週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.01ドル安の73.13ドル、ブレント原油は1.44ドル安の74.25ドルとなった。

 前週末の海外原油は、OPECプラスの会合で意見調整が難航していることから模様眺めムードが強まり、横ばいでの推移となった。会合は再延期(日本時間5日に再開)となった。

 先週に入り、5日は米独立記念日で休場。OPECプラス会合においては、8月以降の増産をめぐる協議で合意することができず。12月まで日量で月40万バレルずつの段階的増産を主張するサウジアラビアなどと、それ以上の増産を求めるUAEが折り合わず物別れに終わった。6日は大幅反落。OPECプラス会合の協議決裂で7月の減産幅が8月以降も維持されるとの思惑から一時買い先行となっていたものの、米政府の仲介などで協議が想定より早期にまとまるのではとの思惑が強まり下落に転じた。また、UAEなど増産を求めている一部産油国が一方的に増産に踏み切り、他国も追随するのではとの観測が拡がったことも嫌気された模様だ。流れを引き継ぎ、翌7日は続落。OPECプラス会合の協議決裂により一部加盟国が大幅な増産に踏み切る可能性もあるとの思惑から続落した。協議が中断されたことで先行きの不透明感が強まり、いったん利益確定に動く参加者が多くなっている。8日は、米EIA在庫統計において原油在庫が予想以上に減少したことや、ガソリン需要の堅調さが示され、また前2日間で大幅に下がっていたことから押し目買いが入り、反発することとなった。



 前述の通り、OPECプラス会合の協議難航から、先行き不透明感による利食い売りに押されて大きく下落したものの、押し目では買いが入り、値を戻してきている。下落トレンド入りは現時点では考えにくく、これまでの上昇の反動による、調整の範囲内と考えられるだろう。米石油需要は需要期入りでガソリン需要が増加し、石油製品全体で見てもコロナ前の数字まで回復してきている。原油生産も回復してきてはいるものの、製油所稼働率は高水準を維持し、在庫は取り崩しが強まっている状況だ。OPECプラスの行方は要注目だが、彼らが率先して価格下落に向かう結論を出すのはイメージしにくく、また週中下落していた株式も値を戻してきており、コロナウィルスとの綱引きは続くものの、原油を囲う環境はそこまで悪くない。以上から、来週の原油マーケットは、強含みでの推移を想定しておきたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。