[Vol.1167] 米シェール「脱炭素」で開発鈍化

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。87.33ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,787.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 春節のため休場(1月31日から2月4日まで)

上海原油(上海国際能源取引中心) 春節のため休場(1月31日から2月4日まで)

金・プラチナの価格差、ドル建てで775.7ドル(前日比2.6ドル縮小)、円建てで2,910円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月31日 19時10分頃 6番限)
6,639円/g 白金 3,729円/g
ゴム 243.8円/kg とうもろこし 41,720円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェール「脱炭素」で開発鈍化」

前回は、「米シェールは回復途上」として、米国全体と米シェール主要地区の原油生産量を確認しました。

今回は、「米シェール「脱炭素」で開発鈍化」として、米国のシェール主要地区における開発指標を確認します。

以下のグラフは、米国のシェール主要地区における開発に関わる2つの指標(掘削済井戸数と仕上げ済井戸数)および、原油価格の推移を示しています。

掘削済井戸数とは、リグ(掘削機)を稼働させて、掘り終えた井戸の数です。リグが原油を生産する機械のようにとらえられることがありますが、リグはあくまで穴掘り機です。

仕上げ済井戸数とは、掘削した井戸に高圧で水や砂、少量の化学物質を注入し、井戸の末端で破砕させる、原油を抽出するための最終的な作業を終えた井戸の数です。仕上げを行わないと原油を生産することはできません。掘削を終え、あえて仕上げをしない井戸(待機井戸)も存在します。

グラフの通り、2020年春のコロナショック前までは、掘削済井戸数、仕上げ済井戸数、原油価格は、ほぼ連動していました(数カ月、原油価格が先行)。

コロナショックでいずれも低下・減少した後、原油価格は大幅に回復しましたが、2つの開発関連指標は、2年が経過しようとしている現在でも回復途上のままです。

2020年11月の米大統領選挙に向けて、バイデン氏が「脱炭素」を前面に打ち出したことが、石油開発の鈍化、引いてはシェール主要地区の原油生産量の回復鈍化のきっかけになり、この動きが現在も継続していると、考えられます。

図:米シェール主要地区の開発関連指標と原油価格 (米シェール主要地区の開発関連指標は、EIAが提唱する7地区の合計)


出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。