[Vol.2185] 思惑と実態の差が拡大する投資の世界

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。100.08ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,741.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年05月限は16,415元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年05月限は653.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2788.6ドル(前日比80.20ドル拡大)、円建てで15,014円(前日比146円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月1日 18時05分時点 6番限)
24,863円/g
白金 9,849円/g
ゴム 380.8円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「思惑と実態の差が拡大する投資の世界」
前回は、「自由も民主主義も損なわれ続けている」として、2010年ごろからはじまった世界情勢の急変を示すデータを、確認しました。

今回は、「思惑と実態の差が拡大する投資の世界」として、S&P500、原油、銅の価格推移(年間平均 1986年を100 2025年まで)を、確認します。

前回に続き、「カオス」の例を示します。図は、米国の主要な株価指数の一つで、世界中の投資家の認知度が高い「S&P500種指数」、経済の血液ともいわれる「原油」、ドクター・カッパー(景気動向を診断する医者のたとえ)ともいわれる「銅」の価格推移です(年間平均 1986年を100 2025年まで)。

2010年ごろ以降、原油と銅は、比較的緩やかに水準を切り上げたことが分かります。一方、S&P500は、同じタイミングから急上昇していることが分かります(短期視点では、2026年3月に大きく下落しています)。

北米、中南米、欧州、旧ソ連、中東・アフリカ、アジア・オセアニアといった六つの地域の、合計47の株価指数の2023年と2025年の年平均を比較すると、欧州とアジア・オセアニアの三つの株価指数を除き、44の株価指数が上昇したことを確認できます。

この間、世界同時株高の様相を呈していたと言えます。景気動向の先行きの指標になるといわれることがある、原油と銅の価格が「やや上昇」の状態にある期間で、です。

筆者の周りにいる株の専門家は、株価は半年から1年先の思惑を織り込んで動いている、と述べています。その意味では、株価指数は多くの場面において思惑で動いていると言えなくありません。

2010年ごろ以降順次、思惑がそれまで以上に株価指数の動きを決定付けるようになり、経済の実態を示す存在になり得る原油や銅の価格との乖離(かいり)が大きくなった、と言えそうです。

株価指数が急上昇してきた2010年ごろから2025年まで、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が起きたり、ウクライナ戦争が勃発したりしました。実体経済は不安定化しているはずであるものの、原油と銅を置き去りにするように、株価指数は世界の広範囲で上昇しました。

こうしたことは、株価指数は上がれども、景気が好転している実感がほとんどない、という、わたくしを含めた少なくない消費者が抱く、感覚の根拠でもあります。このこともまた、「カオス」であると言えるでしょう。

図:S&P500、原油、銅の価格推移(年間平均 1986年を100 2025年まで)
図:S&P500、原油、銅の価格推移(年間平均 1986年を100 2025年まで)
出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。