一部ではFRBの利下げ再開に対する期待も復活し出している。

 本日のユーロドルはここ数日の下げが止まり、1.14ドル付近まで買い戻された。今週に入ってユーロドルは伸び悩む動きも見せていたものの、下押しする動きまではなく、上昇トレンドは堅持されている。トランプ関税に端を発した米国離れとドル離れの資金がユーロに流れているようだ。

 ストラテジストは、構造的なドル安トレンドにより、今後数年間でドルは対ユーロで過去10年以上の最安値水準まで下落すると警告している。ドイツの財政強化や米国の世界での役割の変化に加え、関税の悪影響により、投資家が米資産を手放し、ドル相場は長期の下落トレンドに転じると指摘。
 「ドルの大きな下落トレンドが始まる前提条件が整った。ここ数カ月の歴史的な展開を考慮すると、ユーロドルの上昇相場は長い上昇サイクルに入ると予想している」と述べ、2027年末までに1.30ドルまで上昇と見ているようだ。

 ポンドドルは1.33ドル台を回復。市場でのドルへの信任が低下する中で、ポンドドルは上値追いの流れに変化はない。本日はベイリー英中銀総裁のインタビューが伝わっていたが、英政府による報復関税はインフレを押し上げる可能性があると指摘しつつも、他国からの輸入が米国からの輸入障壁回避のために再配分された場合、逆にインフレを低下させる可能性があると述べた。いわゆる貿易転換。

 トランプ関税に対する報復措置はインフレを押し上げる可能性があるが、貿易の再配分が起きればインフレ抑制効果をもたらす」と述べていた。また、4月分のデータでインフレの上昇が予想されるが、これは主に英国内のエネルギーと水料金の変更によるものだとも述べている。また、トランプ関税は成長に負の影響を与えるものの、景気後退はないとも付け加えた。

 英中銀は5月8日に次回の政策委員会(MPC)を開催し、市場は利下げを予想している。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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