<金> NY金期近6月限は5月15日に3123.3ドルまで値を落としたが、浮上に転じ て、20日に3300ドル台を回復。その後も3300ドル台で推移している。 米中通商協議で米国と中国がお互いに輸入関税を115%引き下げることで同意し、 すぐに実行に移されるなか、米中貿易戦争に対する警戒感は和らいだものの、実際には 米国にとって中国からの輸入関税は30%が維持されており、これが今後の物価高を促 す可能性が残されている。 4月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比は総合が+2.3%となり、前月の +2.4%を下回るなど、インフレが鎮静化しつつある様子が示されているが、この発 表にトランプ関税が与えた影響は限られていると見られる。 今後は米トランプ政権による関税政策が本格化する前の駆け込み輸入や駆け込み需要 によって蓄えられた在庫が消化され、これに従い輸入価格の上昇が小売価格に伝播して いくことが予想され。将来的にインフレが加速化する可能性が高い。 特に4月2日の一律10%の関税賦課と同時に発表された上乗せ分については、90 日間の交渉期間が設けられたが、7月上旬にその期限を控えるなか、すべての国々との 交渉や合意は困難として、上乗せ分が通告される見通しとなっている。 米中通商協議によっていったんは収束したトランプ関税の不確実性が再び高まってお り、これが金市場における買い支援要因になってくると見られる。 トランプ関税に加え、米4月CPI低下の要因がサービス手数料が抑制されたことに あると見られることも、金市場にとって買い支援要因になってくる。サービス手数料の 抑制は賃金の上昇率鈍化につながる可能性が高いが、輸入関税が引き上げられ物価が上 昇するなかで賃金が伸び悩むようであれば、購買力が低下する恐れが高まる。 米国内総生産(GDP)は個人消費によるところが大きいため、購買力の低下は米経 済成長にとっても重石になってくると予想される。 これに加え、トランプ政権が掲げる所得減税の恒久化が実現されれば、米財政赤字の 拡大が促されかねない。このような一連の動きは米国の資産離れの動きを促し、米長期 国債の利回り上昇をもたらしている。 金市場では安全資産を求める動きが引き続き見られると予想され、政治的要因で急落 する可能性を留意しておく必要はあるが、NY金は3300ドル台を維持する底固い値 動きとなると予想する。 <銀> NY銀7月限は3300セントを上値抵抗線にしての高下が続いていたが、金の再浮 上に追随高となってこの水準を上抜いている。ただ、安全資産としての役割が乏しく 3400セントに近づくと値を落とす動きとなっており、頭の重さを窺わせている。 引き続き3300〜3400セントのレンジでの高下になると予想される。 <白金> NY白金7月限は1000ドルを上値抵抗線にしてのもちあいが続いていたが、19 日の取引で終値ベースで1000ドル台を達成した後は大きく値位置を切り上げ22日 には1090.40ドルまで値を伸ばした。 NY金の底固い動きにドル離れの動きが加わったことが価格押し上げ要因になったと 見られる。 1100ドルを前に値位置を落とすなど、上値の重さが感じられる動きながら、NY 金の底固い足取りが見込まれるだけに、1000ドルを下値支持線にした高もみへの シフトがとなりそうだ。 <パラジウム> NYパラジウム6月限は白金の急伸に追随高となり、21日には1055ドルまで浮 上。その後、反落に転じながらも1020ドルを割り込むと買い戻されており、底意の 強さを窺わせている。 独自の材料に乏しいながらも白金や金に連動する動きが続いているため、高もみ継続 が見込まれる。 MINKABU PRESS
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