【くすぶる中東情勢懸念と米景気不安がNY金を下支え】 NY金8月限は13日に急伸し5月7日以来の高値となる3476.3ドルまで上昇 した。ただ、その後は急落となり、24日に5月30日以来の安値となる3308.3 ドルを記録。 この乱高下はイスラエルによるイラン攻撃によって高まった中東情勢の緊張が両国の 停戦合意したと伝えられたことで一気に緊張が緩和したことが背景だ。13日から24 日にかけ168ドルもの下落を記録したNY金8月限に対し、ニューヨークダウは13 日に4万2179.79ドルまで値を落とした後も低迷が続いていたが、停戦合意を受 けて4万3000ドル台まで浮上。その後も4万3000ドル台を維持しており、リス ク回避の動きが後退している様子を示している。 イランとイスラエルは暫定的に停戦に合意し、その後、大規模な攻撃も確認されてお らず、現時点では停戦は守られた状態にある。 米トランプ大統領が完全な停戦で合意した、と発表する一方、イランのアラグチ外相 は現時点での停戦合意を否定したうえで停戦合意は今後行われる、と発言するなど見解 の違いが見られているが、暫定的な停戦合意が発表されて以降、日本時間の26日午前 6時半まで大規模な軍事攻撃は双方から聞かれておらず、ひとまず中東情勢の緊張にも 落ち着きが見られている。 そのため、NY金市場の関心も中東情勢から再び米景気に戻ってきている。米国では 5月米新築一戸建て住宅販売戸数が発表されたが、年率換算で前月比13.7%減の6 2万3000戸と大幅な減少が明らかになっている。 米国では23日に発表された中古住宅に続き、新築住宅の販売戸数も減少しているこ とが明らかとなったが、これはトランプ政権による関税政策を受けた原材料価格の値上 がりに加え、将来的な物価の上昇が見込まれる中での買い控えの動きが強まっているこ とが背景と見られる。 米トランプ政権による関税の大幅引き上げやその実行が本格化したのが4月以降で、 関税引き上げ前の駆け込み輸入により蓄えられた在庫をしばらくの間消化する状況が続 いてるいると見られる。 ただ、6月に入って発表される米経済指標は弱気な内容が目立ち、5月の小売売上高 は今年1月以来の大幅減少となり、買い控えが示されている。米国の今年1月の小売売 上高は約2年ぶりの大幅減となっていたが、これは山火事や寒波という異例の事態が影 響していた。その1月以来の水準での落ち込みが記録されたことは、トランプ関税に対 する消費者側の警戒感の強さを窺わせる。同時に5月の小売売上高の落ち込みは、山火 事や寒波といった一時的な要因を受けたものではないだけに、当面の間は回復は困難と 見られる。 米国内総生産(GDP)は70%程度が個人消費で示されているだけに、小売売上高 の低迷とその長期化が予想されることは、米景気不安を高める要因となり、これが金市 場における買い支援要因の一つとなっている。 NY金8月限は4月22日に3539.3ドルまで上伸した。その後、概ね3300 〜3400ドルのレンジ相場を形成するなか、SPDRの金ETF残高は5月16日に 918.73トンまで縮小したが、6月20日に950トン台まで拡大し、その後は2 5日に至るまで950トン台を維持しており、金に対する需要の根強さを窺わせてい る。 中東情勢に関しては大規模な攻撃が停止していることで懸念は後退しながらも米国、 イラン、イスラエルと停戦合意に関する発言やイランの核開発施設が受けた被害の規模 に対する発言の違いがあり、まだ流動的な部分は残っている。金市場の関心が米景気に 戻ることが、米景気の先行き不安は金市場にとっては強気材料となる。NY金8月限は 引き続き3300ドルを下値支持線とした高下になると予想される。 MINKABU PRESS
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