[Vol.1200] ウクライナ危機は次のステージに入った

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。ロシア産石油流通減少懸念の緩和などで。107.73ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,925.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は13,410元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年05月限は713.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで889.75ドル(前日比4.95ドル拡大)、円建てで3,533円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月22日 18時24分頃 6番限)
7,443円/g 白金 3,910円/g
ゴム 250.9円/kg とうもろこし 50,260円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ウクライナ危機は次のステージに入った」

前回は、「OPECプラスに増産は期待できない」として、一部の市場関係者が期待するOPECプラスの増産が困難であることについて、筆者の考えを述べました。

今回は、「ウクライナ危機は次のステージに入った」として、ロシアのウクライナ侵攻直後、急騰し、急落した金(ゴールド)、原油、小麦に価格の動向に着目し、ウクライナ情勢が新しい局面に入った可能性があることについて、書きます。

足元、金(ゴールド)、原油、小麦の価格が、再び反発し始めています。

相場用語の一つ「いってこい」は、価格が上昇し、その後下落した場合において、上昇直前の価格水準と下落直後の価格水準が同じことを指します。いって(上昇して)、きた(元の水準まで下落した)、ということです(下落→上昇の逆のケースもしかり)。

金(ゴールド)は3月3週目の半ばまで、「いってこい」の状況にありました。一時は急騰して2,000ドルを超えたものの、ウクライナ侵攻直前の水準まで下落しました。原油も同様に、一時、130ドルを超え13年半ぶりの高値に達しましたが、急騰前の水準まで下落しました。

こうした動きにより、以下の図のとおり、金(ゴールド)と原油相場のグラフは、美しい「二等辺三角形」を描きました。底辺の長さ(営業日数)は15日間(侵攻勃発日の2月24日と3月16日)で、頂点から下ろした垂線と底辺との交点は3月8日前後です。

しかし足元、再び、反発色を強めています。ロシアの一部地域への禁輸報道により急騰前の水準まで下落しなかった小麦も、反発色を強めています。「ウクライナ危機」が、新しいステージに入ったことを予感させる、値動きになっています。

図:ウクライナ侵攻後の金・原油・小麦の価格推移 (目盛の比は同一でない)


出所:investing.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。