石油週間見通し=65ドルが下値支持、中東リスクとトランプ関税の綱引き

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【前週のレビュー】ニューヨーク原油8月限は一代安値の54.13ドルから一代高値
の78.40ドルまでの上げ幅の半値押し(66.27ドル辺り)水準に再び下押され
ている。このまま半値押し水準を維持できるか否かがチャート上の焦点。期近8月限は
22日が納会となるため、その前にもう一度買い直されるのか、9月限への限月移行の
商いが中心になるのかでセンチメントは大きく変わるだろうとした。

【NY9月限は半値押しの65ドルが下値支持】
 ニューヨーク原油は8月限が22日に納会するため、9月限が指標限月となる。その
9月限は4月9日の一代安値54.01ドルから6月23日の一代高値75.98ドル
までの上げ幅に対する半値押しがちょうど65.00ドルとなっており、このところは
ほぼその上の38.2%押し(67.59ドル辺り)との間でのもみ合いで推移してい
る。
 したがって、目先はこのもみ合いレンジをどちらに放れるのか、あるいは当面このも
み合いが続くのかがチャート上の焦点となる。直近は65ドルの節目割れで下値の堅さ
を確認した形となり、本稿執筆時の18日の午後には66ドル台前半で推移している。

 材料的には、新たに中東地域で複数の地政学的リスクが浮上している。イラク北部の
クルド人自治区にある油田が3日連続でドローン攻撃を受け、同地域の原油生産量が日
量14万〜15万バレル減少していることが報じられている。同地区の生産量合計は同
28万5000バレルのため、生産量が半減していることになる。なお現時点で攻撃主
体は明らかになっていない。
 さらには、原油の供給障害には至っていないが、ガザ攻撃を激化させているイスラエ
ルがさらにシリアを空爆するなど戦闘地域を拡大させていることにも注目したい。

 一方、上値抑制要因とししては、「トランプ関税」の大半で8月1祖から発動される
ことが懸念されている。これがそのまま実施された場合、今年下半期の世界的景気の減
速から中長期的に原油の圧迫要因となろう。
 それに関連して、日本には25%課せられる予定だが、6月29日にトランプ米大統
領は「(米国の)対日貿易赤字を減少させるには、日本が米国産原油の輸入を増やすこ
とも可能」と述べていることには注目したい。
 昨年の米国産原油の輸入元としての日本のシェアはわずかに2.5%にとどまってお
り、中東産依存度を下げるためにも選択肢のひとつとなり得るが、現在のところそれに
対する日本側の反応はない。

 外部要因を見ると、ニューヨークダウ平均株価は4万4000ドル台で高値圏のもみ
合いが続いている。
 ドルインデックスは7月初旬に95ポイント台後半で底入れした後に戻す展開が続い
ており、直近は98ポイント台で推移している。

【今年と来年の世界石油需要見通しを据え置き=OPEC】
 15日に発表された石油輸出国機構(OPEC)月報では、2025年の世界石油需
要見通しが前年比日量130万バレル増の同1億0510万バレル、2026年が同
130万バレル増の1億0640万バレルと、ともに前月から据え置きとなった。
 6月のOPEC原油生産量は同2724万バレルと、前月比同22万バレル増。

【東京原油のテクニカル分析】
 東京原油の6番限である12月限は21日移動平均線でもあるボリンジャーバンドの
中心線(5万9560円辺り)を下値支持として、その上の1シグマ(6万1700円
辺り)の間のもみ合いが続いている。

【NY原油、ブレント原油のテクニカル分析】
 ニューヨーク原油9月限は直近、ボリンジャーバンドの中心線(66.30ドル辺
り)を割り込んで推移していたが、17日は戻して同線を試した。

 ブレント原油9月限もほぼ同様の展開。70ドルの節目やボリンジャーバンドの中心
線(69.24ドル辺り)を割り込んで推移していたが、17日には同線を上回って引
けた。


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