[Vol.2040] 金市場で伝統的材料と非伝統的材料が両立

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。63.88ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。3,410.10ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年01月限は15,905元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年10月限は492.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2048.7ドル(前日比6.70ドル縮小)、円建てで10,109円(前日比17円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月25日 17時02分時点 6番限)
16,091円/g
白金 5,982円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 日足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 日足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「金市場で伝統的材料と非伝統的材料が両立」
前回は、「金の長期上昇トレンドは止まらないだろう」として、伝統的有事と非伝統的有事の例を、確認しました。

今回は、「金市場で伝統的材料と非伝統的材料が両立」として、金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマを、確認します。

近年、金(ゴールド)に投資をする人が増えています。どんなきっかけで金投資を始められたのかをうかがうと、しばしば「株と逆相関だから」という返答が返ってきます。「逆相関」は重要なテーマですが、それだけではありません。逆相関以外のテーマにも関心を寄せることで、金(ゴールド)の大きな魅力を実感することができます。

以下は、筆者が提唱する金市場に関わる七つのテーマです。これらのテーマをまんべんなく意識することで、金(ゴールド)を、短期売買にも長期の資産形成にも、上手に用いることができます。

七つのテーマは、短中期、中長期、超長期の三つの時間軸に分けられます。有事(伝統的)、代替資産、代替通貨の三つは短中期、宝飾需要、中央銀行、鉱山会社の三つは中長期、有事(非伝統的)は超長期に分類できます。

金(ゴールド)は、戦争や金融危機など、目に見える分かりやすい恐怖である有事(伝統的)が発生した際に、資金の逃避先として注目されたり、株価が急落しているときに代替資産として注目されたり、ドルが急落しているときに代替通貨として注目されたりします。

これらはいずれも、金(ゴールド)が、伝統的に世界の金融システムの一部に組み込まれていることを示唆するものです。金融システムが先行して発達した先進国が深く関わる「伝統的材料」と呼ぶことができます。

また、中国やインドなどの新興国の個人が2000年序盤から中盤にかけて金(ゴールド)に対して旺盛な需要を示したり、中央銀行が世界全体の変化を見越すように全体として2010年ごろから現在まで金(ゴールド)の保有高を増やし続けていたり、しばしば鉱山会社が金価格の上昇を見込んで売りヘッジ(値下がりに対する保険の意味)を解消したりしています。

さらには、2010年ごろ以降、自由度・民主度を示す自由民主主義指数(スウェーデンのV-Dem研究所公表)の世界平均が急に低下しはじめたり、非西側の超大国である中国の米国債保有残高が急に減少しはじめたりするなど、世界の分断深化やドル覇権崩壊への懸念が強まっています。

これらの多くは、新興国の台頭が何らかのきっかけとなり、2000年ごろ以降に発生した比較的新しい世界的な変化です。巨大な影響力を持つようになった新興国が深く関わる「非伝統的材料」と呼ぶことができます。

金相場に対し、伝統的材料は短中期の上下、非伝統的材料は中長期の上下および超長期の底値切り上げという影響を及ぼしていると、考えられます。

図:金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマ
図:金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマ
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。