週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.67ドル安の60.85ドル、ブレント原油は0.36ドル安の64.09ドルとなった。

 前週末の海外原油は、前日にイラン核合意への期待から急落したことで安値拾いの買いが入る格好となった。一方でドル高やOPECプラスの増産による供給過剰懸念は上値を抑えた。

 先週は米国の財務悪化や中国の景気悪化懸念が重しとなり、上値重い推移となった。週明け19日は小幅続伸。米イラン核合意期待の後退が買い材料となった。ただ、米格付け大手ムーディーズが米政府の債務膨張を理由に格付けを引き下げたことや、中国の4月小売売上高と鉱工業生産の伸びが鈍化したことはおもしとなった。20日は反落。引き続き軟調な中国の経済指標が重しとなったが、ロシアとウクライナの停戦を巡る先行き不透明感は相場を下支えした模様。21日は下落。イスラエルがイランの核施設を標的に空爆の準備を進めているとの報道を受け買いが先行した。その後、EIA統計で原油、ガソリン在庫が予想に反して積み増しとなったことが相場を押し下げる展開となった。22日は続落。OPECプラスが7月に日量41.1万Bの増産を検討していると伝わったことが圧迫要因となった。次回6月1日開催予定の会合で協議される模様。

みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は需給の緩みが意識される中で上値重い推移が想定されそうか。先週に英国が米国との関税交渉で合意したことに続き、中国も90日の期間限定ではあるものの関税の引き下げで合意した。他国も交渉次第では関税の引き下げで合意が可能との見方から景気への懸念が後退し、リスクオンムードが強まっていることは支援材料となりそうだ。一方でトランプ大統領がイラン核交渉が合意に近いと述べ、経済制裁の解除によるイラン産原油の供給増加が意識されたことは重しとなっている。OPECプラスが今後も減産幅の縮小を進めるとみられる中で供給は増加見通しだが、IEA月報において2025年の石油需要の鈍化見通しが示されたことで需要は減少が懸念されており、需給の緩みが警戒される中で上値は抑えられやすそうか。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。