週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.83ドル安の68.88ドル、ブレント原油は2.23ドル安の73.58ドルとなった。

 前週末の海外原油は5月の中国の石油精製量が日量1460万バレルと過去2番目の高水準となったことが支えとなったほか、クウェートの石油公社幹部が今年下半期にかけて中国の石油需要はさらに伸びると発言したことが好感され堅調な推移となった。

 先週は中国の石油需要が従来予想より伸び悩むとの思惑が重しとなる一方、サウジが7月から自主減産を開始することが意識されたほか、パウエルFRB議長の議会証言を受けて利上げペースが一段と鈍化するとの思惑が強まったことからドル安進行したことは支えとなり往って来いの展開となった。週明けは米国が祝日で休場となる中で薄商いだったが、複数の大手銀行が中国のGDP伸び率見通しを下方修正し、石油需要の減少懸念が強まったことが重しとなり軟調な推移となった。翌20日は中国が政策金利に当たる最優遇貸出金利(LPR)を10カ月ぶりに引き下げたが、5年物の引き下げ幅は事前予想よりも小幅にとどまったことから失望売りが強まる格好となったほか、制裁を受けているロシアやイランの輸出が堅調に推移していると伝わったことが重しとなり軟調な推移となった。翌21日はパウエルFRB議長の議会証言において最終的な金利水準に接近していることが示唆され、ドル安進行したことが支えとなり堅調な推移となった。また、トウモロコシや大豆などの穀物相場が急騰し、バイオ燃料の配合量が減少し石油需要が増加するとの思惑が強まったことも支えとなった。翌22日はスイス中銀が0.25%の利上げを発表し、今後の追加利上げについても示唆したほか、英中銀も0.5%の利上げを発表したことから金融引き締めによる景気悪化懸念が強まる格好となり軟調な推移となった。

NY原油チャート

 今週の原油相場は上値重い推移が想定されそうか。パウエルFRB議長が議会証言において年内にあと2度の利上げを肯定するなど、各国中銀がインフレ抑制のため金融引き締めに動いていることから世界的な景気悪化懸念が強まっていることが重しとなりそうだ。また、中国の景気回復が遅れており、GDPの伸び率見通しが下方修正されるなど石油需要が伸び悩むとの思惑が強まっていることも嫌気されており、積極的には買いにくい状況となっている。来週には米消費者物価指数など利上げのヒントとなりそうな経済指標の公表が控えており、インフレの鈍化が見られれば若干の強材料にはなりそうだが、チャート面でもWTIが節目の70ドルを割ったことから目先は上値重い推移となりそうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。