近年の出来事と金価格の動向
直近5年間における世界経済・地政学イベントと金価格を振り返ります。
- 新型コロナウイルス
2020年は初頭から、中国を発信源に新型コロナウイルスが世界を席巻。米国株式市場に到達したのが2月20日で、その後3月23日までの間に、S&P 500指数は33.9%下落しました。 同時期に金先物価格は3/9まで持ちこたえ、その後3/19まで下落したものの10日間の下げ幅は12.5%にとどまりました。
- ロシアのウクライナ侵攻
2022年2月24日にはロシアのウクライナ侵攻が始まります。前年末からロシアの動向が報道され、それを受けて金先物市場は1月29日から上昇を開始し、開戦を挟んで3月8日までに14.6%上昇しました。
- 米国利上げ
経済イベントについては、2022年3月16日米国のFF金利上昇が始まりました。ゼロ金利からの離脱観測を受け、S&P 500指数は2021年年末から下げ基調に入っており、12月29日から2022年10月14日までの間に25.2%下落しました。同時期に金は9.1%の下落にとどまり、株式との非相関を示しました。
- 円安進行
2022~2024年にかけては円安が進行しました。ドル円レートは2022年3月4日の114.78円を起点に、上下しつつ7月10日には161.67円まで46.89円もの下落。この間、ドル建て金価格は19.4%上昇しましたが、円建て金価格は71.6%もの上昇を示しました。
※価格下落リスクについて
2024年は米国の利下げ観測、中東情勢を巡る地政学リスクの高まりなどから、金価格については歴史的な高値圏で推移しました。このような中、NY金先物は2024年1月に2,000ドル台にあったものが、8月に2,500ドル、9月には2,600ドルの節目を初めて超えました。OSE金先物も2023年12月に初めて10,000円台に乗り、その後も円安進行も相まって史上最高値を更新するなど高値圏で推移しています。このように金価格は歴史的な高値圏にありますが、今後、調整局面が見られる可能性も忘れてはいけません。マーケットに影響を及ぼすような材料には留意が必要です。
金価格を読み解くポイント
金価格は、以下の5つのファクターによって価格変動を考えることができます。
1.需要の変化
金の需要は、大まかに4種類に分けることができます、宝飾・テクノロジーズ(工業用途)・投資・公的部門です。
この中で、宝飾とテクノロジーズの需要は比較的安定していますが、投資と公的部門の需要は変動性があります。
投資需要は株式をはじめとする金融市場や実体経済との関係で、ヘッジ需要が高まった時に増加する傾向があります。下のグラフ(金需要の推移)を見ると、リーマンショックから欧州財政危機が懸念された2010~2012年、そして新型コロナウイルスのパンデミックによって世界経済が揺らいだ2020年に、投資需要が金の総需要の中で大きな割合を占めたことがわかります。 公的部門の需要は、ロシアがウクライナに侵攻した2022年以降に急増しています。
このような変動する需要によって総需要も変動し、金価格の上昇を引き起こすことがあります。
2.ドルの他国通貨に対する強弱(ドルインデックス)
米ドルの他国通貨に対する強弱を示す指標に「ドルインデックス」があります。金価格との連動性を見ると、ドルインデックスが下落している時期には金価格は上昇しやすく、反対にドルインデックスが上昇している時期では金価格は下落します。
米ドルの価値が下落する時は価値保存のために金が買われ、局面が変われば資金の流れが逆転するという図式です。
以下のチャート(ドルとの逆相関関係)の通り、ドルインデックスと金価格はほぼ逆相関の関係にあると言えます。
法定通貨の代表格である米ドルと、代替通貨としての金価格は競合関係にあるととらえることができるでしょう。
3.米国長期金利と金価格の関係
米国長期金利(10年国債利回り)と金価格の連動性を見ると、おおむね金利上昇局面では金価格は弱含み、金利低下局面では金価格は上昇に向かうという逆相関が成立しています。
これは、金を保有していても金利は発生しないことから、金利上昇局面では相対的に金の魅力が下がり売られやすくなると解釈できます。つまり、米国債の金利が金投資の機会コストになっているということです。
ただし、直近の2022年以降はそれまでの逆相関が成立しなくなっている点に注意が必要です。
4.米国株価と金価格の関係
米国株価と金価格の関係は、一般的には株価が下がると金価格が上がりやすいと言われます。ただし、過去の動向を見ていくとそうなっていない時期もあります。
2008~2009年のリーマンショックでは、米国株価が大きく下落する一方で金価格は上昇しました。ただしその後、2016年以降は株価と金価格でともに長期上昇局面が続いており、逆相関が成立していません。
2020年冬の新型コロナウイルスのパンデミックでは、株価急落に反して金価格は急上昇を演じました。
通説はさておき、現実的には金価格を読む際に米国株価はあまり関係がないが、経済ショックなどで株価が急落する際には、一時的に金が買われやすくなると言えるでしょう。
5.ドル円レートと円建て金価格の関係
ドル円レートと円建て金価格の関係は、2021年までは逆相関に近くなっていました。それ以降は連動性が高まっています。
円安は円建て金価格を上昇させる傾向があるため、2021年から続く円安局面で、金も価格を切り上げてきています。
近年の出来事と白金価格の動向
直近5年間における世界経済・地政学イベントと白金価格を振り返ります。
- 新型コロナウイルス
2020年2月20日~3月23日までの間に、S&P 500指数が33.9%下落したのに対して、白金価格は41.7%下落。価格変動性(ボラティリティ)の大きさを示しました。
- ロシアのウクライナ侵攻
白金価格は2022年1月10日から上昇を開始。開戦を挟んで3月8日までに22.3%上昇し、金価格の上昇率を上回りました。
- 米国利上げ
米国株価は米国の利上げ観測を受け、2021年12月29日~2022年10月14日の間に25.2%下落したのに対し、白金価格は9.1%の下落にとどまりました。金との相関性と株式との非相関性を共に示したと言えます。
- 円安進行
2022年3月4日~2024年7月10日の円安進行を受け、円建て白金価格は71.6%上昇。この間にドル建て白金価格は12.4%の上昇となっており、円安ブーストが利いた形となりました。
白金価格を読み解くポイント
白金価格は以下の5つの資産価格との連動性・非連動性があります。
1.ドルの他国通貨に対する強弱(ドルインデックス)
米ドルの他国通貨に対する強弱を示す指標に「ドルインデックス」があります。 白金価格との連動性を見ると、ドルインデックスが下落している時期には白金価格は上昇しやすく、反対にドルインデックスが上昇している時期では白金価格は下落します。
下のチャート(ドルとの逆相関関係)の通り、ドルインデックスと白金価格はほぼ逆相関の関係にあると言えます。
2.金価格と白金価格の関係
金価格と白金価格の関係を見ると、2000年~2016年くらいまでは一定の連動性が見られました。ところが、それ以降は金価格が上昇する一方、白金価格は横ばいで推移しています。
白金の近年の価格動向は、金と白金の相場材料が必ずしも一致しないこともあり、金価格との連動性が薄れているといえます。
3.米国株価と白金価格の関係
米国株価と白金価格の関係は、長期的な連動性は見られません。 ただし2008~2009年にかけてのリーマンショックや、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック、2021~2022年の米国金利上昇での株価下落では、軌を一にして白金価格も下落しています。
米国株価との関係は一定ではないが、急落は連動しやすいと言えるでしょう。
4.銅価格と白金価格の関係
銅価格と白金価格の関係は、2017年までは連動性が見られました。2017年以降は価格の乖離は見られるものの、折々の価格の方向性は現在まで、引き続き連動性が見られます。
工業用金属という共通点があるため、価格動向は引き続き連動しやすいと言えるでしょう。
5.ドル円レートと円建て白金価格の関係
ドル円レートと円建て白金価格の関係は、2015年までは逆相関に近くなっていました。それ以降は連動性が高まっています。
円安は円建て白金価格を上昇させる傾向があるため、2021年から続く円安局面で、円建ての白金価格は切り上げてきています。
過去の米大統領選と米利下げ時の金価格推移を振り返る
共和党の候補者だったドナルド・トランプが当選した2016年の米国大統領選挙では、当選が決定した11月8日から12月15月の約1か月で、金価格は11.7%下落。財政支出拡大によってインフレ傾向が強まるとの見方から、金利上昇とドル高を招く展開が想定され、金価格は下落に向かいました。
2019年7月に開始された米国FF金利の引き下げ局面では、金価格は急騰。7月末の利下げ開始に先立ち、金融市場は5月末から利下げ期待を織り込み始めます。
金価格は5月29日~6月24日にかけて、第1段階として10.8%上昇。そして利下げが行なわれた7月31日からは、第2段階として9月4日までに10.1%上昇し、金利低下で金価格上昇という教科書通りの動きとなりました。
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