[Vol.1091] LNG価格は原油価格の半年あとをたどる

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。OPECプラスの過剰な増産回避などで。78.58ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,747.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 国慶節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心) 国慶節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで807.45ドル(前日比6.35ドル拡大)、円建てで2,898円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月6日 18時17分頃 6番限)
6,263円/g 白金 3,365円/g
ゴム 213.6円/kg とうもろこし 36,860円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「LNG価格は原油価格の半年あとをたどる」

前回は、「LNGは豪州などから輸入している」として、日本のLNG(液化天然ガス)の輸入先について、書きました。

今回は、「LNG価格は原油価格の半年あとをたどる」として、日本の輸入LNG(液化天然ガス)価格の動向について、書きます。

電力需要を拡大させるさまざまな社会的要素が存在する中、日本政府が検討している「2030年度までは火力発電をゼロにしない」方針により、2030年度までに、日本の火力発電のメインがLNGになる可能性があります。

以下は、先述の日本の輸入先ごとの、輸入量・輸入総額から算出したLNGの輸入価格です。WTI原油先物の推移を併記しています。

算出したLNG輸入価格は、2021年7月時点で1トンあたりおよそ5万5,000円です。2019年8月に近い水準まで反発しています。全体的には、LNG輸入価格は「原油価格の半年あと」をたどっていると、言えます。

原油価格と似た動きになるのは、価格決定の仕組みがそうなっているためです。原油価格リンク方式と呼ばれ、アジアや一部の欧州諸国で採用されています。(欧米では天然ガス自体の需給で決まるハブ方式で価格が決まっています)

今から半年前の原油価格は1バレルあたり60ドル前後でした(WTIベース)。足元は、79ドル前後です。

この半年間、原油価格が上昇し続けたこと、そして、LNGの輸入価格が原油価格の半年あとをたどる傾向があることを考えれば、短期的には、今年の冬場の電力需要期は、LNG輸入価格が今よりも(比較的大きく)上昇している可能性があります。

また、2013年ごろ以降、主に米国国内の需給動向で決まる米国の天然ガス先物価格が低水準から反発した局面で、日本の輸入LNG価格も同様に、反発色を強めています。

価格決定方式が異なるとはいえ、「エネルギー」「天然ガス」という共通項が存在するため、連想的な価格反発が起きているのかもしれません。

図:液化天然ガス(LNG)の輸入価格と原油先物価格の推移


出所:財務省貿易統計とブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。