[Vol.2184] 自由も民主主義も損なわれ続けている

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。102.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。4,584.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,345元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年05月限は740.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2660.15ドル(前日比8.25ドル拡大)、円建てで14,451円(前日比56円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月31日 18時25分時点 6番限)
24,142円/g
白金 9,691円/g
ゴム 376.8円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「自由も民主主義も損なわれ続けている」
前回は、「世界インフレの背景に強力なカンフル剤」として、米国、ドイツ、日本のCPI(消費者物価指数)を、確認しました。

今回は、「自由も民主主義も損なわれ続けている」として、2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータを、確認します。

2010年ごろ以降、世界で目立っている大きな課題はインフレだけではありません。図のとおり、世界のネガティブ経験指数(左下)が上昇したり、自由民主主義指数(右下)が低下したりしています。

ネガティブ経験指数は、英国の世界的な調査会社であるGallup(ギャラップ)が、世界の100カ国以上で、昨日の長い時間において、不安、怒り、ストレスなどを感じたり、身体的な痛みを感じたりしたかどうかを調査し、まとめたものです。

2010年ごろ以降、同指数は上昇し始めました。この動きは、2010年ごろ以降、世界の多くの国で、不安、怒り、ストレスなどを感じたり、身体的な痛みを感じたりしている人が増えてきていることを示唆しています。

自由民主主義指数は、V-Dem研究所(スウェーデン)が、法整備、選挙制度、言論の自由などの民主主義に関わる多数の要素を集約して算出した、指数です。0と1の間で決定し、0に近づけば近づくほど、その国の自由度・民主度が低いことを、1に近づけば近づくほど、その国の自由度・民主度が高いことを意味します。

同指数は、2010年ごろから下げ始めました。2025年の約0.27は、冷戦期(1970年代前後)の水準でもあります。それくらい、現在の自由度や民主度が低いことを意味します。

自由民主主義指数の比較的高い国(0.6以上)と比較的低い国(0.4以下)の数を確認すると、2010年ごろから、同指数の比較的高い国の数が減少し始め、2020年ごろから、同指数の比較的低い国の数が増加し始めていることがわかります。

自由度・民主度が高い国の数が減り、逆に自由度・民主度が低い国の数が増えていることは、自由度・民主度における世界の分断が深まっていることを意味します。

2010年ごろ以降の、ネガティブ経験指数の上昇、自由民主主義指数の低下、自由度・民主度における世界の分断の深まりは、図の上部に示した世界のスマートフォンの販売台数の急増(左上)と、世界のソーシャルメディアユーザーシェア(右上)の上昇と、無縁ではないと考えられます。

2011年ごろ、北アフリカ・中東地域において、民主化運動の波が起きました。「アラブの春」です。SNSで発生した民意の濁流が主なきっかけとなり、複数の国で、武力衝突を伴った政権転覆が起きました。また、2016年と2024年の米国の大統領選でトランプ氏が勝利した背景にも、SNSが存在するといわれています。

また、足元、複数の主要国において「SNS規制」に関する議論が始まっています。市民が直接的に関わる事件や出来事が多発したり、若者の教育や人格形成の面でマイナスの影響が大きくなったりしているためです。

武力衝突が連鎖したり、横暴なリーダーが誕生したり、市民や特に若者へのマイナス面が大きくなったりしていることは、決して、民主的な状態を目指す社会において、好ましいことではありません。

こうした好ましいとは言い難い状態が目立ち始めたタイミングと、SNSが普及しはじめたタイミングがほとんど同じだったことは、偶然ではないと筆者は考えています。世界のカオス(混沌・こんとん)の一翼を、SNSが担っていると言っても、言い過ぎではないかもしれません。

図:2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータ
図:2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータ
出所:各種情報源より筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。