【NY金は9月のFOMCを睨んでのもちあい継続か】 NY金12月限は8月19日に軟化し3358.1ドルまで値を落とした。20日に は反発に転じているものの、334.3ドルに達したところで伸び悩み、3400ドル が抵抗線となり、頭重い動きとなっている。 8月14日までは3400ドルを上回る水準で推移していたNY金12月限が軟化傾 向を強めたのは強気な7月米住宅着工件数が一因。今回発表された7月米住宅着工件数 は前回の135.8万件から129.2万件に縮小するという事前予想に反し142. 8万件へ増加した。 米国では5月以降の雇用統計がこれまで予想されていたよりも軟化していた可能性が 示されたことに加え、製造業部門が設備投資に消極的な姿を見せるなど、米トランプ政 権の関税引き上げが影響したと見られるなか、これまでよりも弱気な内容を示す経済指 標が目立っていた。 米トランプ政権の関税引き上げが原材料価格を押し上げる効果をもたらすと見られる と同時に、雇用情勢の軟化が警戒されていることで米経済見通しに対する不安感が強ま る一方、7月の米生産者物価指数(PPI)の上昇が今後のインフレ加速化に対する警 戒感を強めたことが金市場における買い支援要因になっていた。 しかし、強気な住宅着工件数が発表されたことで米景気に対する警戒感が後退し、そ の結果として金価格も上値を抑制される動きに転じている。 ただ注意したいのは、今回発表された水準が7月の着工件数が前月比で5.2%の増 加を見せる強気な内容だったとはいえ、これが必ずしも米国の不動産需要が回復してい ることを示しているわけではない点だ。同時に発表された許可件数は前月比で2.8% の減少となったうえ、事前予測の139万件も下回る135万4000件だったから だ。 建築許可件数は着工件数の先行指標として見ることができるが、今回の結果は着工件 数が増加した状態を維持できるかどうか懐疑視される状況であることを示している。 7月の米消費者物価指数(CPI)には関税引き上げの影響が明確に見られなかった が、7月の米PPIが上昇傾向を強めたことは、今後はCPIに上昇観測が増える可能 性があることを意味している。 注目されるのが9月の米公開市場委員会(FOMC)だが、CMEFedウォッチに よると、9月FOMCで利下げを見込む比率は20日時点で81.9%であり、90% を超える水準まで上昇していた8月半ばに比べると利下げ観測はやや後退した状態にあ る。 7月29〜30日にかけて開催されたFOMCの議事録要旨から米トランプ政権によ る関税政策による影響が明らかとなる前に利下げに着手すべきとの考えを示している参 加者が一部、見られていたことが明らかとなった。7月の米PPIの上昇により、今後 の物価の上昇が予想されることは利下げ実施の一つの根拠となるものの、関税引き上げ と物価の上昇に明確な影響が見られない場合、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議 長が利下げに慎重な姿勢を見せる可能性もあり、これがCME Fedウォッチでの利 下げを見込む比率が低下している背景と見られる。 8月1日からの相互関税上乗せ分の発動の影響が徐々に現れてくるようであれば利下 げ観測も次第に高まると見られる。22日に行われるジャクソンホールでの講演会でパ ウエルFRB議長がどのような見解を示すか、という点と同時に、9月上旬に発表され る米8月CPIとPPIが注目され、それまでの間はNY金12月限は3400ドル前 後での動きが続くと見られる。 MINKABU PRESS
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