ドル円は143円台に戻す展開 弱い米指標もドルに買い戻し=NY為替概況

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
ドル円は143円台に戻す展開 弱い米指標もドルに買い戻し=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、ドルが買い戻される中、ドル円は143円台に戻している。朝方発表の米経済指標を受けてドル安の反応が見られ、ドル円も142円台に伸び悩んでいた。しかし、市場の雰囲気に改善が見られる中、終盤に143円台に戻す展開となった。

 この日は4月のADP雇用統計と第1四半期の米GDP速報値、そしてPCE価格指数が発表された。ADP雇用統計は予想を大きく下回り、昨年7月以来、9カ月ぶりの緩やかなペースに減速し、経済の不確実性による労働需要の鈍化が示された。

 一方、米GDPは予想以上のマイナス成長となった。個人消費の鈍化は予想ほどではなかったものの、輸入が急増し、純輸出が大きく低下。全体を圧迫した。関税賦課を前にした駆け込みの需要があった可能性も推察される。また、PCEコア価格指数も予想を大きく上回っており、根強いインフレの兆候を見せている。いずれにしろ、米経済の減速を示す内容ではあり、為替市場はドル安の反応を見せているようだ。

 1-3月は高インフレが粘り強く残る中、雇用も冷え込みを見せ始め、米消費者のセンチメント低下も確認されていた。それが実際にハードデータになって出てきた格好となっている。トランプ関税については4月以降の発動だったことから直接的な影響はないが、観測が高まっていた時期ではあった。

 また、FRBが参照している3月のPCE価格指数はインフレの鈍化傾向を示したものの、今後の関税のインフレへの影響が警戒される中、FRBは利下げへの慎重姿勢を堅持するものと見られている。反応も限定的となっていた。

 明日は日銀決定会合の結果が公表される。今回はトランプ関税の影響を見極めるため、政策は据え置かれる見通しだが、利上げの大枠の方針は維持されると見られている。成長見通しは下方修正されると見られているものの、今回は特に円相場を大きく動かす材料にはならないとの指摘も出ているようだ。

 ユーロドルは利益確定売りに押され、一時1.13ドル台前半まで下落する場面も見られていた。しかし、上値追いの流れに変化はなく、次の波を待っている状態。

 本日は第1四半期のユーロ圏GDP速報値が発表されていたが、予想を上回る内容となっていた。これを受けてアナリストは、「市場はECBの追加利下げを織り込んでいるが、本日のGDPで、今後の利下げが一筋縄ではいかない可能性も出てきた」と指摘している。

 ECBは0.2%の成長を見込んでいた。そのため、今回は珍しくポジティブ・サプライズへの対応を迫られているという。また、今月発表されたECBの消費者調査では、エネルギー価格の下落にもかかわらず、消費者のインフレ期待が予想外に上昇していたほか、米国が以前発表した関税方針を後退させている様子も見られている。同アナリストは「6月に0.25%の追加利下げを依然見込むものの、それ以降の見通しは不透明感が増している」と述べている。

 ポンドドルはNY時間にかけて戻り売りに押され、一時1.33ドル台前半まで値を落とす場面も見られた。ただ、今月のポンドは約4%上昇しており、2023年11月以来の高パフォーマンスを記録。3カ月連続の上昇となった。

 ただ、ユーロに対しては苦戦を続けている。今月はトランプ関税で米国離れが指摘され、ドルからの資金の流入先としてユーロが選択されており、英国よりも安全資産需要の恩恵を大きく受けるとの見方が出ている。

 一方、英中銀は今後数カ月間で追加利下げが必要になる可能性があり、金融政策委員会(MPC)内にもハト派トーンが見られている。ただストラテジストは、成長見通しの鈍化と物価上昇圧力の拡大が英中銀の利下げの道筋を複雑化する可能性があるとも付け加えている。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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