[Vol.1166] 米シェールは回復途上

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。87.27ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,796.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,215元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年03月限は537.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで767.55ドル(前日比1.7ドル縮小)、円建てで2,890円(前日比56円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月28日 14時20分頃 6番限)
6,666円/g 白金 3,776円/g
ゴム 237.9円/kg とうもろこし 40,490円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米シェールは回復途上」

前回は、「原油市場の「2段構造」」として、足元の「原油高」の背景について、筆者の考えを書きました。

今回は、「米シェールは回復途上」として、米国全体と米シェール主要地区の原油生産量を確認します。

ブルームバーグのデータによれば、世界トップ3の原油生産国は、米国、ロシア、サウジです(2021年12月時点)。シェアは、米国が14.4%、ロシアが13.6%、サウジが13.5%です。今、このトップ3カ国(シェア合計41.5%)において、供給を制約する事案が発生しています。

米国は、バイデン氏の米大統領選挙の勝利宣言(2020年11月)以降、パリ協定に復帰したり、より厳しい温室効果ガスの削減目標を率先して打ち出したりするなど、「脱炭素」を急速に進めてきました。

こうした中で、「モノ言う株主」による環境配慮に関わる提言も目立つようになり、関連企業が石油開発を推進することが、世界全体や米国国内の風潮にそぐわないとの指摘が目立つようになりました。

バイデン氏が大統領になって以降、これまでにも増して、米国国内の石油戦略備蓄の取り崩しが進んでいますが、このことは、「脱炭素を推進する国が、石油備蓄を積み上げておくことは自己矛盾に等しい」という文脈の上で、行われていると筆者はみています。

米国では、「脱炭素先進国」をうたうべく、リーダー達が頑張っているわけです。米国全体のおよそ70%を占めるシェールオイル主要地区の原油生産量(7地区合計)が、2020年春に発生したコロナショックによる急減の後、回復しきっていないのは、リーダー達の「脱炭素」推進にかける強い思いが一因だと考えます。

米国の原油生産量は、2020年5月にコロナショック後の最悪期を迎えた後、徐々に回復傾向にあるものの、その回復の度合いは、原油相場の回復や需要回復の流れに劣後しています。

2010年ごろにシェール革命が起きてからしばらくは、「原油相場が上昇すれば、米国の原油生産量は増える」という定説めいたものがありましたが、現在はそうではありません。次回以降、米シェール主要地区の開発に関わるデータを確認します。

図:米国の原油生産量(米シェール主要地区の原油生産量は、EIAが提唱する7地区の合計) 万バレル/日量


出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。