為替相場まとめ5月12日から5月16日の週

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 12日からの週は、ドル円が大幅に振幅した。週明けには米中共同声明で双方が115%の大幅な関税率引き下げを発表、市場はポジティブ・サプライズの動きを広げた。各国の株式市場がこれを歓迎して急上昇。為替市場ではドル円を中心に、ドル買いと円売りが広がった。ドル円は145円台から148円台後半まで上伸した。しかし、その動きは一時的にとどまった。その後の各営業日では揺り戻しの動きが続いている。米中合意が90日の期限付きである点などが、今後の具体的な協議への不透明感を広げたようだ。また、市場には米国が日本を含めたアジア諸国に対して通貨安是正の圧力をかけるのではとの思惑も広がった。週末にかけてはドル円は144円台まで下押しされる場面があり、週明けの上昇を帳消しにした。主要中銀からは関税をめぐって経済見通しの不確実性が指摘されている。パウエル米FRB議長は市場とのコミュニケーションの枠組みを変更する可能性を指摘した。デギンドスECB副総裁は、テールイベントに対する警戒感を示した。そのなかで、英国はすでに米国と貿易協定で合意済。インフレ動向に関心が移るなかでポンド相場は対ユーロを中心に堅調に推移した。

(12日)
 東京市場は、円安・ドル高方向にマドを開けて取引を開始。午前に米中貿易摩擦の緩和期待からドル高・円安に振れ、ドル円は4月10日以来およそ1ヶ月ぶりの高値水準となる146.28付近まで一時上昇した。ベッセント米財務長官が週末にスイスで行われた米中貿易協議について進展があったと発言したことが支えとなった。上げ一服後に145円台後半まで押し戻される場面があったが、米10年債利回りの上昇や日経平均の上昇からドル買い円売り傾向は継続し、午後に再び146円台に乗せた。日本時間午後4時からはベッセント米財務長官が米中協議を巡り記者会見を行う予定となっており、その内容に関心が集まっている。ユーロ円は午前に164.21付近まで、ポンド円は194.26付近まで上昇したあと、高値圏揉み合いとなった。ユーロドルは早朝に一時1.1186付近まで下げた後、午後にかけては1.1200台前半まで戻して小動きとなった。

 ロンドン市場は、急速に円安とドル高が進行している。日本時間午後4時に発表された米中共同声明で、90日間の期間を設けて双方が115%の関税率引き下げを発表。対中関税を30%、対米関税を10%にそれぞれ引き下げた。事前にトランプ米大統領は80%への引き下げに言及、市場でも50%程度までの引き下げまでしか見込んでいなかった。発表を受けて市場はポジティブ・サプライズ反応を強めた。欧州株や米株先物は時間外取引が急伸、米債利回り上昇。為替市場ではドル円が146円付近から148円台へと上伸。円売りの波及でユーロ円は164円台後半と年初来高値を更新。ポンド円も195円台半ばまで買われた。ドル買いの動きも広がり、ユーロドルは1.12台割れから1.10台後半へ、ポンドドルは1.33付近から1.31台半ばへと下落している。ドル指数は約1カ月ぶりのドル高水準を回復している。

 NY市場では、ドル円が一段高。ドル買いが強まり、ドル円は一時148円台半ばまで急上昇した。週末の米中貿易協議に進展が見られたことで市場は全体的にリスク選好の雰囲気が強まった。IMM投機筋の5月6日付の建玉報告によると、円の買い越しは前週から減少こそしていたものの、過去最高水準に変化はなく、レバレッジ・ファンドにおいては2019年以来の高水準となっていた。円ロングが過度に積み上がっている状況に間違いはなく、米中のニュースで一気に円ロングの巻き戻しを呼び込んでいた模様。ユーロドルは一時1.1070近辺まで下落。21日線を完全に下放れる展開となり、下値警戒感が強まっている。ファンド勢からのロングポジション解消が活発に出ていたと指摘も出ていた。ポンドドルは一時1.31台半ばまで下落。21日線を下放れる展開。ロンバルデッリ英中銀副総裁は「関税よりも英インフレ指標が焦点である」と述べていた。

(13日)
 東京市場では、ポジション調整でドル安・円高の動き。加藤財務相が来週ベッセント財務相と為替協議を行う予定を示したことが調整の動きのきっかけとなった。行き過ぎ感が出ていたこともドル安・円高に寄与。148.48近辺を高値に午前中に147.70台へと軟化。午後には147.60台までもう一段の売りが入った。ユーロ円は164円台で上値重く推移。 昨日のドル高で1.1060台を付けたユーロドルはドル高の調整に1.11台を回復した。その他、中国人民元が対ドルで大きく買われ、ドル人民元は昨年11月以来の7.1860台に下落したことが、アジア市場でのドル高調整につながった。

 ロンドン市場は、ドル売りが一服。東京市場では前日の大幅なドル高の動きに調整が入ったが、ロンドン時間にはそれも一巡している。ドル円は148円台半ばから東京午後には147.65付近まで下押しされた。しかし、ロンドン時間に入ってからは底堅い動きとなっており、148円台前半へと買い戻されている。ただ、前日比では依然としてドル安水準で推移している。ユーロドルも1.10台後半から1.11台前半へと買われた後は、再び1.11付近へと上昇一服。ポンドドルは比較的堅調さを保っており、1.31台後半から1.32台前半へと買われたあと、1.32台を維持している。クロス円は買い戻されている。ユーロ円は164円台前半で下げ渋り。ポンド円は195円付近から195円台後半へと反発しており、ほぼ東京市場での下げを戻している。欧州株は小幅高での揉み合い。米株先物は時間外取引で反動安となっている。米10年債利回りは4.45%付近と小幅低下している。全般にロンドン時間に入ってからの値動きは鈍く、このあとの4月米消費者物価指数待ちとなっている。前日の大相場の後で相場疲れもあるようだ。

 NY市場は、前日のドル高が一服。ドル円は147円台半ばに値を落としている。148円台に戻す場面もあったが、次第にドルに戻り売りが強まった。週末の米中貿易協議の予想外の進展で、市場はリスク選好のムードを高めている。さすがに本日は一服感が出ていた。エコノミストからは米景気後退のシナリオを撤回する動きも出ている。4月の米消費者物価指数(CPI)が発表されていたが、予想を下回る伸びに留まった。3カ月連続で予想より低い伸びとなっている。ただ、FRBの利下げ期待は変わらず、6月、7月はなく、9月の利下げ再開が最有力視されている模様。ユーロドルも買い戻しが出ている。前日は一時1.1065付近まで下落し、21日線を下放れる展開が加速していたが、本日は1.11台後半まで戻した。ポンドドルも買い戻しが強まる中、1.33ちょうど付近まで反発。21日線に顔合わせしている。市場では英中銀の6月連続利下げの確率を10%程度と低く見積もっている。

(14日)
 東京市場で、ドル円は上値重く推移。朝方に147.67近辺まで買われたが、その後は売りに転じている。日経平均は買いが続かず下げに転じたことや、武藤経産相が明日から韓国で開催のAPECに出席しないことが報じられ、グリアUSTR代表との協議が難しくなったとの思惑などが円買いを誘ったもよう。ドル円は147円付近へと下落。午後には146.84近辺まで一段安となった。ユーロ円も165.16近辺を高値に164.31近辺まで下落。ユーロドルは1.1180-1.1200の20ポイントレンジ。中国人民銀行が人民元の対ドル基準値を7.1956と、市場予想よりもドル高で設定した。これを受けて人民元安の動きが広がった。

 ロンドン市場は、ドル売り・円買いの動きが強まった。東京市場では比較的静かな相場展開となっていたが、ロンドン時間に入るとにわかに動意付いた。「米韓高官が為替政策を協議」と伝わり、対韓国ウォンでドルが下落した影響があったもよう。ドル円は147円付近から146円台前半へと下落。一服したのも束の間、再び売られて146円台割れから145.60付近へと安値を広げた。欧州株が軟調に推移したほか、米10年債利回りも小幅に低下するなか、ユーロ円は164円台後半から163円台後半へ、ポンド円は195円台後半から194円台半ばへと下落。ドル売りの動きも優勢で、ユーロドルは1.11台後半から1.12台後半へ、ポンドドルは1.33付近から1.33台後半へと買われた。週明けの米中合意を受けたリスク選好の動きを帳消しにしている。ナーゲル独連銀総裁が「現在の不確実性がニューノーマルになる」と述べていたように、市場関係者の不安感は払しょくできていないようだ。

 NY市場では、ドルが買い戻された。「米国が貿易合意の一部としてドル安を模索していない」と伝わったことがドルの買い戻しを後押ししたようだ。ドル円はロンドン時間に145円台まで急落していたが、NY時間には146円台後半に反発した。ただ、根強いドルへの不信感があるようで、米中貿易協議の進展を受けた週初のドルの反発は一時的なものに過ぎないとの見方が広がっている。ユーロドルは一時1.1265近辺まで買い戻されたものの、NY時間に入って1.11台に下落。 ユーロはドル離れの恩恵を受ける可能性があるが、課題も多いとの指摘がエコノミストから出ていた。ユーロ建て資産の魅力を高める必要があり、それには更なる取り組みが必要だという。ポンドドルは1.32台半ばまで下落。来週に英・EU首脳会談が予定されているが、それを控えてポンドは対ユーロで上昇する可能性があるとアナリストから指摘されている。また、英中銀の利下げに対する慎重姿勢もポンドを支える要因とも指摘された。

(15日) 
 東京市場では、ドル円が軟調。午前に今後の日米財務相会談で円安是正が議論されるとの思惑からドル安円高に振れ、146円台前半まで軟化した。午後もその流れを引き継いで146円を割り込むと、前日終値から1円のドル安円高水準となる145.75付近まで下値を広げた。 クロス円は軟調。ユーロ円は163.34付近まで、ポンド円は193.66付近まで下落し、午後にこの日の安値を更新した。ユーロドルは一段高。昼過ぎに一時1.1200台に乗せたあと、ロンドン勢の本格参加を前にドルが一段と売られ、一時1.1210付近まで上昇した。

 ロンドン市場は、円高の動きがやや落ち着いた。トランプ関税をめぐる動きに市場が疲弊するなかで、足元では今後の日米財務相会談で円安是正圧力をかけられることが警戒されているもよう。昨日の米韓通商交渉でのウォン高圧力が円にも波及する可能性に市場は疑心暗鬼になっているようだ。ドル円はロンドン朝方にかけて145.50割れ水準に安値を広げた。週明けの上昇を解消する水準となった。ただ、その後は欧州株の下げ渋りなどリスク警戒の一服もあって146円付近へ下げ渋っている。ユーロ円は163円台前半から半ばへ、ポンド円は193円台半ばから194付近へと下げ一服。ただ、豪ドル円は引き続き93円台半ばへと水準を下げている。円高の流れには根強いものがあるようだ。デギンドスECB副総裁は、ユーロ圏の金融安定性について「市場の混乱と大きな不確実性のなかでも健全性を維持している」とした。しかし、「急激な調整は、依然として無秩序になる可能性ある」と警戒感を残した。

 NY市場では、ドル円の上値が重い展開。全体的に方向感のない展開が見られた中、ドル円は145円台半ばに下落。ここに来て米中貿易協議の進展を受けた動きも一巡し、リスク選好の雰囲気も一服しており、円の買い戻しも出ていたようだ。本日は4月の米生産者物価指数(PPI)と小売売上高が発表され、米景気減速とインフレ鈍化を示唆していた。一部からは、年内2回のFRBの利下げとの見方を後押しする内容との見方も出ている。現在、短期金融市場では9月と12月の2回の米利下げを織り込んでいる状況。ユーロドルは1.12を挟んで上下動。ただ。上値は依然として重く4月下旬以降の下げトレンドは継続している。エコノミストからは、ユーロ圏の成長鈍化でECBは利下げを継続するとの指摘が出ている。ポンドドルは1.32台後半での上下動が続いていたが、終盤に1.33台に上昇。ただ、全体的には方向感のない値動きを続けていた。本日は1-3月期の英GDP速報値が公表されていた。前期比0.7%のプラス成長と予想を上回る強い数字となり、英中銀の利下げ期待の後退を裏付ける内容だった。 しかし、今回の強い数字は関税の先取りなど一時的な要因によるもので、恐らく今年の成長のピークを示すものだとの指摘も出ていた。

(16日)
 東京市場では、ドル売りが優勢。来週のG7会合での日米財務相会談で為替の話が出るとの思惑で、午前中はドル円は一時144.97近辺まで下落。その後は週末控えたポジション調整の動きもあり、145.40台で戻した。午後には再び上値が重くなり、145円台前半で推移している。ユーロ円は163円付近から162.50割れまで下押しされたあと、163円手前まで買い戻された。足元では162円台後半へと上昇一服。ユーロドルはじり高。1.11台後半から1.12台に乗せて高止まりしている。米債利回りの低下で総じてドル安の動き。クロス円はやや円高水準での推移だった。

 ロンドン市場では、ドルが買い戻されている。東京市場でのドル売りの動きをほぼ解消する動きで、全般的には方向感に乏しい展開となっている。ドル円は145円台後半から売られ、ロンドン序盤には145円台割れまで下落した。しかし、その後は一時145円台後半まで買い戻されている。ドル相場全般に買い戻しの動きとなっており、ユーロドルは1.12台前半から1.12台割れへ、ポンドドルは1.33台前半から1.32台後半へと反落している。クロス円も円買いは一服。ユーロ円は162円台後半から一時163円台乗せ、ポンド円は193円台前半から半ばへと下げ渋っている。欧州株や米株先物・時間外取引は買いが優勢。一方、米債利回りはやや低下している。リスク警戒の動きは落ち着いており、目立った材料もなく週末相場らしい展開になっている。

 NY市場 きょうのNY為替市場はドル高が強まり、ドル円は146円台まで一時回復した。本日は一時144円台に下落する場面も見られていたが、NY時間に入って買い戻される展開。この日発表のミシガン大消費者信頼感指数がドル高を誘発したようで、全体指数は50.8と過去2番目に低い数字となったものの、1年先のインフレ期待が7.3%と記録的な水準に上昇したことから、市場も反応を余儀なくされたようだ。

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