コモディティレポート(金)

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
【金は急伸後の修正で軟化するも安全資産としての需要が下値を支えるか】
 NY金12月限は10月20日に4398ドルの指標限月として史上最高値に達した
後に反落となり、押し目底を探る動きが続き10月28日に3901.3ドルと10月
3日以来の安値まで軟化。この下落により3913.5ドルで取引を開始した10月6
日から史上最高値を記録した20日にかけての上げ幅を完全に相殺した。
 米雇用情勢の軟化、米インフレ加速の警戒感、米政府機関の一部閉鎖が加わったう
え、米追加利下げ観測や米中貿易摩擦に対する警戒感が強まったことがNY金を史上最
高値まで押し上げる主因になった。24日に発表された9月の米消費者物価指数(CP
I)の前年同月比は事前予想の+3.1%を下回る+3.0%で、4月の同+2.3%
と比較するとインフレ加速も、事前予想を下回る伸びにとどまったため、インフレ懸念
を和らげた。
 また、米中貿易摩擦に関しても既に20日の週に閣僚級の会合が開催されており、お
およその枠組みは決定しているとの見方が浮上している。30日には米首脳会談が開催
される予定されており、米中関係悪化に対する警戒感は後退している。
 28日から29日にかけて開催された米公開市場委員会(FOMC)では追加利下げ
が決定されたものの、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が、12月のFOMC
に関しては追加利下げに対する様々な見解があり、予め決定されているわけではない、
と述べたことで、12月FOMCを慎重視する動きが強まったことで、金の上値が抑制
される可能性が出てきている。
 4000ドル前後という値位置はこれまでの金価格の水準からみると依然として高水
準であり、安全資産として旺盛な需要が感じられる。
 急落にもかかわらずNY金市場の取組高は10月20日時点の47万5938枚から
27日時点の46万4052枚へと1万1900枚程度の縮小にとどまっている。これ
は主要限月の12月限の取組が減少する一方で、期中〜期先限月の取組高が増加してい
ることが背景となっており、先行きの金需要が見込まれるなか、資金が期中から期先限
月へとシフトしている様子が示されている。
 目先は30日に開催される米中首脳会談後にどのような反応をするかの見極めが必要
だ。米国内では米政府の一部機関閉鎖が続き、重要な一部の経済指標の発表は行われて
いる。発表されている経済指標がかなり限定されていることで米国の最新の経済情勢の
把握が難しいこと、また把握が難しいなかでの米雇用情勢軟化の可能性が警戒される。
 28日に米上院でつなぎ予算が13回目の否決となったことで米政府機関の再開見通
しが立たない状況が続いている。政府機関の一部閉鎖が続くようであれば、多くの米経
済指標の発表が見送られ、その結果、米経済の状況把握が困難な状態が続くと予想され
る。
 史上最高値から値を落としたうえ、米FOMC,米中首脳会談と注目イベントが集中
したことで材料織り込み感が強まった結果、NY金は4000ドルを割り込む動きを見
せたが、その後は4000ドルを回復しているため目先の売り一巡感が強い。再び史上
最高値更新を目指す勢いには乏しいながら、米財政および雇用不安がくすぶっているだ
けにNY金市場の底意は強く、12月限は4000ドル前後を維持して堅調に推移が想
定される。
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